信頼と心配が嬉しいから、寝る! つもりだったのに……5
<折り紙>は紙を折って何かの形にする、日本の子供の遊び。
器用、不器用の差はあるだろうけど、日本で育ったなら、大抵の人は何かを作ることができるだろう。
なので、私にはラファエルさんの視線に籠る熱量は理解しがたいものがある。だから、組紐入りの折り紙の小箱を入れた箱を施錠してからラファエルさんに返し、何も気が付かないフリをして紅茶のおかわり注ごうとした、んだけど……、
(アリスは器用にゃ! 他にも何か作れるのかにゃ!?)
(アリスすごい! ぼくもういっかいみたいな!)
可愛い従魔たちの無邪気な反応は、可愛い流威が幼い頃に見せたものと同じで……。
ついつい、調子に乗ってしまったんだ。
小さく整えた紙で折ったのは<兜>。これはハクの小さな頭にかぶせてあげた。 ん、勇ましくてかっこかわいいね♪ 鏡を出してあげると、楽しそうに立ったり座ったりとポーズを取って遊んでいる。
そしてライムに似た色の紙で折ったのは<風船>。優しく息を吹き込めば、小さなライムの出来上がり! どんな反応をするかな?と思って見ていたら、嬉しそうにころころ転がし始めた。
その隙に織ってみたのは<だまし船>。「コレな~んだ?」と聞けば2匹よりも素早い反応で「船!」とラファエルさんの答え。……ちょっとだけ忘れていたことをごまかすように帆の上を押さえてもらい、
「この船の進行方向はどっち?」
「この帆の向きだと右ですね」
「じゃあ、そのまま帆を押さえたまま目を閉じて? はい、開けて♪」
「えええええええっ!? 向きが変わった!?」
素早く向きを変えてやると、思った以上に素直な反応が帰って来て嬉しくなった。
それで……、また調子に乗っちゃったんだよね……。
「他は? 他には?」と3人(2匹と1人)強請られるままに、定番の<風車>や<手裏剣>の後はちょっと迷って<蛙>。この世界にもいるかな? と思いながら折った蛙のお尻を軽く押さえてから離してやると思った通りに❝ぴょこん❞と跳ねて、3人を驚かせた。ラファエルさんが「この形は、ベールゼブフォ…? 凶悪さも欠片もないが」と呟いていたので、どうやら蛙型の魔物がいるようだ。
ちなみに……。<風車>を手裏剣だと思って流威に教えてあげて、後日、友達から本当の<手裏剣>の織り方を教えてもらって慌てたことを覚えている。急いで訂正したんだけど、それからもしばらくは流威の中では<風車>=手裏剣だったことは……。うん、忘れよう!
3人がそれぞれ遊んでいるのを見ている内になんだか楽しくなった私は、紙を裏返して設計図を作り、1枚の紙に切り込みを入れて、何枚かの正方形を作り出した。
1枚1枚の向きを考えながら、ゆっくりと鳥の形を作って……、
(とりだーっ! たくさんのとり!)
(うん。これは、鶴っていう鳥さんだよ)
出来上がったのは鶴が連なっている<連鶴>。鶴の数は少ないけど、ハクとライムには十分に楽しんでもらえているようだ。
2匹はキラキラとした目でテーブルの上に置いた連鶴の周りをくるくると回っている。……そして、
「この手は何と素晴らしい! この嫋やかな手は、一体どれほどのものを生み出し続けるのか……!」
爛々と輝く目をしながら私の手を握りしめているのは商業ギルドの職員。
うん、この先の展開はわかる気がするよ。
でもね? 折り紙のレシピなんて、私には作れないからね!
ありがとうございました!




