表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

576/763

治癒士ギルド 静かな戦い 2

「アリス! 仕事が来たのにゃ♪」

「……!!」


 ライムを抱き枕にしながらぐっすりと眠っていた私のおでこをてちてちと叩きながら、ハクがご機嫌に私を起こす。


「わかった、急ごう!」


 時計を見るとまだ夜明け前。こんな時間に来る急な❝仕事❞のほとんどは❝大怪我の治療❞なんだけど、ハクの様子から、今夜の怪我人は命に関わるほどの怪我ではないと推測されて、ちょっとホッとした。


 宿の好意で使わせてもらっている従業員用の控室に向かうと、ちょうど、頭から血を流している男性が運び込まれる所だった。


【診断】しながら簡単に状況を聞くと、酒場でお酒を楽しみ、店の女性を伴って2階への階段を上がろうとしていたところ、うっかりと足を滑らせて階下へ転げ落ちてしまったらしい。


「階段なんかでいちゃついているからだ、このバカが。あ~、なんか落ちた直後に腹を押さえてた気がして……、腹の怪我は怖いって聞いたことがあるので連れて来ました。こんな時間に来てすみませんが、治してやってもらえませんか。【治癒士ギルド】では夜が明けてから出直すように言われてしまって……。薬師の店よりこっちの方が近かったんです」


 一緒に飲んでいたらしい友人男性が申し訳なさそうに頭を下げる。


 うん、急いで連れてきてもらって正解だ。どんな転げ落ち方をしたら内臓を傷めるんだろうね?


 友人男性の診たてどおり、男性の怪我は頭よりもお腹の方が重症だった。頭の方は頭皮を切ってしまった為出血が多いだけだけど、お腹の方はちょっと急いで治療した方がいい。


「この患者さんの治療にはクリーンが1回とヒールが2回必要になるから、代金は」

「わかった。釣りはいらない」


 私が治療費を告げ終わる前に、友人男性が硬貨を1枚テーブルに置く。私が言おうと思っていた代金に少しだけお釣りがくる硬貨。友人男性はハクが可愛らしいお手手で示していた料金表で計算をしたらしい。

 代金を受け取って治療をすると、


「……本当に、それだけでいいんだな」


 不思議そうな声でぽつりと呟かれた。


「深夜料金も、治療を急がせるための心付けも不要だと言われて半信半疑だったんだが、あの衛兵の言葉は本当だったんだな。ここへ連れてきて良かった……」


 と続けられた言葉に私はため息を吐く。


 以前に聞いていた通り、治療を受ける為に心付けが必要だと言うことは皆が知っていること。でも、出来れば払いたくはないお金だと言うことが良くわかる。


 あ、でも、❝深夜料金❞は貰っても良かったのかもしれないな。


 と、ちょっとだけ後悔していることは皆には内緒だ。寝ている所を起こされるのは、結構辛いものだからね……。


 ハクが❝しまった!❞と言う表情をしているけど、見ないことにして、私は増血薬の販売に取り掛かる。


 頭から失った血を増やすための薬だと伝えると、「それは本当に必要な物か?」と聞かれ、「別に飲まなくても命に別状はないよ。ただ、貧血で頭がくらくらしたりすることを防いで体力の回復を早める為のものだと思ったらいい」と答えたのに、あっさりと購入してくれるから不思議だよね?


 友人男性は満足そうに微笑みながら、男性を連れて部屋を出て行った。


 ……男性の意識はまだ戻っていないんだけどね? なにか急いで戻る必要があったのかな?


ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ