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治癒士ギルド 静かな戦い 5

(アリス! しっかりするのにゃ!)

 ❝がぶっ!❞


「っ!! いったーっ!!」


 私では目の前の幼子を治療できない。その事実に愕然としていた私を正気づかせてくれたのは、やっぱり頼りになる私の保護者(ハク)だった。


(落ち着いて考えるのにゃ! 現段階でアリスの治癒スキルのレベルが低いのは仕方がないのにゃ! だけど、アリスのスキルで根治できなくても薬を飲み続けていれば治る病気にゃんだし、治癒士どもの回復魔法が有効ならアリスの回復魔法だって有効に決まっているのにゃ! 

 アリスはただ、自分にできる最善を尽くせばいいだけなのにゃ!)


 と言われて気が付いた。


 ビジューから貰った【治癒スキル】の使い勝手があまりに良すぎて、今までいろいろな怪我や病気を難なく治せていたせいで、私はいつの間にか驕っていたようだ。


【治癒スキル】さえあれば何だって治せる、と。【治癒スキル】で治せない病気や怪我などない、と。

 その驕りがイレギュラーなケースへの対応を鈍らせた。ハクの言う通り、少し考えればできることはいくらでもあるだろうにね。


 私は改めて【診断スキル】を使用する。



 名前:ジーノ

 性別:男

 年齢:5歳

 状態:魔力循環不全症

 治療法:



 いつもなら❝ヒール×回数❞などの治療法が表示されていたのに、今回はここが空白だった。その為私にできることは何もないと思い込んでしまったのだけど、ハクがヒントをくれた。

 治療法の欄が空白なのは、私がまだ取得していない魔法が必要だからだろう。でも、どんな魔法が必要なのかがわかれば何かの手掛かりになるかもしれないので、まずは【診断】スキルに問いかける。すると、


 名前:ジーノ

 性別:男

 年齢:5歳

 状態:魔力循環不全症

 治療法:リジェネ



 治療法が表示された! やっぱり未収得の【リジェネ】が必要なんだ。


 リジェネってどんな意味だっけ……?  んっと、たしか、再生とか繰り返し生み出すとか?


 でも状態は❝魔力循環不全症❞。これの何を再生するの? 繰り返し生み出すのは回復力でいいのかな? だったらヒールをかけ続けるとかで対応できる……? でも、ヒールは外傷にしか効かない魔法だしリカバーを繰り返し掛ける? でもリカバーを繰り返すくらいで治るなら、きっと【診断】スキルがそう教えてくれるだろうし……。


 ああ、そうだ。飲んでいる薬の成分から必要な魔法がわかるかも!


 と考えていると、


「……だれ?」


 か細い声で誰何(すいか)された。振り返ってみると、ジーノ君の目が私に焦点を合わせて、不思議そうな表情を浮かべている。


「挨拶もなしに突然部屋に入ってごめんね? 私はアリス。お父さんの知り合いだよ。ジーノ君とお話がしたくて来たの。おば…おねえちゃんと少しだけ、お話してくれるかな?」


 まずは自己紹介だよね? 詳しいことはそれからだ。と思っていたのに、


「アリ……ス? ぼくのせいでワルイヒトにつかまっちゃうの?」


 ジーノ君は私の名前を聞くなり、大粒の涙を溢し始めた。


 しまった! 5歳の子供だからと油断した。 今回の件をご両親がどこまで話しているのかの確認もせずに名前を名乗ってしまったことを後悔する。 ジーノ君は全ての事情を知っているようだ。


「悪い人になんて捕まらないよ~? 私は君に会いに来ただけだもん。少しだけお話してくれたらすぐに帰るよ。ジーノ君、今日の体調はどうかな? おねえちゃんとお話できそう?」


 5歳の子供にまで【治癒士】=ワルイヒトと思われているなんて、本当にどうしようもないな、【治癒士ギルド】!と心の中だけで悪態をつきながら笑顔を浮かべると、


「ほんと? ぼくのせいでおねえちゃんはかわいそうな人にならない?」


 ジーノ君はほっとしたように泣き止んだ。


 ……泣き止んでくれたのはいいんだけど、❝ジーノ君のせいで可哀そうな人になる❞ってなに!?


 思わず眉間にしわを寄せてしまうと同時に扉が開き、


「ジーノ! 父さんも母さんもちっとも可哀そうなんかじゃないんだぞ!! おまえと一緒に生きていることは❝幸せ❞なことなんだ! 父さんの言葉を信じてくれ!」

「そうよ、ジーノ! あなたは母さんと父さんの宝物なの! 意地悪な人たちの言うことを信じちゃだめ!」


 ご両親が飛び込んできた。


 ああ、うん。なるほど?


 こんな幼気な子供の前で不用意な発言をした大人がいたんだね? 


「でも、ぼくのせいでお父さんとお母さんははたらきづめでかわいそうだし、お家におかねがなくてかわいそうなんだ……」


 ご両親の必死の言葉にもジーノ君の表情は晴れない。


 それにしても、これって5歳の子供の言う言葉じゃないよね? 不用意なのか悪意なのかは今はわからないけど、


「お家にお金がないの? だったらそれはジーノ君のせいじゃなくて治癒士ギルドの治癒士たちが意地悪だからだよ? その証拠に、もう治癒士ギルドに意地悪されないようになるからこれからは大丈夫になるもの」


 とりあえず、ズルいのは承知で全ての不都合を【治癒士ギルド】に押し付ける。そして、


「じゃあ、おねえちゃんに教えてね? 治癒士たちはジーノ君の治療にどんな魔法を使ってた? 【ヒール】? それとも【リカバー】かな?」


「……ヒール」


「そっか、ありがとう! じゃあ【ヒール】!」


 さっさと回復の手助けを。 ヒールでは根治しなくても、少しは役に立つようだしね。


 魔力多めにかけてみると、少しだけ、ジーノ君の顔色が良くなった♪


ありがとうございました!

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