街歩き7日目 2
❝沸かしたお湯の入った鍋にそのまま入れるだけでおいしく食べられる携帯食❞は手軽で便利だけど、健康の為にしっかりと野菜を食べて欲しいと思っているので、
「お湯を沸かす時に一緒にこれを入れて作ると、よりおいしくなるよ!」
干し野菜ならぬドライ野菜も渡しておく。天日で乾燥させる手間を省いて【ドライ】の魔法を使って作った乾燥野菜だ。食べやすい大きさに切ってから【ドライ】しているので、そのまま使える便利な一品。乾燥スープの素と一緒に使うと具沢山なスープになるので多めに用意しておいた。
手軽に食べられてお腹も膨れる。暖も取れるし、洗い物は小さな鍋1つ!の野営にピッタリなチ〇ンラーメンならぬハーピーラーメンは、イザックだけではなくディアーナにもとても喜ばれた。夜勤業務の時に食べたいそうだ。……爆発的ヒット商品になる予感?
ほくほくと嬉しそうな顔でお会計をしてくれるイザックだけど、ハーピーラーメンの値段については物言いがついた。 1食150メレでは安すぎるそうで、1食500メレでのお買い上げ! 地球で500円出せば、5食入りパックの袋を買ってもお釣りがくるよね…?
高すぎると思ったんだけど、「これが150メレなら、俺はアリスの作ってくれた弁当が無くなり次第、1日2回の食事の度にこれを食べ続ける。村で出る食事よりも絶対コレの方が安くて美味い」と言われて負けた。
移動中は仕方がないけど、目的地の村や町では、現地の美味しいものを食べてクダサイ……。 いつもは頼もしいイザックの子供のような脅しには勝てなかったよ。
食料の販売が済んだら、私からのお餞別。
定番の<解毒薬>と<増血薬>。それと昨夜作った新作の<中級ポーション>だ。この<中級ポーション>は作る前からなんとなく思っていた通り、従来の品よりも高品質の❝中級以上上級未満❞のポーションになった。
私から効果を聞いたイザックはなぜか苦笑いをしながらディアーナに「頼むな」と声を掛けているけど、もう、私だってわかっているよ。
イザックを見送ったら、ちゃんと商業ギルドに行って登録するからご心配なく!!
………門が開くまでの待ち時間、鼻先を合わせたり頬を合わせたりしながらヒンヒンと小さく鳴きながら別れを惜しむスレイとニールを見て、やっぱりニールをお使いに出すことに罪悪感めいたものを感じてしまう。
でも、
(ハク兄上のご命令だ。主殿の為に働いて参るぞ!)
(ええ、主さまのことは安心してわたくしにお任せになって。あなたはイザックのお守りとお使いの買い物を済ませたら、早く帰っていらしてね?)
と張り切っている様子のニールを見て、少しだけ安心した。……生栗を買って来いって言っているのは私ではなくてハクなんだけどね? そのハクは、
(ニール。アリスの為に生栗を手に入れ、一刻も早く戻ってくるのが今回の仕事にゃ! ついでにイザックのこともキッチリと守るのにゃ!)
なんて言っているんだから、調子が良いよね~? 私の為に買って来てもらうんなら、私の気が向かない内は栗料理を作らなくてもいいんだよね?
私が少しだけ意地の悪い視線をハクに向けていると、ライムを腕に抱いているイザックと話をしていたマッシモがこちらに向かって歩いて来た。 少年やお母さんに幼女とおじいさんも一緒だ。
マッシモは初めて会った時とは随分と違う雰囲気で、あの日の自分の態度を謝ってくれた。荒んだ雰囲気はすっかりとなくなり、落ち着いた、誠実な印象の男性になっている。
……イザックが言っていた❝大らかでよく笑う男❞にはまだ戻れないようだけど、きっと時間が解決してくれるだろう。 マッシモにはこれから先の時間もあるし、支えてくれる人たちもたくさんいるんだから。
イザックとマッシモが❝お見舞金❞のことで2人揃ってお礼を言ってくれるので、私も素直にお礼の言葉を受け取っていると、大門がゆっくりと開き始めた。開門の時間になったらしい。
ニールとイザックの旅に、無事を祈りながら短い別れをすませる。
……戻ってきたら、おいしいごはんをいっぱい作ってあげるからね! 気を付けていってらっしゃい!!
ありがとうございました!
 




