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何度目かのスライム絶滅危機? 2

 今朝<夜のルーチェ>のみんなに飲んでもらった生卵は1人5個。


 私は1個ずつで良いと思っていたんだけどね? 彼らの方からの提案で5個ずつに増えた。なんでも❝偶然、たまたま中らなかっただけ❞と言わせない為らしい。


 被験者の彼らからの提案だから遠慮なく受けさせてもらったけど、ぐいぐいと笑顔で生卵を飲み込む姿は……、ちょっとだけ怖かったかも、です。彼らには内緒だけど!


 生卵で食中毒を起こす可能性があるのは大体が48時間と言われている。一説によると72時間とも言われているので、私は念のために72時間の方を採用することにした。今日から3日間、森での野営を延長ってことだね。


 その1日目を❝焼き芋作り❞に費やし、2日目と3日目は彼らには今まで通り狩りや採取をしてもらうことにした。私は彼らに万が一のことがあった時の為に、この場所を離れずに保存食づくりだ。


 で、2日目の夕方、彼らから預かる獲物に異変が生じていた。


 今まではほとんど入っていなかった<スライム>が多く混ざっていたのだ。


 彼らは今までライムに気を遣ってスライムを狩ってこなかった。ライムが同行している今回❝ライムの同族を狩る❞ことで、嫌われてしまう危険性を避けたかららしい。


 だから、昨日私がスライム素材を使って保存食作りをしている姿を見て驚いたそうだ。そしてライムがそのことを何とも思っていないことを確認して、私に交渉を持ちかけてきた。


「スライムをいっぱい狩ってくるから、アリスさんの作った芋の保存食を少し分けてもらいたい」


 とのことだ。


 私にとってスライムは捨てる部位のない、お気に入り素材。それを狩ってすぐに譲ってくれるという提案を断ることはない。スライム皮でパックした状態で譲ることを約束したら、本当にたくさん狩って来てくれたんだ。


 もちろん【複製】でも増やすつもりだけどね。ストックが大いに越したことはない。


 ハクとライムがご機嫌で愛想を振っているから、きっと明日も大量に持って帰って来てくれるだろう。















 森での生活中に彼らが狩って私に預けた魔物のリストと、彼らが狩って来てくれたスライムの魔石だけをリーダーさんに手渡す。もちろん、干し芋を始めとした、街に着くまでの間の携帯食も一緒に。


 卵の生食で起こる食中毒の発症期間である72時間を無事に過ぎ、一旦お別れの時間になったからだ。


 後は冒険者ギルドで待ち合わせをして、今回のレポートを受け取るだけ。生卵の安全性を検証できて晴れやかな気分で彼らを見送っていると、スレイがすす…っと顔を寄せてきて、


「主さま? わたくし森の中心で狩りをしとうございますわ」


 と希望を口にした。


「思い切り体を動かしたいと思いますの」


 とのことだったので、わざわざ中心部にまで行かなくてももう少しだけ奥に入った所で魔物狩りをしたらどうかと提案しても、


「この付近にいる魔物では物足りませんの!」


 とのことだったので、泣く泣くその提案を受け入れた。


 ……森の中心には蜘蛛の魔物<アラクネー>が生息しているから、あんまり近寄りたくなかったんだけどね。せっかくの森の中なのに、ずっと私のそばで待機してくれていたスレイに運動をさせてあげたかった気持ちと、


「だったら極桃オークをいっぱい狩ってストックをたくさん増やしておくのにゃ~♪ 今夜は極桃オークのステーキなのにゃ!」


 ハクの嬉しそうなリクエストの声には勝てなかったんだ。


 残念なことに極桃オークは【複製】できないから、毎日でもいっぱい食べたい!っていうハクの希望は叶えてあげられなかったからね。少しでもストックを増やしておきたいのは、私の希望でもあるし。


 でもね? それでも、


「いやーっ! こっちにくるよーっ!! ……スレイ、ごめんっ! 【ウインドカッター】!!」


「アリスのバカーっ! その個体はまだ糸を吐き出しきっていないのにゃ!」


 やっぱり苦手なものは苦手でね……? あの毛むくじゃらの蜘蛛の足を見ていると、どうしても恐怖に駆られ……。その恐怖から逃げる為にアラクネーの息の根を止める攻撃を仕掛けてしまうんだ。素材の採取の途中でも、さ。


 ニールがいた時はスレイと連携を取って、素材である糸を上手に吐き出させながらアラクネーを私に近づけないように狩ってくれていたんだけど、ニールが不在の今はそれは難しくて……。


 私が逃げ腰なのを見て取ったアラクネーはスレイから逃げる為に私に向かってくるんだよ。


 で、ついつい止めを刺してしまって、ハクのお叱りを受ける羽目に……。


 ハクの怒りを鎮める為に、


「ごめんっば!! 今夜は極桃オークのステーキだけじゃなく、串焼きとハンバーグも作るから許してっ!」

「角煮と角煮で作る干し肉も作るにゃ?」

「わかった。作るっ!」

「……仕方がないから許してあげるのにゃ」


 今夜は極桃オークのフルコースを作ると約束したのは仕方がないことだよね?


 ……ハクの口元がニヤリと笑ったように見えたのは、きっと私の被害妄想だよねぇ?


ありがとうございました!


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― 新着の感想 ―
[一言] 商業ギルドのあの人達は、先行した連中の持ち帰った真空パックモドキを見て、アリスが早く帰って来てくれないかとソワソワしている事でしょう。
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