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お届け物に来ただけなんですが…… 3

 一瞬にしてお通夜のように静かになった衛兵詰め所の食堂で、


「にゃにゃ~ん♪」

「ぷきゅぷきゅ~♪」


 ご機嫌にじゃれ合う2匹の従魔の鳴き声だけが響いていた。


 まさか、隊長さんの言った❝今朝の食費❞を衛兵さんたち全員が真に受けるとは思ってもみなかったな。


「俺たちが、バカな頼みをお嬢さんにしたせいで……。明日からは飯抜きなのか……?」


 なんて、暗~い表情で呟かれたら、辛気臭くってしょうがない!


 とりあえず、ミネルヴァ家の畑作りを手伝ってもらったお礼に収穫した野菜を持って来たんだけど、すでに朝ごはんの材料が揃っていたし、朝ごはん当番の方たちがとても悲愴な顔をしていたので手伝っただけであることを伝え、【ヒール】も【クリーン】も今回に限っては何の対価も必要ない事を説明する。


 これはミネルヴァ家がお世話になっているお礼だとも。どうして私がミネルヴァ家のお礼をするのかと言う疑問に対しては彼ら全員と雇用契約を結んでいることを伝え、雇い主としてご挨拶に来たのだと言うと、


「アイツらの為に仕事を? そっか、お嬢さんが雇い主なら、アイツらが腹を空かせて泣くことはもうなさそうだな……」


 自分の事のように嬉しそうに笑ってくれた。


 ……私の何をそんなに評価してくれているのかはわからないけどね。うん、大丈夫! 食材だけは山のようにインベントリ内にストックしてるから、彼らが餓えることはないよ。


 隊長さんの呟きに私が微笑みながら頷くと、じっと私のことを見ていた衛兵さんたちは元気を取り戻して嬉しそうに笑い合う。


 自分たちのひと月分の食費がなくなることと同列に子供たちの餓えを心配してくれる衛兵さんたちは、本当に良い人たちばかりだと改めて感心する。  


 ミネルヴァさん家はご近所さんに恵まれているね!


 ほんわかと胸が温かくなるの心地よく思いながら昨日収穫した野菜をお礼第二弾として渡し、詰め所を後にした。


 生のままの野菜を味見した隊長さんが、これからはミネルヴァ家に野菜泥棒が近づかないように巡回を増やしてくれると言ってくれたのは想定外だったけど、とてもありがたかった。


 おいしい野菜が評判になったら、冒険者を雇って見張ってもらおうと思っていたからね。その分の経費が浮いた形だ。 


 お礼として、たまに収穫した野菜を持ってくることは賄賂にならないよね……?









 ミネルヴァ家に着くと、庭で野菜の世話をしていた子供たちが駆け寄って来た。


 昨日収穫した野菜を自分たちが食べられなかったことを残念がり、今夜のごはんに使いたいと訴えられるけど、元々そういう契約だと説明する。


 畑を作る時にちゃんと説明してたんだけどね? ここで作る野菜は自分たちが食べるものではなく、売って収入の足しにするんだって。


 ……実は、昨日収穫した分はミネルヴァ家の子供たちが種を撒き、それまで世話をし続けていた野菜だから例外にするつもりだったんだ。


 でも、収穫した野菜の味を確かめたミネルヴァさんが私に判断を委ねた理由を考えて、買い取りを決めた。


 きっと、まだ贅沢を覚えさせたくないのだろうと判断したんだ。


 だから、


「この畑で取れるおいしい野菜が食べたいのなら、しっかりと稼いで適正価格で私から買い取ってね! それまではこの野菜は出荷用。売り物だから、みんな、きちんとお世話してね!」


 今夜の夕食への使用は却下する。 


 収穫した野菜は昨日同様、商業ギルドの職員さんに買い取りに来てもらうことを伝えてから、ミネルヴァ家を後にした。 ……商業ギルドの職員さんに依頼を出す為に、急いでギルドに向かったんだ。


 本当は、昨日の買い取り価格をミネルヴァさんに報告しにきたはずなんだけどね。


 また後で出直すことにしよう。



ありがとうございました!

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