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断罪、の後 3

 死者にお話ししたいことがある時は❝夜、窓辺に一輪の花を飾り、その花に話しかけると死者まで声が届く❞という言い伝えがあると、ラファエルさんに貰った花を花瓶に生けている私にギルマスが教えてくれた。


 ああ、だからラファエルさんはフランカへの❝報告用に❞と言ったのかと納得すると同時に、花の色は決まっていないのに白い花を選んでくれたのは私がフランカにお供えしていた花の色に合わせてくれたと聞いて、<商業ギルド職員(かれら)>の情報の早さと正確さと心遣いには驚くばかりだ。


 お礼と共に今朝は話の途中で出かけてしまったことを謝ると、ラファエルさんも今まで部屋を使っていたことを謝ってくれたけど、私が「このままこの部屋を使ってくれて大丈夫」と言って部屋を飛び出したんだから何の問題もない。


 私に何のわだかまりもないことを察したラファエルさんはにっこりと微笑むと、


「ある程度の話は詰めておきました。アリスさんに不服がなければ、この条件で契約をされませんか?」


 私が出て行ってからの話し合いの内容をまとめた報告書と契約書の草案を渡してくれる。


 この居心地の良い宿をより良くするために、私が今まで登録申請をしてきた情報やレシピのどれを使用するかや、ざっくりと販売を約束していただけのお水のことも細かく詰められている。


 今朝の試飲の結果、井戸水に【クリーン】を掛けたものを1ℓ800メレ。アイスボールが1㎏1,500メレで、森の水に【クリーン】を掛けたものも同じく1ℓ1,500メレで毎晩眠る前に厨房で販売すること。


 量はその日によって変わるが、手持ちに限りのある森の水だけは、1日10リットルの限定販売にすること。


 ……タダで汲んできたお水や魔力で作り放題のアイスボールが随分と高額な商品になっていて私としては戸惑うばかりなんだけど、話の途中でギルマスが呼んできてくれた総支配人さんと料理長さんは期待に満ちた目で私を見ている。この契約内容に何の不満も持っていないようだ。 


 食料品などは街の中だと値下がりするって聞いていたんだけどな。 まあ、高額で買ってもらえることに不満なんてあるわけがないんだから、私は素直に契約書にサインをするだけだ。ハクが(値上げ交渉はしないのかにゃ?)と唆すように言ってくるけど、本気じゃないのは表情でわかるからね。


 私がサインした契約書に総支配人さんがサインをして、契約は締結。販売は就寝前とのことだから、しばらくはゆっくりと過ごそうとソファで寛いでいると、ほくほくとした笑顔で部屋を出て行こうとしていた総支配人さんがついでのように、


「今夜からの宿代は半額にさせていただきましたので」


 さらっとおかしな発言をしてくれたので、慌てて椅子から立ち上がった。


 これは私にとっても商売なのだから宿泊代は今まで通りで構わないと伝えても、総支配人さんはにこにこ笑顔で、


「大切なお客さまにご迷惑をおかけするのですから、本来であれば無料にさせていただきたかったのです。ですがそれだとアリスさまが窮屈に思われるだろうと助言をいただきましたので、割引にさせていただきました。

 アリスさまがよろしければ無料にさせていただきたく……」


 なんて言い出すから、半額の割引を受け入れるしかなかった。


 丁寧にお礼を言うとそれ以上に丁寧にお礼を言われてしまい私は反応に困ってしまったのだけど、その分ハクとライムが愛想を振りまいてくれたから、まあ、いいかな。


 私からの感謝の気持ちは、今日だけは就寝前ではなく今からお水を販売することで表すことにした。


 これはラファエルさんからのアドバイス。今からなら夕食の時にお客さんに提供できるからね。総支配人さんも料理長さんもとても喜んでくれたので、とてもいい取引になりました♪














 夜を待ち、教わった通りに窓辺にラファエルさんからもらった白い花を飾って、これまでのことをフランカに報告した。



 フランカの希望どおり、フランカのお金を取り戻せるよ。


 フランカが旅立ってから時間がかかってしまったけど、みんなの頑張りでヤツらの罪も暴けたから、その分多くのお金を孤児院に渡してあげられるよ。


 フランカの身に起こったことが多くの冒険者たちの耳に入ってしまったけど、誰もフランカを責めたり蔑んだりしなかったから、この件で孤児院の子供たちがいじめられる心配はなさそうだよ。 みんな、フランカの行為の意味をきちんと理解していたよ。


 だから、安心してゆっくりと休んでいてね? 












 ゆっくりとお風呂で寛ぎ、私の作ったごはんをおいしそうに食べてくれるハクとライムの姿に癒され、その日の夜もいつも通りにベッドに入り……。


 夢を見た。


 フランカはビジューと一緒にお茶とケーキを楽しみながら、大きな水晶を覗き込んで楽しそうに笑ってた。


 ああ、もうビジューの所に辿りついたんだね。


 好きだって聞いた甘いものを食べながらビジューと話をしているフランカの笑顔はとっても楽しそうで、穏やかで……。


 朝、起きて、夢が正夢であることをビジューに祈った。


ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 多分だいじょぶだろうけど、正夢だと♪♪ いいなあ♪♪♪♪
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