街歩き4日目 5
総支配人さん達が退室して間もなく、お使いをお願いしていた少女が戻って来ているとの知らせを受けたので、ハクとライムを連れて裏口に向かう。
部屋まで来てもらったら楽だったんだけど、彼らに用がある時は裏口に回るのが暗黙のルールとなっているそうなので仕方がない。でも、そこに、
「アリス!」
ディアーナも一緒にいるとは思わなかったよ。
「ハクちゃんとライムちゃんに会いたくて来ちゃった! ここで待っていればアリスが来ると思って♪」
屈託なく笑うディアーナにこの数日間のお出かけの疲れは見えなかったので、一緒に買い物に行かないかと誘ったらあっさりと首を縦に振ってくれた。
最初の予定と変わらずに少女にお使いを頼んだことが無駄になっちゃったけど、少女はにこにこと機嫌よさげに笑っているので何の問題もないだろう。 約束通りの依頼料を支払い、おまけのクッキーを渡してあげると少女は大喜びをして、思い思いの所で待機している子供たちに声を掛けた。
ディアーナがその様子をじっと見ていたので私も一緒に見ていると、少女は子供たちにクッキーのお裾分けを始め、子供たちは嬉しそうに受け取ってすぐに口に入れたり、大事そうに両手で持ってどこかへ駆けて行ったりと様々な反応を見せている。その様子を満足そうに見守っていたディアーナに促されて、私たちはそのまま 出かけることにした。
私は先ほどの❝お裾分け❞がこの街特有のものなのかをディアーナに質問した。
私は今まで関わって来た人たちからそういった行為を止められていたから、なんだか腑に落ちなかったんだ。でも詳しい経緯を聞いたディアーナは、
「アリスと子供たちでは実力と活動方針が違うもの。その人たちの心配は当然よ」
❝立場の違い❞だとあっさり片付けた。
私は今のままで不自由を感じていないので他の人とパーティーを組む必要がない。というより、下手にパーティーを組むと不都合が生じてしまう。
でも子供たちはまだまだ実力がたりないので、助け合う仲間=パーティーを組んで活動しないと生活するのに十分な収入が得られない。だから、普段よりも多くの収入を手にしたらお裾分けなどをして、周りの冒険者(候補)たちと円滑な人間関係を築いておくことが大事になるし、❝自分はこれだけ稼げるだけの実力がある❞とアピールをしておく必要があるらしい。
そうして、めでたくGランクを卒業してFランクに上がる時までに、気が合い、協調性のあるメンバーを探すのが通例になっている、と。 子供たちの世界も、大人と変わらない複雑さで成り立っているようだ……。
ディアーナの案内で最初に着いたのは服屋さん。ビジュー特製のキモノはとっても素敵だけど、ずっと着た切り雀はさすがに寂しいからね。 街中用の着替えを買いに来たんだけど……。ディアーナの❝常識を学ぼう❞講座はすでにスタートしていたようだ。
「古着屋さん?」
「そう。新しい布で作った服を購入できるのは、お金に余裕のある人たちだけよ。CランクやBランクの冒険者でも、装備品以外はこういったお店を利用することが多いわ。
アリスには必要ないだろうけど、後学の為に、ね?」
まずは普通の平民が利用するお店、いわゆる❝古着屋❞さんに案内された。
「ここ、ほつれてるよ? 破けてるのもある……」
「でも、まだ着られるでしょ?」
「………」
私の中の常識では売り物にならないような服に値段が付いていることに、驚きを隠せなかった。
目を丸くする私をクスクス笑いながら次に案内してくれたのは、一見すると普通の服屋さん。でも、
「ここは使用済みの服を買い取って、布にしてから縫い直したものを扱っているの。ほら、上級の貴族たちって、一度着た服は2度と着ないって言うじゃない? 下級貴族の奥さまやお嬢さまも利用するお店なの」
やっぱり私の知っているお店とは一味違った。
「アリスの気に入るものがあるかしら?」
小首を傾げて私を見るディアーナに微笑みを返して店内に入っていくと、
「「いらっしゃいませ! 本日はどのようなものをお探しですか?」」
2人の女性が近寄って来た。 ……お客1人に店員が1人付くのがセオリーなのかな?
これにはディアーナが「彼女の普段使いの服を探しに来たの。まずは品揃えを見たいから、少し下がっていてください」と対応してくれた。
❝私の服❞と聞いた瞬間に2人の視線が私に固定されてちょっと怖かったから、すごく助かった。
でも、少し離れた所から、ず~っと、私……の服を見ている様子が……、うん。やっぱり怖いかも!
「こんな色も似合うわね」とか言いながら店員さんの視線を気にも留めないディアーナは、やっぱり大物なのかもしれないなぁ。
ありがとうございました!




