表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

587/763

治癒士ギルド 静かではない戦い 3

 ハクの張ってくれる結界は物理攻撃や魔法を防ぐだけでなく、防音も防塵も可能な優れものなんだけど、今回は音が聞こえた方が都合が良いので防音だけを追加してもらった。おやつ中に埃が舞うのは遠慮したいからね。


 だから、


「このっ、神を恐れぬ慮外者めっ!! 女神の怒りに触れるが良い!」

「あ? ビジュー神が子供を誘拐してアリスを搾取の対象にしろっておまえらに言ったってか? んな訳ねぇだろ!!」

 ❝ドカッ!!❞


 だの、


「わ、わたしは無関係よ! 子供の誘拐なんて知らないわ」

「だったら裁判でそう訴えると良い。裁判官や水晶が認めたならすぐに保釈されるさ。おいっ、この女も連れていけ!」

「ハッ! ほら、さっさと歩け!」


 だの、


「わしたちにこのような真似をして、今後、街の連中に何かあったらどうするつもりだ? 困るのはそちたちであろう!? 

 ほれ、己の立場がわかったならさっさと縄を解いて誠心誠意詫びるがよいぞ。今なら地に頭を擦りつけ、中銀貨を5枚も差し出せば許してやる。わしは寛大だからな!」

「治癒士不在の間は優秀な薬師たちに頑張ってもらいましょう。なに、今ならポーション類のストックも薬草類もストックもたっぷりとありますから心配はいりません。それに王都の治癒士ギルドから何名か派遣されるとか?」

「ああ。ギルドマスターからそのように連絡が入ったので、恥を忍んで受けさせてもらった。これ以上民を不安にさせる訳にはいかんからな」


 と言った会話が当然聞こえてくる。


 大人たちの怒号に最初は怯えていた兄妹だけど、結界内が安全だと言うことを思い出すと興味津々で周りを観察しはじめ、教会&治癒士ギルド員たちのあまりの見苦しさに、


「……あいつら、あんなに偉そうにしてたのに、ちっとも偉くなかったんだな」


 スプーンを銜えたままのおにいちゃんがポツリと呟き、


「うん、ちっともこわくないね!」


 ゼリーを鼻の頭に付けたままの妹ちゃんが、嬉しそうに笑った。


 屈託のない笑顔を見て、今回のことが彼らのトラウマとして刻まれることはなさそうだと安心し、わたし達も一緒に笑った。












 しばらくすると喧騒も止み、


「アリス。もう出て来ても良いぞ」


 美味しくクッキーを摘んでいる私たちに、呆れたような声が掛かった。


 ハクが結界を解くと同時に私の背中が軽く突かれ、


「アリス、俺も腹が減ったんだ。クッキーを一袋分売ってくれ!」


 振り向くとイザックが小銀貨(1万メレ)を片手に笑っていた。


 間髪置かずに商業ギルドマスター(ネストレさん)や冒険者ギルドマスター(オズヴァルド)も同じように小銀貨を取り出し、それを見た衛兵部隊長さんが「仕事中でなかったら……っ」と悔しそうに3人を睨むので、


「お金なんていらないから、集まってくれた人たちにこれを配ってくれる? ささやかなお礼の気持ちだからみんなで食べてね」


 インベントリからお菓子入りのバスケットを取り出す。 クッキーだけでなく生キャラメルなどの摘まみやすいお菓子なので、みんなの邪魔にはならないハズ。


 ハクとライムは早速バスケットに寄って行って自分用にお菓子を取ってもらっているので、今回はこれで良いみたい。


(全部出しちゃダメにゃよ?)


 とだけ言われたので、【複製】用の分はしっかりと確保しておく。


 ……もう少しで全部出すところだったって言ったら、やっぱり怒られるよね? 黙っておこう……。


ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] >今回は音が聞こえた方が都合が良いので防音だけを追加してもらった。おやつ中に埃が舞うのは遠慮したいからね。 おそらく追加は防塵。
[気になる点] 音が聞こえたほうがよいのに防音を追加?どっち?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ