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されて嬉しいサプライズ 2

 仏頂面で何か言いたげな様子のモレーノお父さまと、満面のドヤ顔で胸を張るマルゴさん。


 私は何をしたのかと記憶を振り返っても、何も思い当たらない。焦ってお父さまに話しかけようとすると、


(アリスはバカなのにゃ~。『お父さま、色々とありがとう! だ~いすき♪』って言えばいいだけなのにゃ~)


 ハクが呆れたような声音で心話を送って来た。


 ……❝だ~いすき❞は言っていないけど、きちんと感謝とお礼は伝えたよね? 何か❝ありがとう❞を言い忘れたことがあったかと記憶をたどり始めると、水晶から大きなため息が聞こえたので慌てて視線を戻す。


 するとお父さまは寂し気に、


「私には他人行儀に丁寧に話すのに、マルゴには随分と親し気なのだね? ……妬けてしまうよ」


 とポツリと呟いた。それを聞いたマルゴさんが、


「アタシの方がアリスさんとの付き合いが濃かったってことですかねぇ? アタシにとっちゃアリスさんは孫娘のようなもの。 孫に懐かれるババアってのは、こんなに幸せなものなんですねぇ」


 本当に嬉しそうに笑ってみせる。……新米村長さんが自分の所の領主さまに向かってそんな態度でいいのか?という疑問は心の奥底にしまっておく。 きっと、それだけの信頼関係を築けているということだよね!


 それにしても……。私にそんなつもりはなかったんだけど、ついつい2人に対する口調が違ってしまったらしい。どうフォローしたものかと考える傍から、


「アリスに対する愛情なら、決してマルゴに負けるものではないのにな……。これが男親の悲哀というものなのか」


 モレーノお父さまの寂し気な呟きが零れ落ちる。


(ほら、アリス!)


 余りにもしょんぼりとした様子のお父さまを見かねて、


「お父さま! そんなに寂しいことを言わないで? 私はモレーノお父さまが大好きなんだから!!」


 湧き上がってくる照れくささには大きな蓋をして、ハクの助言に従ってみる。❝だ~いすき❞は流石に難しかったからちょっとだけ変更したけどね。お父さまにはそれでも十分だったようで、


「ああ、アリス! 私も君が大好きだ! だからもっとお父さまには気楽に話しておくれ? でないと寂しくなってしまうからね。 それに、どんな些細なことでももっとお父さまを頼ってくれると嬉しいね」

 満面の笑みで優しく語り掛けてくれた。


 でも、それを見たマルゴさんが、


「アリスさん。その街にも美味いパン屋はあるだろうが、アタシがアリスさんとハクちゃんとライムちゃんの為だけに焼くパンほどではないだろう? たまには村に帰って来てアタシの焼く焼きたてのパンを食べてくれると嬉しいねぇ」


 と言うと、一瞬だけ悔しそうな表情になったお父さまが得意気に、


「マルゴ。君の焼く美味いだろうパンだがね。アリスはそれをもっともっと美味しいものに変えることができるのだ。そしてその料理名を私に命名させてくれたのだよ」


 と胸を張り……。


 お父さまもマルゴさんも、なんていうか、その……。


(2人とも大人げないのにゃ!)


 ……ハクの言う通り、かもしれません。


 ちょっとだけ、こそばゆいけど嬉しい気持ちが胸の奥から湧き上がっていることは……、2人には内緒です!



ありがとうございました!


ご心配くださったり励ましの言葉をくださった皆さま、ありがとうございます!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 只々お仕事・ご家族の事の方を大事にしてあげて下さい。ここはあくまで息抜きとして、楽しんで執筆して下さい。ストレスを感じながら書く、は本末転倒ですからね。
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