モレーノお父さまの甘やかし
この街に来るまでに稼いだお金とガバンたちから入金されていたお金。この街で怪我人の治療費として受け取った代金や、冒険者ギルドで稼いだお金などを合わせると私の所持金は1億5000万メレを超えていた。
でも、この街で高額な懐中時計や孤児院の家屋を買った結果、私の財布は随分と軽くなった上に、スレイとニールの為の馬具や2台の馬車、街でも指折りのお店で作ってもらっている服に、私の希望を取り入れたテントの代金などを考えると、私が使える所持金はあまり残っていない。
オズヴァルドを始め3人の上位ランク冒険者たちから預かっている彼らのお小遣いはまた別枠だからね。
だから今朝の冒険者ギルドでポーションと携帯食が結構な額で買ってもらえたことはとっても助かったんだけど、それでもこれからする買い物の代金を考えると少し不安なお財布事情だった。
今日はお試しの分だけ購入して売買しながら少しずつ資金を増やす形にするか、ギルドで借り入れをお願いするか……。と考えながら着いた商業ギルドだったんだけど。
ギルドに着くなり受付の女性に呼ばれ、
「先ほど入金がございましたよ。 アリスさまがお見えになったらすぐにお知らせするようにとのことでございましたので、確認をお願いいたします」
と言われてとっても驚いた。
どういうことかと急いで確認をすると、
「………お父さま?」
モレーノお父さまが3000万メレもの大金を送ってくれていたのだ。私が入金を確認すると同時に受付さんに渡されたメッセージ用紙にはたったの一言『お小遣いだよ』と。
今朝、私がこれからしたいことについて相談をした。その為に必要な根回しをお願いしたのは確かに私だ。でも、お金を出してもらおうなんて思っていなかったのに……。
これ以上の迷惑はかけられない。送り返そう!と思っていたら、
(もれーの、はりきったんだね~!)
(アリスの❝おねだり❞がよっぽど嬉しかったんだにゃ~。モレーノの領地も儲かる話なんだから、遠慮なく貰っておくのにゃ!)
従魔たちは楽しそうに笑い合い、
(受け取らないとモレーノが残念がるのにゃ!)
(もれーのにありがとうっていわないとね!)
(これも❝親孝行❞なのにゃ!)
お金を素直に受け取るのが❝親孝行❞だと言い切る。
この2匹に自信満々に言い切られてしまうと、本当にこれが❝親孝行❞なのかと思えてしまうから不思議だよね。
モレーノお父さまには別の形できちんとお礼をすることを心に誓い、このお金は素直に受け取らせてもらうことにした。
……絶対に! この件でお父さまに損はさせないよっ!
心の中で拳を握りしめながら、受付さんに全額の引き出しとラファエルさんに私が来たことを伝えてくれるようにお願いする。
笑顔で受付まで迎えに来てくれたラファエルさんに連れられて、応接に向かう私の背後で、
「3000万メレがお小遣い? あっさりと全額を出金しちゃうなんて、一体何者なの?」
受付さんがぽつりと呟いていたことには気がつかなかった。
聞こえていたら、❝ただの平民で、駆け出しの冒険者兼商人です❞って、自己紹介したのにね!
ありがとうございました!
今回は短くなってしまいましたが、次回は少し長めになりますのでどうぞご容赦を^^;
 




