信頼と心配が嬉しいから、寝る! つもりだったのに…… 10
今回の登録申請は、ここ、ラリマーでの申請となった。
一番初めに<折り鶴>を見て申請を勧めてくれたのはラファエルさんなのでジャスパーが担当すると思っていたんだけど、ジャスパーからわざわざ工芸品部門の職員を呼ぶには時間がかかり過ぎること、モレーノお父さまから❝アリス(わたし)が滞在先の商業ギルドで肩身の狭い思いをしないように配慮してやって欲しい❞と言われたそうなラファエルさんの配慮で、急遽<ジャスパー>と<ラリマー>の両ギルドマスターによる<水晶会談>が行られたらしい。
……高額な経費の掛かる会談だね。
その結果。登録はラリマーで行うが、情報の公開日は両ギルドですり合わせを行い、同日に公開するようだ。そうすれば、どちらのギルドがより儲かるかはその時の運ギルドの頑張り次第ということで平等だという考えになるらしい。
「専用の紙とかじゃなくてただの折り方だけなんだけど、そんなに儲かるかなぁ……」
という私の呟きは、
「商業ギルドラリマー支部・工芸品部門を代表してカルミネが断言します! これはこの街の…、いや、この国の新たな財産になります。もしもこれが世に広まらなかったら、それは偏に我々商業ギルドが無能者の集団である証。そして、我らは無能ではないと自負しております!!」
彼の折った鶴を掲げるように持った、商業ギルド幹部さんの自信に満ちた断言で否定された。そして、
「だったら、モレーノお父さまに贈ったら喜んでもらえるかな?」
「ええ、ええ! とてもとても喜ばれると自信を持って断言します! <組紐>と一緒にお送りしましょう!」
冗談半分での質問は、ラファエルさんの断言と共に配送用のボックスを渡されることで冗談ではなくなってしまった。まあ、鶴の一羽くらいなら軽い小さなものだし、これくらいならナイトバードの負担にもならないだろうと判断して追加を入れさせてもらうことにする。
組紐と一緒に入れる為に一回り大きな箱を折り直していると、
「それは折り方を教わっていません! これも登録でよろしいですね!?」
カルミネさんの確認に返事をする前に、設計図担当職員さんの手が動き始めていた。まあ、私は必要な物を作っているだけで、それが私たちのお小遣いに繋がるんだからありがたい話だよね。
とりあえず頷きで了承と伝えていると、
(僕のもモレーノにあげるのにゃ!)
(ぼくのもいれていいよ~)
ハクとライムが自分たちの<兜>と<風船>を持って来た。続いて<風車>や<手裏剣>、<連鶴>各種を持って来て、最後にはあれだけ気に入って遊んでいた<だまし船>や<ぴょんぴょん蛙>まで。
(本当にいいの?)
と聞くと、
(モレーノはアリスの特別だからいいのにゃ! これならこの間のお小遣いのお礼にもなるのにゃ♪)
(ぼくたちはいつもアリスといっしょだからいいの。でもまたつくってくれる?)
2匹は胸を張ってご機嫌に笑う。
……始めの一瞬だけ、もしかして賄賂のつもりかな?と思った私は、心が汚れていたと反省します。うちの仔たちは、私よりもずっと気の利く良い仔たちでした。
ちなみに。
どうして工芸品部門の設計図担当さんではなく工作部門の設計図担当さんを同行したのかなんだけど、それは工芸品部門には設計図担当職員さんがいないからだった。
<工芸品>の作り方を登録する職人さんはそうそういないそうだ。工芸品のレシピは門外不出の扱いで代々一門に大切に受け継がれるものらしい。
だからラファエルさんから<折り紙>の登録の話を聞いたカルミネさんは初め、本当に登録するつもりはあるのか? またそれだけの価値のあるものなのかと疑いを持っていたそうだ。
<折り紙>は日本では普通に折り紙教本などが出版されていたくらいだから、私がここで登録するのに何の問題もない。
いつか、子供たちが手軽に遊べるようになると良いなぁ♪
本日もありがとうございました!
投稿を予約するのを忘れていました……。すみません。




