お引越し準備。の準備 15
昨日注文したのは、フライパンで焼く用のピザ生地を100枚。でも、
「にゃにゃん!(こっちの肉をもっと入れるのにゃ!)」
「肉を追加するのか? よし、普段の3倍入れてやろう! サービスだぞ♪」
「ぷっきゅ~!(こっちはもっとソースをたっぷり!)」
「このソースにはこの具材が合うのよ~! いっぱい入れてあげるわね! もちろんサービスよ♪」
2匹のわがままいっぱいのリクエストを推測した店主夫妻が、とっても楽しそうに具材を大盛にサービスしてくれるものだからちょっと困ってしまう。
だって、サービスなんだもん! リベラトーレさんが先払いで支払って欲しいって言うから、支払いを済ませた後なんだもん!
普通の買い物ならお金と商品を交換なのに、商品を用意しながら「先にお金を欲しい」なんて言うから珍しいな。とは思ったんだ。でも、それが、お金を払った後に、
「アリスさんが作った具材を乗せて好きなように作るから生地だけが必要だっていうことはわかっているんだが……。うちの具材も悪くはないだろう? サービスしておくから何枚かピザを作って行かないか?」
なんて提案があるなんて想像しないよね?
私はお断りをしたんだよ? 気持ちだけありがたくいただくけどね。だったら具材の料金を支払うって言ったんだ。
なのに、リベラトーレさん親子は揃って、
「1日に100枚も買ってくれた大口のお客さまに少しくらいサービスしてもいいと思わないか? なあ、ハク? ライム?」
ターゲットを従魔たち(ハクとライム)に絞って交渉してきた。
そんな嬉しい提案をうちの仔たちが断るわけもなく、私がいくら遠慮しても、
「まあまあまあまあ。もう決まった話だからね~?」
なんて言って、おいしそうなピザをどんどん作り出してしまい……。ついでとばかりにハクとライムにリクエストはないか?なんて聞いてくれたものだから、遠慮をどこかへ置いて来た2匹はここぞとばかりにおいしそうな具材をおねだりし始めて……。
とっても具沢山な豪華なピザがどんどん出来上がっているんだ、❝サービス❞として。
「うちの両親は可愛いものが大好きでなぁ。ハクとライムが喜ぶ顔を見て喜んでいるだけだから気にしないでくれ」
具沢山なピザが15枚を超えて慌てる私を見て、リベラトーレさんが笑うので困ってしまうと、
「アリスのレシピのお陰でうちの店のメニューが増えたんだ。フライパン用の生地との相性も抜群で、土産用に買って帰る客も増えた。ささやかだが礼のつもりも入ってる」
と言われて諦めた。 ここで私が支払いに拘ると、お礼合戦が終わらない予感がしたからだ。
このお礼は、また今度! ピザにも合うような何かのレシピを登録することで返そうと思う♪
具沢山の美味しそうなピザが手に入ってご機嫌な2匹を肩に乗せて冒険者ギルドの近くを通ると、
「イザック、本当にありがとう。とても嬉しかった」
「いや……。幸せにな」
聞き覚えのある声が聞こえたので思わず立ち止まってしまう。
見ると、喫茶店のようなお店から一緒に出てくるイザックとディアーナだったんだけど、なんだか雰囲気がいつもと違って声を掛けにくい。このまま気が付かないフリをしようと思って一歩足を進めたんだけど、
「おう、アリスか!」
少し遅かったようで、イザックに呼び止められてしまった。
挨拶を交わし、珍しい所で会ったねと笑いかけるとイザックは、
「暇なら俺に付き合わないか? ここのコーヒーはなかなか美味かったからもう一杯飲もうと思ってな」
出て来たばかりのお店に私を誘う。
ディアーナはいいのかと視線を送ると、彼女は一瞬だけ気まずそうな表情を浮かべたけどすぐに笑顔に切り替えて、仕事が残っているからギルドへ戻ると言って小走りに走り去ってしまった。
なんだか変な空気だったのでどうにか話題を、と思っていたからか、
(デートの邪魔だったのにゃ~?)
「デートの邪魔しちゃった?」
ハクが面白そうにいった言葉をそのまま口にしてしまった。まさか、
「いや、ちょうどいいタイミングだったぞ。ディアーナに振られたばかりで気まずかったからな」
なんて返事が返って来るなんて思ってもみないじゃない?
イザック? すっきりした表情をしているけど、表情と言っている中身が合っていないからね!?
ありがとうございました!




