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治癒士ギルド 2

 私たちが家の中に立てこもったのが気に障ったのか、<治癒士ギルド>からの使者は馬車から降りて来て玄関先で怒鳴り出した。「無礼者」とか「我らを見くびると後悔するぞ」とか言っているんだけど、無礼なのはどっちだろう。突然やって来て馬車から降りもしないで初対面の女性を呼び捨てにし、相手の都合も聞かずに連行を強制しようとする人の方じゃないのかな?


 私たちの態度を不快に感じたのなら、いつまでもこの場に留まっていないでさっさと帰ればいいのにね? 望んだ覚えのない治癒士ギルドに所属する❝許可❞をさっさと取り下げてさ。


 使者の怒鳴り声をいつまでも子供たちに聞かせるのも不愉快なので、ハクに頼んでこの家に防音結界を張ってもらったんだけど、ルシアンさんから「マッシモが戻って来たのがわからないと困る」と言われたので使者の周りだけを防音結界で覆ってもらうことにした。後は、


「【ライト】」


「うわぁ! お外みたいに明るいね!」

「ほんとだ! アリスさん凄~い! ……【ライト】の魔法があれば油代がいらなくて便利ね。いいな~」


 部屋を明るくすると、子供たちの緊張が少し解れる。


 この部屋の窓は木でできているから締めると途端に暗くなるんだよね。部屋の隅に置かれていた灯りは獣油のランプだから特有の臭いもするし、さっさと【ライト】に切り替えて正解だった。


 みんなが少し和んだ所で質問してみる。


「ねえ、私の為に治癒士ギルドを怒らせても良かったの? みんなが怪我や病気をした時に治してもらえなくなるかもしれないし、教会にお祈りに行きづらくなっちゃうよ?」


「今までだって治癒士に治してもらったことなんてないよ? だって高いもん」


「そうそう。それに金があったとしても治癒士は俺たちなんて相手にしてくれないさ」


「うんうん。私たちが教会の門の前を通ると怒るもんね、汚らしいって。今はアリスちゃんのお陰で毎日お風呂屋さんに行ってるし服だって買ってもらったから汚くないのに、それでも怒るんだよ」


 みんなに迷惑をかけるくらいならさっさとラリマー(ここ)を出て行こうと思っての質問だったんだけど、子供たちの口から出てきたのは、私がますます治癒士ギルドを嫌う理由ばかり。


 元々関りがないのなら、少しだけ、みんなの優しい気持ちに甘えてもいいかな?と思った時だった。


「ボクたちをきらいな女神さまよりも、ボクたちの女神さまの方がずうぅぅっとたいせつだもんね!」


「ね~っ! 女神さまはあたしたちで守らなきゃ!」


 私から離れた所にいる子供たちの話し声が聞こえたのは。


 途切れ途切れであまりよく聞こえなかったけど、何か引っかかりを覚えて彼らに注目すると、


「あ、バカっ! しーっ! しーっ!!」


 ヴァレンテ君が慌てて彼らの口を手で塞ぐ。


 女神さまって、私が彼にお願いをしている女神像のことだよね? 教会と同じ女神なんだけど……。 

ああ、それよりも女神(ビジュー)が彼らを嫌ってるわけがないって、ちゃんと説明しないと!


「ねえ、みんな? ビジュー神はみんなのことを嫌ってなんか」

「いいじゃん、もうあの女神像の試作品を見せちまえよ。 俺たちは凄くイイ出来だと思うぜ?」


 みんなに女神ビジューと教会(治癒士ギルド)は別物だと説明しようとした私だけど、同時に聞こえたクリスピーノ君の声に反応してしまう。もう、試作品が出来ているの!? だったら、見たい!!


「あ、いや、その……」


 見たい!


「なんとなくのイメージで彫ってみただけで、アリスさんに見せる為にはもっときちんと……」


 でも、クリスピーノ君たちは気に入ってるんでしょ? 見てみたい!


「アリスさん、ゴメン!! あれは俺たちの女神像で……。アリスさんにはもっと別の女神像を彫ろうと思ってるんだ」


「この世界の神は創造神ビジューだけじゃなかった? 違う女神がいるの?」


 ビジューから聞いていた話と違っているので、ビジューの気が付かない内に新しい神が生まれたのかと(大問題!!)驚いていると、


「これが私たちの女神像です。とっても素敵に彫れていると思います。アリスさんは気に入りませんか?」


 ベニアミーナちゃんが私の片腕位の大きさの女神像を見せてくれた。たおやかでとても美しい女神像だ。


 とても綺麗な女神像なんだけど……。


 ん? なんだかどっかで見覚えがあるような?


(へえ、アリスにそっくりにゃ! ヴァレンテは見所があるのにゃ♪)


 ……………うん。やっぱりそうみたい。


 ベニアミーナちゃんが大切に抱えているのは、私に似ている女性の像だった。


ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言]  ああ……これは一回、説教しないとね。  ビジューも被害者。 金儲けの道具にされているだけで、当人(神)は悪くないって。  けど、結局なにもしてくれない神より、なにかしてくれる生きてる人の…
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