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移住のお誘い 2

「………は?」

「「………へ?」」


 簡単な追加情報を提供すると、3人はまたもや口をぽっかりと開けて機能を停止したが、今度はルシアンさんがいち早く立ち直り、


「いつの間にそんな話になったんだっ!? 俺は何も聞いてないぞ?」


 驚きも露わに質問する。


「あれ? 領主が代わったって言っていなかったっけ? 再開してすぐの頃に言ったような気がするんだけど……」


「ああ、それは聞いた。だが、新領主が王弟さまで、村に別邸を建てるなんて夢物語みたいな話は聞いていないぞっ! それは本当に本当の話なのか!?」


「うん、本当。今マルゴさんが村長就任の挨拶をする為にジャスパーに行っててね? そこでモレーノおとう…領主のモレーノさまと意気投合したみたい。一昨日3人で遠見の水晶通信でお話しした時に決まったばかりの話だよ」


 びっくり顔のルシアンさんに笑顔で肯定の返事をすると、ルシアンさんはなぜか疲れ切ったような表情で私を見てから苦笑いを浮かべ、ミネルヴァさんとマッシモは、


「村の中に領主さま、しかも王弟殿下の別邸が……? どうしましょう! うちの子たちが知らずに無礼を働きでもしたら……」


「うちのチビ共もだよ。 決して無礼でも頭の悪い子たちでもないが、子供は子供だ。何をしでかすかわからん怖さがあるな……」


 2人揃って顔面を蒼白にして首を横に振っている。


 この世界では平民に対する貴族の横暴や❝無礼打ち❞がまかり通っているようだから、2人の心配はもっともだけど、モレーノお父さまは決して横暴な貴族なんかじゃないし、子供たちもいつまでも今のままの子供たちではない。


 ミネルヴァ家の子供たちはミネルヴァさんのしつけが功を奏して衛兵さん(おとな)たちと良好な関係を築けているし、たまに羽目を外してしまう子も確かにいるけど、それはこれからの教育次第でどうとでもなると思うんだ。何かと忙しいモレーノお父さまがネフ村に行けるのは、まだまだ先の話だろうしね。


 マッシモの所も子供たちも、子供らしい純粋な優しさと賢さを感じさせる子たちだったから、きちんと注意しておけば、❝怒らしたら怖い大人(けんりょくしゃ)❞に対してそうそう失礼な態度を取ることも無いように思う。


 そう言って2人を説得しようとして、ふと気が付いた。あれ? マッシモはもちろんだけど、ミネルヴァさんも乗り気だったからこその心配なんだよね?


 だったら、


「領主さまと村長さんはミネルヴァ家が移住するなら歓迎するって言ってくれてたよ? 2人とも人格者だから、明らかな無礼にはしっかりとお叱りがあるだろうけど、多少の失礼なら笑って目をつぶってくれると思うんだ。

 もちろん、それに甘え切ってしまうような子供たちだと困るけど、そこはきちんと教育するでしょ?」


 2人の鷹揚さをアピールしながら、子供たちの❝教育❞に期待をかける。


 世の中怖いのは権力者だけではないんだし? 年上っていうだけで子供に偉そうに振舞う大人たちの方がよっぽど怖いよね? 躾とか言って暴力とか平気で振るうバカもいるだろうし。そんなバカに付け込まれないように、子供たちにきちんとした教育を施せばいいだけの話だ。難しく聞こえるかもしれないけど、実際にミネルヴァさんはこれまで実践して来ているはずだしね。


 にっこりと笑いかけながら、次の条件を提示する。


「今回の移住に関しては、❝領民権❞と❝入村権❞の購入は不要だよ。ああ、もちろん❝出領権❞も今回は不要。きちんと両方の領主さまと村長さんに了解を得ている話だから安心してね?」


 領主にとって領民は税金を納めてくれる大事な存在。だから勝手に他所の領に行かれると困ってしまう。


 また、新たに領民として迎える場合も、何かの際には❝自分の領民❞として守る必要が出てくるし、住人を受け入れる村や町でも、限りある土地を分ける(貸す)のだから、それなりの費用が掛かって来る。


 この世界のこの国では、冒険者以外が住処を変えるには安くない税金が掛かるらしいんだけど、今回はそれが不要だと伝えると、2人は目を瞬いて、


「「そんな話が本当にあるの(か)? アリスさんが騙されてるとは思わないけど、どこかで何か誤解とかがあるんじゃない(か)?」」


 喜びよりも不安を露わにする。


 だから、本当は黙っておくつもりだった内情を説明することにした。


 今回領から出るのに税金(罰金のようなもの)を支払わなくても良い理由は、❝出て行くのが孤児たち❞であることが大きな理由だ。


 孤児たちや孤児を世話する者が十分な税金を納めることは難しい上に、時には❝援助金❞が必要になり、領費を圧迫することが多い。(ミネルヴァ家は教会に付属していなかったので援助金の対象外だったみたいだけど)


 また、❝援助金❞を受け取って育てられた子供たちが、みんながみんな、きちんと育つわけでもない。


 独立できる年齢になったらまっとうな仕事について、まっとうに税金を納めてくれる元孤児たちもたくさんいるけど、それまでの人生の中で世間の冷たさを痛感し性根を歪めてしまった孤児たちが、犯罪者になることも少なくはない。


 それを思えば、早いうちに金食いの犯罪者予備軍(ひどい言い方だけど、それが世間の認識らしい……)を引き取って貰えることは領主にとって損な話ではないようだ。


 ミネルヴァ家に限って言えば、すでに自分たちで生活費を稼ぎ出せるようになっているので、その限りではないんだけどね? 今回はミネルヴァ家以外にも孤児院の孤児たちを数十名ほど(ハクとライムが厳選して)連れて行くのでプラスマイナスゼロと判断されたことを説明する。(これは総支配人さんの説得のお陰なんだけど、今は黙っておくことにする。領主の尊厳は守らないとね!)


 そして❝領民権❞と❝入村権❞については、今回は移住する子供たちとその保護者たちが全員村の起こす産業に従事することで村の発展に寄与することが条件となることを説明した。


 仕事の内容は、農業と組紐&カモミールティーの製造販売が主になる。例外として、村の保安要員や冒険者として活動することも認められているが、特例として、<冒険者>としての特権である<自由に土地を移動する権利>だけは与えられない。<冒険者>になるものは、その旨の❝誓約❞を行うことが条件になる。


 これらを説明すると、2人は黙ってじっと考え込でしまう。


 この世界のお引越しは❝家を買う❞以上の一大イベントらしいから無理もない。


 マッシモに、今回一緒に移住するなら同じ条件が適用されるように話を付ける事を約束し(ダメなら私がこっそりと立て替えれば済む話だし?)、返事は急がないからみんなでゆっくりと考えて欲しいと伝え、私たちはミネルヴァ家を後にした。


本日もありがとうございいました!


今回2回目のコロナワクチンを接種しました。

皆さんがワクチンを接種する際には十分な準備(解熱剤、口当たりの良い食料、スポーツドリンクなどを用意)をされることをお勧めします。

準備不足だった大福は、後悔をしたので。

せめてアイスとかプリンとかゼリーとかを用意して置けばよかった……。

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― 新着の感想 ―
[一言] >皆さんがワクチンを接種する際には十分な準備(解熱剤、口当たりの良い食料、スポーツドリンクなどを用意)をされることをお勧めします。  あー、わかる。  流動食に近いものとか、ゼリータイプの…
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