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本当にwin-winかなぁ?

 支配人さんのお土産は宿代だけでは済まなくて、一緒に来ていた従業員を紹介してくれながら、


「お嬢さまのお連れになった愛馬は2頭の<スレイプニル>だとか! とても美しい毛並みの2頭だと、この者が興奮しながら参りまして……」


「恥ずかしながら俺…僕は! スレイプニルのお世話をしたことがなくて……。お客さまにお世話の仕方を、教えてもらい…いただ、きたくて来ました」


「と、いうことなのです。 今のわたくし共では満足なお世話ができるとお約束できかねますので…」


 言葉を切る支配人さんに、まさかの❝預かりお断り❞!?と少しだけ慌てる私に気が付くことなく、


「今回はお預かり費用を頂戴いたしません。至らない点もあるかとは存じますが、ご容赦いただきたく……」


 と続け、厩務員さんと2人で揃って頭を下げる。


 預かり費用を無料にしてくれると言う上に、頭なんて下げられたら居心地が悪くて仕方がない!


 私は急いで2人に頭をあげてもらい、スレイとニールのごはんや水などは私が用意するし、2頭は人の言葉が理解できるのでそんなに手間はかからないことを伝える。


 この宿にお願いしたいのは馬房を綺麗に掃除してくれることと、私がごはんを持っていけなかったときに果物や野菜を切ってあげて欲しいことくらい。

 

 だから遠慮なく2頭の預かり費用を請求して欲しいと伝えたが、厩務員さんは、


「スレイプニルのお世話の仕方を勉強させてもらえる機会なので、こちらがお金を支払ってもいいくらい」


 と言い、支配人さんは、


「水や餌をお嬢さまがご用意くださるのなら、なおさら費用はいただけません。 お部屋替えを快く受け入れていただいたお礼も兼ねまして、今回は無料ということに……」


 微笑みを浮かべながらも、意見を曲げてくれるつもりはないようだ。 


 あまりこの宿に迷惑をかけるのも悪いなぁ……と思ったんだけど、ご機嫌な様子のハクが、


(スレイとニールがいたら他の馬たちは大人しくなるから、この宿にとっては良いことなのにゃ! スレイとニールはお金を払ってでも世話をする価値があるのにゃ!)


 力強く、これはwin-winの関係だと太鼓判を押してくれたので、素直に宿側の行為を受け取ることにした。


 でも……、ねえ、ハクさん? あなたはお手頃な宿を探していた時、「馬小屋に泊まっている馬の性格が悪そうだからスレイとニールの教育に悪い」という理由で却下しなかったかな?


 スレイとニールがいれば他の馬が大人しくなるんだったら、他の馬の性格は問題なかったんじゃあないのかなぁ……? 











「おいしいのにゃあ! おかわりにゃあ! ……でも、ちょっと硬いのにゃ?」

「だよねぇ。 臭みがなくて甘みのあるとても良いお肉なんだけど、ちょっと硬い気がするよね」

「ぼくはすっごくすっごくおいしいよ?」


 試食の結果。極桃オーク肉は、と~っても!おいしいお肉だった。


 塩と胡椒で味付けをしただけのステーキが、もう、びっくりするほどおいしいのだ! ギルドで見たみんなの反応が納得できてしまうほど。


 でも、あえて言うなら……、普通に切って塩コショウでステーキにするだけでは少々硬い。


 ボアのステーキを柔らかくするためにはヨーグルトを使ったけど、今回はりんごを使ってみようかな? りんごと桃が喧嘩をするかもしれないので、とりあえずは1枚だけ。


 極桃オーク肉をすりおろしたりんごで漬け込んでみる。この後はきちんとソースに使うから、無駄はないよ。


 そしてその間に普通の桃オークを2本の包丁で叩いて挽肉に。 


「ハンバーグにするのにゃ?」


「うん、さっき支配人さんとお話していたら、急に食べたくなっちゃって。 上手にスライスできていないお肉があるから丁度いいしね!」


 今回はできるだけシンプルに作って、桃オークの味を確認したい。 挽肉は少し大きめなお肉を混ぜ込む形にして、つなぎを使わない為に、手をアイスボールで冷やしながらひたすらコネコネ捏ねる。


 それらを焼いて味見をしたら……、


「「「…………っ!!」」」


 後はひたすら大量生産をかけるだけ。時間との戦いだ! 


 応接室のセッティングは支配人さん達にお任せしたので、私はこっちで料理に専念するだけなんだけど、


「っ! こら! つまみ食いする悪い仔は、ごはんのおかずを抜いちゃうぞ!」


「!! つまみ食いじゃあないのにゃあ! ❝味見❞なのにゃ! 立派な❝お手伝い❞なのにゃ!」

「あじみはまかせて~♪」


「味見はさっきしたからもうしなくていいんだよ!! お手伝いをしないなら、向こうの寝室で遊んでおいで?」


 極桃オークのステーキや桃オークのハンバーグがおいしすぎた。


 少し目を離すと、うちの食いしん坊な従魔たちが❝味見❞を称しながらつまみ食いをするので目が離せないんだ。


 キリがないので退室勧告を突きつけると、2匹は慌てて、焼いて休ませているお肉から離れてくれる。


 でも、目線はずっとお肉と私を行き来していて……。 


 つまみ食いの為に私の反応を見ているのかと思っていたら、どうやら違うらしい。


「……そんなに見張っていなくても、私だけつまみ食いしたりしないよ?」


 私が❝味見❞をしないか見張っているだけだった。 ……信用ないな。


 え? 違う? 私が味見をする時に自分たちも一緒にしようと思って見てただけ?


 ……もう、味見の必要はないからね。 おとなしく待っててください!


ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] ありゃ。 桃豚は身が少し硬いのかぁ。 “普通に切って”ってのは、筋切りや肉叩き込みでかな?
[一言] 味見とかつまみ食いって 美味しく感じちゃいますもんね 子供の小さい頃手伝いにならないお手伝い中に 味見と称して口にポイしたら 頬に手をあて奇妙な踊りを披露してました。
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