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一緒にごはん!

「あ~………、きもちいぃぃぃぃ」

「ぬくぬくなのにゃ~」

「ぷかぷかうくの、きもちいいね~~」



 今朝目覚めた私は、ふとあることに気が付いて慌ててベッドから飛び起きた。


「スレイとニールの晩ごはん!!」


 昨夜はスレイ達に会いに行った記憶がない!


 慌てて部屋を飛び出そうとした私を、


「アリスはちゃんとスレイ達にごはんを届けるように手配していたのにゃ~」


 気が抜けるほどのんびりとした口調でハクが止めた。


「本当!? よかった~!」


 どうやら私は酔ってほとんど寝落ち寸前の状態で、給仕さん達にスレイとニールの分のごはんを預けていたらしい。当然私たちと同じごはん、とカットした野菜をたくさん。


 それを見た給仕さん達がほんの一瞬だけ羨ましそうな表情(かお)をしていたと聞いて、私は思わず苦笑する。


 一流の宿の給仕さん達が思わず表情を変えてしまうほど、❝おいしさ❞に定評のある極桃オーク肉。 いつかは複製できるようになるかもしれないけど、現状では消費する一方なので手持ちの肉は貴重品だ。 残念だけど、お裾分けはしてあげられそうにない。


 もし複製できるようになった時に私がまだこの街にいたら、この宿の賄い用に少しだけ分けてあげよう。だから、えっと……それまでゴメンってことで!


 ハクとライムが心配そうな目で私を見ているので、簡単には他人に譲らないことを約束したんだけど……、あまり信用されていないみたい。 本当に?と何度も何度も念を押されてしまった……。


 ほんとだよっ!って何度も答えるうちに少しずつ自信がなくなって来た私は、


「お風呂に入ろう! せっかくお風呂付の宿に泊まっているのに昨夜はそのまま寝てしまって、もったいないことしちゃったね!」


 と慌ててごまかして今に至る。






 青い壁に白の猫脚バスタブが映えて、とても美しいバスルームだ。タオルの入ったチェストも化粧台も白で統一されていて清潔感があるしね。 


 ………そう。バスルームに家具が置いてあるの。それに青い壁がクロスなことから、このバスタブはお湯にゆっくりとつかることが目的ではないことが推測される。けど、大丈夫! こんな時に大活躍してくれるのが、うちの可愛いハクさんだから♪


 ここのお風呂は汚れを落とすための物で、ゆっくりとお湯につかって疲れを癒したり寛ぐことには向いていないと説明するとどうすればいいのかと聞いてくれ、バスタブの周りにだけ湿度を閉じ込める結界を張ってくれたんだ。


 お陰で部屋や家具のことを気にすることなく、ゆっくりとお湯の中で寛げて……、


「寝るにゃ!」

「ねたらだめなのーっ」


 ……日頃の疲れをすっかりと癒すことができました♪










 お風呂上がりの果実水を飲んだらすぐに馬房へ向かう。


 昨夜の食事が遅くなったことと、私たちが顔を出せなかったことをスレイ達に謝りに来たんだけど、


「主より先に食事をいただくなどできません。それでよかったのです。」

「それに、昨夜はハク兄さまが来てくださいましたわ」


 笑って答える2頭は何というか、私が思っていた以上に<従魔>だった。


 何のわだかまりもなく、ただ、


「主の元気なお顔が見られて嬉しい」

「もう少しゆっくりされていても良かったでしょうに。お疲れは取れましたか?」


 などと、私を気遣ってくれる。


 その心遣いが嬉しかったから、今朝は念入りにた~っぷりとブラッシングをしてあげた。


 スレイをブラッシング中はニールはハクとライムと仲良くじゃれ合っていて、ニールをブラッシング中はスレイはハクとライムと楽しくおしゃべりに興じていた。


 うちの仔たちは、本当に仲良しで微笑ましいな♪



 スレイ達の朝ごはんを取り出すと、


「主や兄上たちを差し置いて先にいただくなどできませぬぞ」

「わたくしたちの食事は主さまや兄さま方の後で結構ですわ」


 軽~く受け取りを拒否されてしまった。さっきまでのおしゃべりで、私たちがまだ朝ごはんを食べていないことを知ってしまっていたから。 そんなに気を遣わなくてもいいのにね?


 だったらここで一緒に食べようと提案したけど、4匹揃って「「「「だめ!」」」」と叱られた。


 馬房で食事など言語道断!ということらしいが、ハクに張ってもらう結界の中なら臭いも視界も遮断できるから大丈夫だと思ったんだけどなぁ。


 でも、また私たちが食べ終わるまで待たせるのは嫌だと困っていると、


「べつべつにいっしょにたべよう?」


 ライムがニールの背中の上から提案する。


 先にここに2頭の食事を用意しておいて、私たちは急いで部屋に戻り食事の支度を済ませる。 で、心話を使って同時に「いただきます」をすればどうかというものだ。


 馬房(ここ)と部屋は少し距離があって心話で会話をするのは難しいと思ったんだけど、そこはハクがクリアしてくれた。


 私には無理だけど、ハクの心話ならここまで通じるらしい。斯くしてライムの案が採用になり、私は2頭の食事(水と朝ごはんとカット野菜)を準備して、急いで部屋に戻ることになった。





 部屋で朝ごはんの支度をしながら、


「ハク、知らない間に2頭の様子を見に行ってくれていたんだね。ありがとうね!」


「べ、別に大したことじゃないにゃ!」


 ハクにお礼を言ったんだけど、ぷいっと視線を明後日の方に向けて、素直に感謝を受け取ってくれない。 でも、


「さすがはくだね! やさしい!」


「弟たちのことを心配するのは当然のことにゃ~。でも、ありがとうにゃ!」


 ライムの誉め言葉は素直に受け止めるようだ。


 ………私、ちょっとだけ、いじけてしまってもいい気がするぞ?


ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] ほのぼの回を読んでこう……区切りみたいな感覚があると、これからまたトラブルが行列をなして待ってそうだなぁと視線が遠くなる気分に……。
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