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街歩き1日目 4

「…………!」

「………………!?」


「こんなに近くにいるのに、何も聞こえないなんて……」


「便利でしょ? もちろん、こっちの声も向こうには聞こえないよ」


 突然現れて道を塞ぎ、自分が何者かを名乗りもせずに私の時間を割かせようとした傲慢な一組の男女。


 ❝嫌だ❞って意思表示をしても無駄な気がしたので、存在そのものに気が付かなかったことにする。


「……外部の音が聞こえない上に衝撃もないのに移動が可能な結界……。 アリスさん、これがどれほど凄いことなのか理解していますか?」


「あ~……、すっごい勢いでMPが減っているから、そんなに凄い物じゃないよ?」


 さすがにこれは規格外だろうと判断して、私の実力ではあまり長い時間は張れない結界なんだと説明しておく。


 もちろん、実際に張ってくれているのはハクで、


(こんなに小さな範囲で攻撃といえる攻撃も受けない状態なら、ひと月張り続けていても平気なのにゃ!)


 ということらしいけどね。


 男女に前を塞がれていたので、結界を張ってもらった後は来た道を戻って他のルートに変更した。


 地元民のディアーナが案内してくれるので、私の【マップ】は男女が後ろをついて来ていることの確認に使うだけ。振り向くと彼女たちが調子に乗るかもしれないからね。


 前を向いたまま相手の位置が確認できる【マップ】は本当に便利だ。……たまにディアーナが振り返ってるから、意味はないかもしれないけど。


 さっきはディアーナの名前も出ていたから知り合いなのかと尋ねたら、……この2人がフランカの元・パーティーメンバーだと、苦々しい表情で答える。


 思わず足を止めて振り返ったら、ディアーナが、


「今は相手にしないでください」


 私の手を引きながら、事情を説明してくれた。


 私の不在の間にギルドに出頭した2人は、❝ゴブリンが持ち去っていたフランカの遺品を回収した冒険者がいるので、当時の状況を詳しく知りたい❞という名目でギルドからの事情聴取を受けたらしい。


 ❝遺品を買い取る気があるのならギルドが仲介する❞という名目でパーティーの金の動きを探り、改めて❝当時の状況を確認する❞ことでフランカの手紙の内容との齟齬を確認し、❝ギルドに改めて事情を聞かれた❞ことで危機感を持った二人がどのように行動するかを監視しているようだ。


「監視?」


「はい。逃亡は許しません」


「今も?」


「もちろんです」


 ディアーナの言葉に驚いて【マップ】を確認してみると、2人組から付かず離れずの距離にいるポイントが2…、いや、3つ?


「3人、かな?」


「4人と聞いています」


 3人と思ったら4人もいるらしい。 最後の1人はどこだろう? 【マップ】で簡単に確認させてくれないあたり、優秀な監視人のようだ。


 これなら、あの2人がフランカのお金を返さないままで街を出る心配はなさそうだ。


 2人の動向がある程度把握できたら改めてギルドで尋問をするらしいので、私はギルドからの呼び出しがあるまでは2人に関わらない方が良いらしい。


 そういうことなら、これ以上彼女たちに意識を向ける必要はないね。


 私は一旦2人のことを忘れることにして、ディアーナが次にどこへ案内してくれるのかを期待しながら、リクエストリストに目を落とした。











「強度はそのままで形と大きさを変えるのか? できることはできるが、高くつくぞ?」


「まとめて発注したら安くなる?」


「そうだな……。 50本買ってくれるなら1本450メレでいい」


「500本なら?」


「…390メレだ」


「1,000本なら?」


「500本以上は何本でも一緒だぞ。390メレだ」


「じゃあ、500本。100本出来たらその都度<冒険者ギルド>のディアーナ宛に届けてくれる? 残りの半金は500本目を納品してくれた時に」


 ガラス製品の工房で、初級ポーション用のビンを発注する。 私の作る初級ポーションは従来の物より容量が少なくて済むので、ポーション用のビンを特注してみた。


(なぜ【複製】しないのにゃ!)


 というハクのお叱りは、


(するよ? でも、最初にまとめて買っている実績を作っておかないと、みんなに変に思われるでしょ?)


 簡単に説明するだけで霧散してくれた。


 下手に目立って【複製スキル】がバレたら困る。私は平穏な人生を送りたいからね!











 次は、


「紡績? それとも製糸かなぁ? 魔物が吐き出す糸状の物を❝糸❞にしてくれるところ」


「ヴェルとアラクネーの糸ですか? それなら<製糸>ですね。 こちらです」


 製糸工場に案内してもらう。


 ヴェルとアラクネーの糸を預けた職人長から、


「もつれや絡み、傷みのほとんどない極上の素材じゃ! これは腕が鳴るわい! 

 ……ところでお嬢さん、この工場と専属の契約をせんか?」


 素材の調達人としてスカウトをされてしまった。


 持ち込んだ素材の状態がとても良かったので気に入られたらしい。 超特急で仕上げてくれると約束してくれた。 


 アラクネーの糸を採取してくれたスレイとニールにお礼を言わなくっちゃ♪ …彼らの馬具の為の糸だけど^^


 さて、次はどこに行くのかなぁ?


 店を出てディアーナの案内で角を曲がった時だった。


「アリス!」


 今度は後ろから声を掛けられる。


 ………今度は誰かなぁ?


ありがとうございました!

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