表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/763

初めての製薬

「ライム、ちょっと手伝って~」


「ぷきゅ!」


「何をするにゃ?」


「【増血薬】を作りたいから、バンパイアバットの血を回収するの。 ライムは部屋を汚さないように、広く伸びられる?」


 お願いすると、ライムはぷるりと震えて薄く広く伸びていき、端を上に向けて折り曲げた。


「…………ねえ? スライムってこんなに有能で気が利く魔物なの?」


 思わずハクに聞いてみると、


「多分、突然変異…、にゃ~」


 ハクも自信なさそうに答えた。 


「ライム、上にものを乗せるよ?」


「ぷきゅ♪」


 大丈夫そうなので、ライムの上で鍋を1つと小瓶を3つ出して水洗いをする。 ライムがそのつど水を吸収してくれるから、本当に楽だ♪


 鍋の中にバンパイアバットの血を3匹分集め、きれいに洗った薬草を6株入れてスキルを発動する。


「【薬師】スキル、【製薬】!」


 上手くいって……!


 鍋の中から優しい光が溢れ、光が消えるとそこにはラズベリー色の液体があった。



 名前:増血薬

 状態:普通

 備考:体内にある血液を増やす

   :かなり不味い



 成功した! 初めての【製薬】が成功した!!


「アリス! おめでとにゃ!」

「ぷっきゃーっ!」 


「ありがとう!」


「いっぱい作っていっぱい儲けて、お風呂付の宿に泊まるのにゃ~♪」


 ……ハクはやっぱりブレないなぁ。 うん、いい宿に泊まって、おいしいものをいっぱい食べようね!













「……っ!!  っ!!」


 こ、呼吸が! 息ができないっ!?


「やっと起きたにゃ~」

「ぷっきゅ…」


 焦っていると従魔の声が聞こえ、同時に顔に張り付いていた何かがはがれて、やっと呼吸ができるようになった。


「なにが起きたの…?」


「お腹が空いたのにゃ!」


 ………ハク? なぜ、こっちを見ないのかな?


「何が起きたの?」


「アリスはお寝坊さんなのにゃ~」

「………」


 ハクは私を見ないし、ライムは一言も鳴かない……。


「ハク、何をしたの? 

 正直に言わないと朝ごはんを出してあげないよ? 私と一緒にダイエットする?」


「お腹が空いたのにゃーっ! ごめんにゃ~! アリス、ごめんにゃ~っ!」


「……何をしたの?」


「ぷきゅ……」

「朝なのにアリスが起きないから、起こすためにライムに顔に貼り付いて貰ったのにゃ~……」


「……私を殺したかったの?」


 お腹が空いた殺人事件!? そんなマヌケな死に方はいやだよ……。


 頭の中でマヌケな戒名の捜査本部が思い浮かび、げんなりしているところにハクの朗らかな声が聞こえた。


「アリスはそんなことじゃ死なないにゃ! ちょっと苦しいだけにゃ~♪」


「ハク! 反省してないね!?」


「ごめんにゃあ!」

「ぷきゅう……」


 しばらく反省してなさい!  私は2匹と視線を合わせずに、一人で部屋を出て行った。











「マルゴさん、おはようございます」


「ああ、おはよう。 よく眠れたかい?」


「はい、おかげ様でゆっくりと♪  ……ゆっくりと眠りすぎて、従魔に殺されかけました」


 マルゴさんからも叱ってやってください…。


「ああ? なんだい、そりゃあ?」


「息苦しくて目が覚めたんです。そうしたら顔にライムが貼りついていて…。 お腹を空かせたハクの指示でした」


「はあ? ……あんた達は本当に仲がいいんだねぇ!」


 私の訴えを聞いたマルゴさんは笑い声をあげる。 ……叱って欲しかったのに。


「マルゴさんは早起きですね? 昨夜は後片付けをお任せしてしまって…。 ありがとうございました」


「年寄りは早起きなのさ。 ハクちゃんと同じでアタシも朝ごはんが楽しみでね。早く顔を洗ってきておくれ」


 マルゴさんに促されて顔を洗って戻ると、ドアの内側でハクとライムが鎮座していた。


「反省しているようだね。アリスさんの戻りをそわそわしながら待っていたよ」


「そうですか? 入り口を塞いでしまってすみません。 ほら、早く顔を洗って朝ごはんを食べよう!」


 待っていたのは私じゃなくて、朝ごはんだろうけどね~?  反省する姿がとても可愛かったから、許すことにした。 


 2匹を洗ってマルゴさんの家に戻ると、香ばしく甘い香りがしてきた。 これは焼きたてパンの香り! 


しょうが焼きにはご飯派だけど、焼きたてパンに挟んで食べるのも美味しそうだ!


「お待たせしました! 焼きたてのパンですか? いい香りです♪」


「もうテーブルに置いてあるよ」


「すぐにおかずを出すので、お皿を貸してください」


 りんごの皮を手早く剥いて8等分に切ったら、塩水を入れた鍋に入れていく。 3つ分切ってから振り返ると、大き目のお皿が4枚置いてあった。従魔の分も同じお皿を用意してくれるのが嬉しい♪


 皮と芯はインベントリに大事にしまい、お皿にたっぷりのしょうが焼きと、千切りキャベツの代わりにりんごを置いた。


(美味しそうにゃ~♪)

(ぷっきゅきゅ♪)


「朝から肉とは、豪勢だねぇ! 遠慮なくいただくよ」


「はい、私たちも遠慮なくいただきます♪」


 マルゴさんは食前の祈りを、私たち(ハクとライムも参加するようになった)は『いただきます』の挨拶で、朝ごはんを食べ始める。


(おいしいにゃん♪)

(ぷっきゃーっ♪)

「焼きたてパン、本当においしいですねぇ!」


「このショウガヤキ?も美味しいよ! 真似していいかい?」


「いいですよ~。レシピ、書きましょうか?」


 軽い気持ちで聞いてみると、マルゴさんが一瞬だけ動きを止めた。


「……いいのかい?」


「? はい」


「そうか。 …もらえるとありがたいね」


「今夜にでも書いて、明日渡しますね」


「ああ、楽しみにしているよ」


(あ~ぁ、またにゃー)


ごはんを夢中で食べていたハクが、突然ため息を吐いた。


(え、何? また何かいけなかった!?)


(アリスは甘いにゃね~)


(え、ハク? 何? 説明してよ~!)


 その後、何度聞いてもハクは答えてくれなかった。 レシピを渡すだけなのに何がいけないんだろう……?


ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ