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それはそれ。これはこれ。 けじめは大事でしょ?

「……本当に、これ1着でお城が建つの?」


「左様でございますわ、お嬢さま! それだけの価値のあるとても素晴らしいレースでございます! 本来なら国宝として扱われるべきお品でございますわ!」


 以前にちらっと聞いて驚いた❝レース❞の価値。 仕立てあがった服を受け取りに来たついでに確認してみたら、対応してくれた副店主さん(店主さんの奥さん)が興奮でキラキラと目を輝かせて教えてくれた。


 ネフ村でマルゴさん達から受けた❝貴族のお嬢さま疑惑❞の原因がわかって納得すると同時に、今まで強盗などに襲われることもなくよく無事でいられたな、と我が身の幸運に感謝した。


 ……別の意味では襲われたり色々と危険な目にもあったけどね。それはそれとして置いておく。


 ルシアンさんからもらったマントがとっても役に立ってくれていたってことだよね。今度会ったら改めてお礼を言おうと心に誓っていると、


「今のお召し物ほどではございませんが、こちらもお嬢さまにお似合いになると自信を持っております」


 服店主さんは満面の笑顔を浮かべてトルソーに掛けられていた布を取り払う。


「きゃあ! 素敵♪ 本当にアリスに似合いそう!! 早く着て見せて?」

「本当に素敵! デザイン画よりももっと素敵な仕上がりになってるわ! ディアーナの雰囲気にぴったり♪」


 店主さんが私たちの好みを聞きながら描いてくれたデザイン画。その出来上がりは想像以上に華やかな仕上がりになっていた。その上、着てみると意外なほどに動きやすい。


(悪くないのにゃ! 街の中ならその服を着ていても良いのにゃ♪)

(うん。ふたりともにあってる~!)


 その上ハクとライムのお墨付きがもらえたら、ディアーナと2人、ご機嫌に笑うしかないよね!


 店主さんたちからのご厚意(以前来た時の店員たちの非礼の詫びと着物ドレスを見せてあげたことへのお礼)で作ってもらった服もだけど、それぞれが気に入って作ってもらった服もとても素敵な仕上がりになっていて、気持ちよく支払いを済ませることができた。


 ……ギルマス(クマさん)たちから預かっていたお財布はすっかり軽くなっちゃったけどね。彼らは、ディアーナと2人で着ている姿を見せに行ったら、青くなりながら鼻の下を伸ばすっていう器用な芸当を見せてくれたよ。


 ディアーナも新しい服をサブマスに褒められて嬉しそうだし、私もハクとライムに褒められて満足だし、今回の彼らからの❝お詫び❞はこれで完了にする。


 今まで付き合ってくれたディアーナにお礼を言って、ディアーナを快く休ませてくれた(私に付き合わせてくれた)サブマスや仲間の受付嬢たちに感謝を込めて、ささやかなお礼を渡すと、彼女たちはとっても嬉しそうに私とディアーナにお礼を言ってくれた。 以前に心の中で誓った、サブマスへのビタミンの差し入れを兼ねて果物の詰め合わせにしたんだけど、みんなにとても喜んでもらえた♪


 ディアーナは自分がお礼を言われることではないとびっくりしていたけどね。みんなはディアーナが私に付き合ってくれていたことをギルドの仕事(お詫びの一環)だときちんと認識しているから、私からお礼=ディアーナが頑張った結果として受け止めてくれたんだ。 


 1週間もギルドを離れていたディアーナの立場が悪くなることがなくて、本当に良かったよ。


 今回の服以外に、ギルマスたちのお財布から買った物を取り出しながら、改めてギルマスと3人の冒険者たちにお礼を言う。お詫びとして預かったお金だけど、やっぱりお礼は言うべきでしょ?


 なのに、どうして4人ともそんなに意外そうな顔をしてるのかな? 私の方がびっくりだよ?


 なんとなく釈然としない思いをしながらお財布代わりの革袋をギルマスに返したら……。


 ギルマスはお腹を抱えて大笑い、3人の冒険者たちは頭を抱えて苦笑い。 ……ああ、うん。遠慮なく使わせてもらったからね。すっかり軽くなっちゃったよね。 


 4人から預かったお金を散財したことに反省も後悔もない私は、私にできる最上の笑顔でもう一度お礼を言った。 ……今度は赤くなってる目を見開いてる? 良くわからないけど、ころころと変わる、なかなか器用な顔色だね。


 どうしたらいいのか困っていると、苦笑を滲ませたサブマスが出口まで見送ってくれた。


 今度は、しっかり<冒険者>として来るつもりだから、これからもよろしくね!


ありがとうございました!

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