所変われば 3
Cランクに昇格したばかりのパーティー<夜のルーチェ>。
ランクにふさわしい依頼は他にいっぱいあるのに、GランクやFランクが受けてくれたらいいな!と思って出した<生卵を食べてもお腹を壊さないことを証明するための被験者募集>の依頼をどうして受けてくれるのか。
それは、彼らがとっても❝金欠❞だから。だった。
スフェーンの森で私たちと別れた後、彼らはCランク昇格試験に向けて自らを鍛え直す為に魔物の狩りに精を出し、……出し過ぎて想定よりも装備品が傷んでしまったらしい。
戦闘を繰り返していたら装備品が痛むのは当然のことで、メンテナンスをしたり新調したりの費用が結構掛かるようだ。(女神の創ってくれた装備は傷まないから私とは無縁の話なんだけど、装備の管理って大変みたいだね)
彼らは傷んだ装備品をメンテナンスしてからCランク昇格試験を受けるつもりだったんだけど、間の悪いことに、いつもお願いしている鍛冶屋さんの仕事が立て込んでいて、試験当日までにメンテナンスをすることは無理だと言われてしまった。
他所でメンテナンスをすることも考えたが、評判のいい鍛冶屋さんはどこもそれなりに混んでいて日程的に難しい。
だったら、今回の試験は諦めて次回に試験に備えるという手もあるけど……、彼らはそれも嫌だった。
「気力は最高に充実していたし体力にも問題なかった。❝今受けたら確実に受かる!❞っていう、妙な自信があったんだよなぁ」
リーダーさんが恥ずかしそうに呟くけど、実際に受かっているんだから胸を張ったらいいと思う。
ただ、その試験(盗賊の討伐&指定された魔物の討伐の2本立て)のせいで、傷んでいた装備が余計に傷んだり破損してしまったことは痛手だった。整備や買い替えの為の資金が足りなくなってしまったそうだ。
「仕方がないから、近場でチマチマと狩りをしたり街の中の依頼で食いつないでいこうと相談していた所にあんたの依頼が挙がったんだ。
7日間も宿代・食費がタダになる上に、1日1人2万メレの儲けなんておいしい依頼、そりゃあ、飛び付くに決まってる!」
ということだった。それがどうして今一緒に森の中にいるのか、という話なんだけど。
私たちの話を聞いていたディアーナからの提案のお陰だ。
私は元々依頼を探しにギルドに来ていた。<夜のルーチェ>はお金が欲しい。この検証実験は、場所を選ばない(卵料理&生卵を食べるだけの簡単なお仕事です♪)
だったら、一緒に森に行って稼ぎながら実験をしたらどうか?と提案してくれたんだ。彼らの実力なら、森の入り口付近ならそれほどの脅威にはならないだろうからと。
ディアーナを交えて調整した結果、
・場所はスフェーン
・7日の間、私が出す卵料理(と普通の料理)以外の食物を体内に入れないこと(もしも卵料理のせいで体調を崩した時には、速やかに【治癒魔法】を用いて治療する。当然無料)
・7日の間の食事の詳細と体調を嘘偽りなく詳しく記録として残すこと
・彼らの装備で現在壊れている物に関しては、ギルドから貸与(費用は後払い。破損具合によって高額になる可能性有り)
・森の中でキャンプになるのだから、宿代は不要
・依頼料の1日1人2万メレを不要とする代わりに、<夜のルーチェ>が狩った獲物を私のアイテムボックス(インベントリ)で預かりギルドまで持って帰る&私が作る<初級ポーション>を1人1日2個進呈
・1日1度の【クリーン】魔法無料
が今回の依頼内容になった。
ギルドの仲介手数料は5万メレ。これを今回は私と彼らで頭割りすることに。
結構高額な手数料に感じたんだけどね? 彼らは「俺たちが稼いでくることをギルド(ディアーナ)が信じてくれている!」と大喜びで支払っていた。 ……彼らに不満がないなら別にいいんだけど。
話がまとまるなり彼らは意気揚々と森へ出発して行き、足の速いスレイに乗せて行ってもらう私は後から出発し、現地集合することになった。
その間にディアーナに別室に呼ばれ、<【クリーン】魔法による生卵の安全性>についての情報登録用の申請書の記入をし、ギルドにいたFランク冒険者に商業ギルドまでお使いに行ってもらい、ミネルヴァ家に行ってしばらくは忙しくて来られないことを伝え(森に行くことは伝えていない)、その間にしてもらいたいお仕事のお願いをすませ、週に1回の衛兵の詰め所の掃除のアルバイトを継続したいと言われて了承し、大喜びの子供たちに笑顔で送りだされた。
……畑で収穫した野菜を自分たちで食べられると思って喜んでいたのかな?と気がついたのは、宿に事情を説明しに戻った所、飛び込んできた商業ギルドの職員さんに買い付けた野菜をどうするかと聞かれたとき。
ギルドで買い取りたいという要望だったので、今日から7日間分だけを買い取ってもらい、8日目以降の分はギルドで預かっていてもらうことにしたから子供たちは自由に食べられないんだけどね?
恨み言は帰って来てから聞くことにするよ……。
ということで、森で合流した私たちは卵料理をメインにごはんにしているんだけど。
いきなりの生卵ではみんなが困惑するだろうと、チーズ入りの厚焼き玉子焼きからスタートしたんだ。
ふんわりと焼いた玉子焼きの縁からはみ出たチーズが軽く焦げて良い香りをあたりに漂わせると、みんなの顔が期待に輝き、玉子焼きの玉子をすこし半熟にしていることに気が回らないようだ。
サンドイッチにするとあっという間になくなってしまい、もちろん誰も体調を崩すことなく、ご機嫌にチーズとハムの厚焼き玉子のおいしさを反芻している。
この調子だと、卵かけご飯を出す日はすぐに来そうかな?
所変わって食物への認識は違っていても、❝おいしい❞を感じる味覚は変わらないようだ♪
ありがとうございました!
花丸インコさま。
チーズin厚焼き玉子を冒険者たちが喜んでいます。ありがとうございました!




