我慢、してたんだね? 2
少数のゴブリンなら、
「くらえっ」
❝ジュジュッ!❞
「キヒィィィィィ!!」
「ギャアアアアアアア!」
ライムが木の上から酸を浴びせ、弱った所を私が<鴉>で首を落とし死体を回収。
これがオークなら、
「お肉にゃっ!」
❝ザシュッ!❞
楽しそうに飛び出したハクが爪の一振りでオークの目を潰した後に、私が<鴉>で首を落とし死体を回収。
そして、アラクネーの場合だと、
「むっ? 往生際の悪い奴め!」
「ハク兄さま、ごめんなさいっ! そちらに逃げてしまいましたわっ」
「えっ!? いやぁ~!!」
「防御壁を張っているから大丈夫にゃ~」
「ほら、アリスはめをつぶってて? ぼくをギュッとしてていいからね?」
ニールとスレイが連携でアラクネーの攻撃を捌きながら糸を吐き出させ、最後に、
「キサマの負けである!」
❝ドカッ!❞❝バキッ!❞
頭や上半身を蹴り潰して息の根を止めてくれたものを、回収するだけ。
……なんだか私、ちっとも狩りの役に立っていない気がするんだけど、
「にゃはははははは! お肉&アリスのお小遣いgetにゃ! 楽しいにゃ~♪」
「ぼくもたのしいの~!」
「ふっ! 宿敵だと思っていたアラクネーがこうも容易く狩れるとは、我らも成長したものよ。兄上たちに我らの成長をご覧いただける機会を待っておりましたぞ!」
「ふふふっ♪ 妾もです! それに兄さま方が楽しそうだと妾も楽しいですわ!」
従魔たちが本当に楽しそうだから、気にしないことにする。
私の仕事はこの後、狩った魔物肉を使っておいしいごはんを作ることだと言われてるしね。
……それにしても、こうして4匹が揃ってじゃれあうように狩りをしているのを眺めていると、
(うちの仔たちって本当に優秀だよね?)
ゴブリンに優位に立てるスライムなんて聞いたこともないし、一応この森の主のような立ち位置のアラクネーを翻弄し、勝利条件=美しい糸を全て吐き出させてから止めを刺す。といった縛りプレイを楽しんでいるスレイとニールはもちろん、ちっちゃな体で敵を翻弄し、爪の一振りで敵の目や頸動脈を引き裂いて調理の下準備=血抜き作業を行ってくれるゼロ歳猫(虎だけど)なんて、そうはいないと思うんだ。
そんな彼らのここ最近の生活を思い返すと、宿でおとなしくお留守番だの、私のお出かけ時の移動がお散歩の時間だったりしていたので、
(ああ、みんな好きなように運動できない環境で我慢してくれていたんだなぁ)
可愛い従魔たちに対して、申し訳なさがこみあげてくる。
今朝のハクの私の頬っぺたサリサリ行動だって、きっと溜まっていたストレスがそうさせていたんだと思うと、やっぱり私が悪かったなぁ……と思えて。
もう少し頻繁に狩り=遊ぶ時間を確保しないといけないなぁ。と、深く反省した。
「オークのから揚げサクサクなのにゃ~♪」
「これの料理名はオークの竜田揚げだよ~」
「カラアゲとタツタアゲはなにがちがうの?」
「えっ……? あ~、サクサク具合?」
から揚げと言えばいつもハーピー肉ばかりだったから、今回はオーク肉を使用してみた。
なんとなく私ルールで<竜田揚げ>と言ったものの、ライムに❝違い❞を聞かれて困ってしまう。
本来なら、<唐揚げ>は下味を付けずに揚げたもの。<竜田揚げ>は醤油やみりんなどで下味を付けてから揚げたものなんだけど……。
私の中では鶏のから揚げ=醤油と酒とみりんで下味を付けたものだったから、レシピ登録も上記を<唐揚げ>として登録してしまった。なので、本来の違いを説明するのがむずかしい。
という訳で、我が家のお家ルールを適用することにした。これは流威が幼稚園生の頃に決めたルールで、衣の違いで分けるんだ。小麦粉だけ、または小麦粉と片栗粉をブレンドした柔らかい衣にすると<唐揚げ>。片栗粉だけを使ってサクサクの衣にしたものを<竜田揚げ>と。
ビジュー(ここ)では今までになかったレシピなので、これで問題はないハズ♪と思いながら説明すると、
「だったら、これはから揚げの派生レシピとして登録するのにゃ♪」
ハクから宿題を出されてしまった。
最初に❝柔らかい唐揚げ❞と❝サクサクな唐揚げ❞と説明しなかったことを、……ほんの少しだけ、後悔した。
ありがとうございいました!!




