商談 4
気持ちよく、契約締結!とはいかなかったせいか、パオロが出て行った途端にどっと疲れが襲って来た。
内心のモヤモヤを吐き出すように深いため息を吐くと、ハクとライムが同時に膝の上に飛び乗って来て、全身ですりすりと体をこすりつける。……労ってくれているようだ。その上で、
(疲れている時には甘いものが良いのにゃ!)
(あまいものでありすはげんきいっぱい!)
なんて心話を送られると、大人しく言うことを聞きたくなるよね。たとえ、2匹が食べたいだけだとしても^^
可愛い2匹のアドバイス通りにインベントリの中から甘いものを物色するけど、最近はゆっくりと料理している余裕がなかったので、目新しいものが特にない。
同じものばかりではなんとなく面白くないので、ちょっとだけアレンジすることで妥協することにする。
最近はフレーバーウォーターや紅茶ばかり飲んでいたから、たまにはコーヒーがいいかな? 買っている豆はカフェオレ用の酸味が少ない深入りの豆だから丁度いい。
濃い目に淹れたコーヒーを深めの器に入れて、バニラアイスの上から掛けるだけ。
私としてはコーヒーカップに入れたかったんだけど、うっかり買い忘れていたんだよね。でも、先日購入したばかりの食器セットとカトラリーセットの中から、今の気分に合う物を見つけたので良しとした。
興味深々なハクとライムが目を輝かせているので、いきなりの私の行動に目を丸くしながら見ていたラファエルさんとパオロの担当をしてくれていた職員さんを急いでテーブルに誘う。
嬉しそうにソファに腰を下ろしたラファエルさんが躊躇って立ったままの職員さんを強引に座らせてくれたので、急いでサーブしてから私もソファに深く腰を掛けた。
2人には今回のお礼を言わなくてはいけないとわかっているんだけど、どんどん溶けていくバニラアイスが私を待ってはくれない。まずは急いで疲れを癒そう!
「いただきま~す♪」
((いただきます)にゃ♪)
「「女神に感謝を!」」
それぞれのいただきますの挨拶を済ませたら、スプーンを手におやつに襲い掛かる。
うん、おいしい♪ 苦みと甘みが程よく絡み合って、一口ごとに疲れが解けていくようだ。ハクとライムも気に入ってくれたようで早速おかわりの催促があるし、
「……!!」
「(コクコクッ!)」
ラファエルさんと職員さん驚いた様な顔して目と目で会話をしたかと思ったら、アイスを飲む勢いで食べ勧めている。
彼らにお代わりを用意すると同時にネストレギルドマスターがやって来た。 パオロはとっくに帰ったのに私たちがなかなか部屋から出ないので、報告を受けて様子を見に来てくれたらしい。
入室するなりテーブルに気がつき、「あ~~っ!!」と悔しそうな声を出すので思わず笑ってしまう。
ネストレギルドマスターの分もすぐに準備できるから安心してね?
おいしいおやつと、満足そうな顔で笑い合っている従魔たちのお陰で私の気分も向上したので、買い置きのハニーチュロスも取り出して、楽しいおやつタイムを堪能することにした。
目を真ん丸にしながら何度も頷きながら食べているギルドマスターの隣で、ゆったりとおかわりを楽しんでいるラファエルさんと職員さんに改めて今回のお礼を告げると、2人は満面の笑顔で、
「「役得です! 何かお困りの際には是非我々にご相談を。お待ちしています!!」」
と返してくれた。
……困りごとが起こるのを待たれても困るよね? 困りごとなんて全力で遠慮したいよね!
でも、力強い笑顔で力になってくれると言ってくれているんだから、ありがたく受け取っておこう。私も笑顔でもう一度お礼を言うと、1杯目を食べ終わったギルドマスターからおかわりの催促と共に、今食べている食品の名前は何かと聞かれた。
おかわりを渡しながら<アフォガート>だと答えると、
「おおっ、確かに! バニラアイスがコーヒーの中で❝溺れて❞いるな! 急いで救出せねばっ」
何かを納得したように、またもや何度も頷きながらバニラアイスをスプーンで掬い取り、
「こちらの登録は……?」
期待を視線に乗せて問いかけてきた。
コーヒーは元々この世界にあったし、バニラアイスはすでに申請済みだ。登録に必要はないだろうと答えると、ギルドマスター・ラファエルさん・職員さんが、
「「「派生レシピとしてご登録を!!」」」
揃って大きな声をあげる。
今回のお買い物にはこちらのギルドや職員さんにもお世話になっているしなぁ。 派生レシピの登録がお礼になるなら安いものだ(利益は私にも入ってくるから、私も得をしてしまうけど)。
ラファエルさんには別の形でお礼を考えるとして、<アフォガート>のレシピ登録をラリマーで行うことにすると2人はとっても喜んでくれて、あっと言う間に書類を整えてくれた。
その間にラファエルさんと話していた、コーヒーカップとティーカップを買い忘れていたことをしっかりと聞き留めていて、私がサインをするために書類を受け取ると同時に、何種類ものコーヒーカップとティーカップが部屋に運ばれて来たことには驚きながらも笑ってしまった。 さすがは優秀な商人さん達だ。商機を逃がさない^^
もちろん、買わせてもらったよ? 品質的にもとても良い品だったし、気に入ったデザインもいくつかあったからね。っていうか、ほとんどが私の趣味に合う物だったことに笑いが止まらなかったんだけど!
一流の商人さんたちは、いつの間にか私の好み把握していたようです。 さすがだね!
気に入った物をそれぞれ10客ずつ買うと結構なお値段になってしまったので、ここはお値引き交渉だ。と思ったら、向こうからお値引き提案をしてくれる。
彼らの晩ごはんの為にいくつかのおかずを提供することで、安くしてくれるらしい。
ん? これって、どういうことなのかな?
なんだか騙された感が拭えない私の間の前で、彼ら(職員さんやラファエルさんまで!)はメニュー表よりも明らかに高いお金を取り出し、私に注文をする。
私が支払う金額は変わらないけど、彼らが払ってくれる料理の差額がお値引き分ってことらしい。……彼らの漢気ってことで、ありがたく受け取っておこう。
……一瞬とはいえ疑ってしまったことを深く反省してるよ?
お詫びに紅茶のアフォガートはいかがでしょうか? ああ、お腹が痛くなったらすぐに言ってね? もちろん無料で【ヒール】させていただきます。
事情を話しもせずに「サービス」と言って差し出すアフォガートは完全に自己満足だけどね。 彼らが不思議そうだけど嬉しそうに受け取ってくれたので、私の反省はここまで!
あ、これも派生レシピとして同時に登録? どうぞどうぞ!
ああ、アルコールも合うから色々と試してみてね? これも同時に登録? どうぞどうぞ!
派生レシピとして同時に登録すると使用料としては割安になるらしく、3人は少し申し訳なさそうな表情なんだけど、そんなこと全然気にしなくてOK!
ハクとライムが不服そう? 後でちゃんと説明しておくので、お気遣いなく……。
叱られる覚悟もちゃんとできてます。
ありがとうございました!
なんとな~くのスランプもどきからは脱出できたかも?です。
皆さまからいただいたコメントのお陰です。ありがとうございました。
あとは……、新しいお話を書いてみようかなぁ?と決めたからかも。
まだ設定くらいしか決まっていないんですけどね?(主人公の年齢・名前すらまだ決めてません)
もしもこちらでアップしたら、皆さん、読んでみようかな?って思ってくれますか?




