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のんびりとした時間は長くは続かないようだ……。 5

 人為的に起こされた食中毒騒ぎの原因は、この広場の近くにある建設工事の受注争奪戦に敗れた業者の❝いやがらせ❞だった。


 今回建設を請け負っている業者と敗れた業者間にはもともと因縁があり、今回の敗北にどうしても納得のいかなかった業者が人を雇って今回の犯行に及んだらしい。


 建設現場の人たちが訪れることの多い北の広場に屋台を出し、サービス価格で食べ物を販売したら、きっとたくさんの作業員が買い求めるだろう。その彼らが2~3日使い物にならなくなれば日程に支障が出るだろうから、建設を請け負った業者の評判が悪くなり困るだろうと考えての犯行のようだけど……。


 現場にいてもその業者と直接関わりのない人たち、いわゆる臨時でお手伝いをしている人たちも多数いるし、北の広場には建設に関わっている人だけでなく一般の人、近くに住んでいるご年配の方や子供たちも来ることについてはどう考えていたんだろうね?


 ❝いやがらせ❞でこんな大事を引き起こす可能性は考慮しなかったのかな? もし考えていなかったのなら、その業者が敗北したのは当たり前。あまりにも身勝手で浅慮過ぎるもん。


 ちなみに、これらの事情を説明してくれたのは屋台の責任者ではなかった。彼は知らぬ存ぜぬで通し、自分はたまたま仕入れた料理をそのまま広場で販売しただけだと言っていた。


 でも、それにしびれを切らした1人の冒険者(私が教会の側で治療をした男性)が、転がっている鍋の底から料理をこそぎ取り、売り子さんたちの中でも一段と扇情的な衣装の女性の口に無理やり入れようとすると、あっさりと告白してくれた。


 大勢の前で両腕を縛られた状態なのも屈辱なのに、この上お腹を壊したり嘔吐する姿を人目に晒すのは我慢できなかったらしい。……一般の女性が男性の見世物にされても平気な顔をしていたくせにね?











 治療は全て済んでいるし、簡単な事情も分かったのでもうここに用はない。


 私たちは先に宿へ戻ることにする。


 でも、その前に。


 私はインベントリから大量の生キャラメルが入ったバスケットを取り出して、サブマスターと衛兵部隊長さんに渡した。


「これは……?」


「落ち着いたらみんなで食べてね? 私からお裾分け」


「お裾分けって、何のだい?」


「私はこの騒ぎでしっかりと稼がせてもらったからね。でも冒険者ギルドのみんなはボランティアなんでしょ? 心優しいみんなに気持ちだけのお裾分け」


「では、私たちのこれは?」


「衛兵さん達はこれからの後処理が大変でしょ? だから疲れを取るための甘いものの差し入れ。わかっているだろうけど賄賂じゃないわよ? きっちりと後始末を付けて欲しいとは思ってるけど!」


「……感謝していただこう」


「うん。がんばって!」


 この状況で私1人が儲かって、心苦しかったからほんの少しのお裾分けをしておく。


「あと、これは他の被害者さんたちに」


 食べ物で嫌な思いをした記憶だけを残して欲しくないからね。 ここにいる加害者や傍観者以外の人の分も預けておく。多めに渡しておいたから、ここにいない人たちのお見舞いの分も十分にあるだろう。


 2人が快く預かってくれたので、安心して私たちは宿に戻った。






 後日、今回のことがきっかけでちょっとした騒動に巻き込まれるとは、この時の私は考えても見なかったんだ。


 疲れた体を癒す為に、こんどこそ、宿でゆっくりと過ごしていたからね。


ありがとうございました!

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