治癒士ギルド 静かではない戦い 4
捕らえた教会&治癒士ギルド関係者の一部をそのまま辺りに転がして、集まってくれた衛兵さん&冒険者・商業ギルドメンバー&街の有志たちは、とても楽しそうにおやつタイムを楽しんでいた。時折、
「我らをこのような目に遭わせておきながら、貴様らは何をしているのだ!? 戯れの時間が終わったなら、さっさと我らを解放しろっ」
とか、
「そのような貧相な菓子では腹も膨れまい? 今わしを逃がすなら、この街で一番…、いや、王都でも一番の店の菓子をたらふく食わせてやるぞ?」
という雑音が聞こえるけど、誰も取り合わない。……というか、
「美味い! 美味いなぁ……! なんてぇの? 腹より心が満たされる?」
「ああ! 本当に美味いっ! 王都で1番の店の味なんて知らないが、俺は今までこんなに美味い菓子を食ったことがないぞ!」
「ねえ、アリスちゃん? 私たち、今回とっても頑張ったのよ! だから……、ご褒美にこのお菓子を買い取る権利が欲しいな~、なんて……?」
「ああ、もちろん今回のことは、俺たち全員が当事者だってことは理解っているんだ! でもな? こんなに美味い菓子、家で待ってる家族にも食わせてやりたくなるじゃないか!」
「もちろん、ダメならいいんだ! あ~……、俺の分だけど、ここで食わずに持って帰ってもいいかな?」
なんてわざとらしく言っては、教会&治癒士ギルドの関係者を歯噛みさせていた。
今まで高額な献金や治療代を吹っ掛けては贅沢を享受していた自分たちが転がされ、目の前でたくさんの人たちが幸せそうにおやつタイムを楽しんでいる姿を見せられるのは、ヤツらにとってとても悔しい事のようだ。
いたずらな表情で私をチラリと見たハクは、イザックと連れてゆっくりとヤツらの傍に寄って行くと可愛らしく「んにゃ~~ん♪」と鳴いてお菓子を強請り、ヤツらの目の前でことさらおいしそうに食べるという嫌がらせを行っている。
「くっ! 畜生の分際で我らを愚弄するとは……!」
目の前で嫌がらせを受けた神父服の男がハクを憎々し気に睨みながら悪態をついているけど、良いのかな? その仔、そんな可愛い姿でも一応<神獣>なんだよ?
「まあ、まあ! なんてこの場に不似合いな、甘く優しい素敵な香りなの?」
「逃げかけたネズミを捕まえた褒美に、私もいただいてよろしいですか?」
「自分の分は家で食べたい」と言う冒険者の言葉に思わず笑い、「今は無理だけど、今日来てくれた人には改めてお礼を用意する」と宣言し、集まってくれた人たちからの歓声の大きさにびっくりしていると、見知った顔に声を掛けられてもう一度驚いた。
「裁判官さん、と、怪我をしてた人のお友達さん……?」
良くわからない組み合わせに思わず首を傾げていると、
「あら、❝首席❞が抜けているわ。 改めてご挨拶するわね? わたしはマリアンジェラ。この街の首席裁判官よ。今日は当然お仕事で来たの。
ん~♪ やっぱりアリスさんのお菓子はおいしいわぁ! 王家から国一番のお墨付きが出たんですって?」
「ええ。アリスさまさえよろしければ、いつでも『王家御用達』の看板を作る準備がある、とおっしゃってましたねぇ。おお、これが❝噂❞のアリスさまの手作りお菓子ですね! ……………なんという口福。
ご挨拶が遅れました。私はロマーノ。王都より派遣されて来ました」
2人が自己紹介をしてくれるが、それでもさっぱり2人の関係はわからない。ロマーノさんは苦しんでいた冒険者さんのお友達だから有志枠での参加だと思っていたら、❝王都から来た❞なんて言ってるし。
って言うか、❝王都から来た❞ってなんだか怪しくないかな? ❝消防署(の方)から来ました❞って言って、消火器を買わせるワルイヒトを思い出すのは私だけかな?
なんて心の中で突っ込んでいると、マリアンジェラ首席裁判官がとてもイイ笑顔を浮かべながら、
「ああ、そんな所に転がっていたのね? なかなか出てこないから迎えに来たのよ」
部屋の片隅で縄でぐるぐる巻きにされている男の傍に歩いて行く。
誰がいるのかと思ったら……。みんなが突入してくれてからどうにも静かだと思っていた、<治癒士ギルド>のギルドマスターが憎々し気に私を見ていた。早々に殴り飛ばされて気を失ったらしいけど、誰にも運ばれずに放置されていたようだ。
……どうして私が睨まれるんだろうね? 悪いのはどう考えても幼い子供を攫った上に飢えさせていた自分たちだろうに。
呆れた気持ちを隠さずにじっと彼を見つめていると、
「アリスさま。このようなものを目にしては、美しいその瞳が汚れてしまいます。お父さまが嘆かれますよ?」
ロマーノさんが私の視界を塞ぐように前に立つ。途端にギルドマスターの姿は見えなくなったけど、代わりに、さっきよりも大きな声で私を罵る声が聞こえる。
「貴様っ! 我をこのような目に遭わせたことを後悔するがよい! 貴様の父などビジュー神の怒りに触れ、すぐにでも」
❝ドシュッ❞
「すぐにでも、なに?」
ギルドマスターがどんなことを言っても私は気にするつもりはなかったけど……。それは❝私への罵詈雑言❞だけだ。
モレーノお父さまに対してビジューが何かをする? あのビジューが、どこまでも下衆なギルドマスターを贔屓して、私の大切なモレーノお父さまに何かをすると言われるなんて、とっても不愉快だ!
どこまでも自分の都合の良いようにビジューの名を利用しようとする男に腹が立ち、ついつい、ウインドカッターを放ったことは……後悔なんてしていない。ちゃんとヤツには当たらないように気を付けて撃ったからね!
え? ヤツの頭のてっぺんだけ髪が無くなってる?
きっと、最初からなかったんだよ^^
遅くなってしまってすみません! (気が付いたら日付が代わっました……)




