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親孝行? いえいえ、ただのワガママです 2

 現在<組紐>を作れるのは、ミネルヴァ家の家族だけ。だったらラリマー支部で<レシピ登録>すればいいものを、私はモレーノお父さまの領地であるジャスパーでの登録にこだわった。


 それは今後、組紐作りをお父さまが治める領地にある孤児院の仕事にしようと思っているからだ。


 レシピを<占有>できる期間内に<組紐>を定着させて、占有期間が終わった後も❝本家❞❝本元❞としてのブランド力で孤児院の経営を維持できるようにと考えたからなんだけど、ラリマーの商業ギルドにとっては、利益につながらないただ面倒な手間が増えただけ。


 ミネルヴァ家で生産される組紐は雇用主である私のものだから、利益は私が<商人登録>をしたジャスパーの商業ギルドに入ってしまう。


 これでは、ラリマーの商業ギルドに対して申し訳ない気がするので、


「ねえ、ワイン醸造で使う葡萄の種って、どうしてるの?」


「種、ですか? 捨てられていますが……」


「だったら油を作ってみない?」


<グレープシードオイル>の作り方をレシピ登録することにした。もちろんラリマー支部での<公開登録>で。


 作り方は簡単。ワイン醸造で大量に残った種を圧縮して絞るだけ。 すでにひまわりや菜の花の種から絞ったオイルが出回っているので説明は簡単だった。……ひまわりや菜の花の種はすでにオイルになっているのに、どうして葡萄の種のオイルがないのかは不思議だったけどね?


 ワインを作らせているのが貴族たちだと思い出してなんとなく納得する。気位の高い貴族たちが一度❝廃棄物❞だと認識してしまうと、なかなか他の用法には辿り着かないよね。


 でも、商売人さんたちは元が❝廃棄物❞であることなんか気にしない。それどころか、


「いままで捨てるだけだった物が商品に!! コストを抑えられるぞ! さっそくご領主さまに仕入れの相談を……」


 とっても嬉しそうに製造計画を立て始めている。


「ネストレ殿! レシピが登録されたら1番に我がジャスパー支部にご連絡をお願したい! それまでに種を集められるだけ集めておかなくては。モレーノさまならすぐに許可をくださるだろうから……。

 アリスさんのレシピで領地を富ませることをどれほどお喜びになることか…。ああ、早く話して差し上げたい!」


 ラファエルさんもとても乗り気で、モレーノお父さまへの詳しい説明などを引き受けてくれた。


 どうやら両ギルドでは、専用の部門を作ってギルド直営の工場を作るようだ。


 ネストレさんだけでなく、ラファエルさんにも十分なお礼になったらしいし、


(アリスは偉いのにゃ! これでまた、レシピ使用料がにゃはははははは!なのにゃ♪)


 また私の口座にお金が増えるとハクがご機嫌に笑っているので、提案した甲斐があった。


 ……お礼のつもりで話したのに、結果私たちの利益につながっていることは、……もう、笑っておくしかないよね!












「ほほう。<サナダ紐>とはそんなに頑丈なのですか!?」


「うん。❝織物❞だから、織り機がないと織れないんだけどね。すっごく丈夫で伸びにくいから、荷物を縛ったり、重い物を吊るしたりするのに便利なんだ。しかも繊細な柄が織れるから、誰か研究してくれないかなぁ」


 話のついでに<真田紐>を紹介しておいた。以前に見た某時代劇の中で、俳優さんがとっても無邪気な笑顔で体重をかけてぶら下がっていたシーンが気になって調べたことがあったんだよね。


 まあ、簡単にはできないことがわかって、制作は断念したんだけど。織り機ってかさばる上に高いんだもん。自宅で❝ちょっと作ってみる❞には不向きな品だった。


 でも、あの繊細な折り柄がビジューで再現されるなら、是非再現して欲しい。きっと私が大量購入しちゃうから!


 ❝丈夫❞❝伸びない❞❝美しい❞❝私が欲しい!❞という熱意が伝わったのか、ラリマーとジャスパーの商業ギルドがそれぞれ<真田紐>の研究をすることになったのはまた別の話。


 当然権利は全て、開発に成功したギルドの物だ。 ぜひとも頑張ってもらいたい♪


ありがとうございました!

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