新たなビジュー神像 1
白く光り輝いたビジュー像。もしかしたら、像を彫ったヴァレンテ君はビジューに認められるほどの鬼才だったのか!?と一瞬だけ思ったんだけど、そうではなかった。
ビジュー曰く、
「きちんと私だってわかる像に込められた彫り手の敬愛の気持ちが心地よくて、つい反応してしまったのよ。もっとも、私への気持ちよりもアリスへの気持ちの方が強く籠められていたけれど、ね? それでも十分に心地の良いものだったわ」
とのことだった。
女神像なんだからビジューへの敬愛の気持ちが籠っているのは当たり前のことだろう。そこに私への気持ちが込められているなんて、不敬というヤツではないかと少し不安に思ったけど、ビジューはいたずらな表情で笑うと、
「女神像を作る職人がみんな女神に対しての敬愛の気持ちを込めて制作している訳ではないのよ? 万人の目に触れる女神像の彫刻を依頼されたことに対する自尊心とか、これを機に名を上げたいという野心しか詰まっていない像がたくさんあるもの。あとは、女神像を目当てに集まる信者からの献金が増えるだろうっていう、愚かな願望がこびりついていたりね」
まるで他人事のようにあっさりと暴露する。……教会に納められる自分の像なのに、そんな扱いで腹は立たないのかな?と思ったけど、ビジュー自身が現在の教会にあまり期待をしていないようなので、黙っておくことにした。
……王都から来てくれる責任者さんがまともな信仰心の持ち主であることを祈っておこう。
「これからはいつでもおしゃべりできるわね! おしゃべりしたくなったらアリスの夢の中にお邪魔するわ!」
地上へ意識を戻す私を、満面の笑顔で見送ってくれたビジューは本当に嬉しそうだ。
……ヴァレンテ君が彫ってくれたビジュー神像は今後、ビジューと私をつなぐ携帯電話かアンテナのようなものの代わりになるらしい。
もしかして、今後教会に納められるビジュー神像が本来のビジューに似ている物だった場合は、それも携帯電話代わりになってしまい、誰でもビジューに直接話しかけることができるようになるのかという心配は必要のないものだった。
今後制作されるビジュー神像の中で、ビジューに似ていて且つビジューに対する敬愛の心が籠っている物に対してのみ、教会に納める時に一度だけ光らせて制作者を労ってあげるつもり、と聞いてちょっとだけ心配になっていた話は内緒だ。
……女神があまり地上に干渉すると、下手すれば天変地異が起きるんじゃなかったのかなぁ?
まあ、彼女が大切にしている世界のことだから、きっとそのあたりのことはきちんと考えているだろうけどね?
❝いつでもおしゃべりできるから❞ということでいつもよりも早く地上に戻ることにした。
いつもはもっとゆっくりしていても、地上での時間はさほど経っていなかった。だから今回はきっと大丈夫! 瞬きするくらいの時間くらいしか経っていないハズ!
……という私の希望は甘すぎたのかな?
教会の中に置いたビジュー像の前で私がゆっくり目を開いたら。
とても心配そうな表情を浮かべたみんなに周りを囲まれていた……。
……あれ?
ありがとうございました!
短い上に、なんの報告もなしに投稿を休んでしまってすみませんでした!




