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臨時パーティーの報酬

 ディアーナが応対していた冒険者が用を済ませ、なぜか私に向かって、


「遠征中に出会ったら、俺にも飯を売ってくれよな! 頑張れよっ!」


 と声を掛けてギルドを出て行く。


「誰?」


「私が担当させていただいているBランク冒険者の方です。 ……アリスさんは遠征先で食事を販売しているのですか?」


「……うん。………すっごい高値でね」


 てっきりディアーナが色々と話をしたのかと思ったけど、どうやら違うらしい。 考えてみたら外でごはんを販売したことなんてディアーナに話したことなかったしね。


 どうして彼がそのことを知っているのかは気になるけど、ギルドを出た彼をわざわざ追いかけて聞くほどの事でもない。 どこかで会ったら、その時に聞いてみよう。












 ディアーナがカウンターに硬貨の山をいくつか作ると、カウンターの奥からイルマが小走りにやって来た。


 私の無事を喜んでくれながらも、視線は山の一つに流れている。


「こちらが昨日提出いただいた素材の買い取り金の全額です。 その内アリスさんの取り分がこちらで、こちらがギルドからの依頼報酬です。 こちらはイルマの取り分になります。後の4つはギルマス達の分になります。 詳細はこちらに」


 少し離しておいていた硬貨を私に、6つに分けられた硬貨からイルマと私に一山ずつ分配されたんだけど、イルマの取り分が明らかに少なくて、私の取り分は他よりも多い。


 貰った詳細を確認すると❝貢献度❞に応じて取り分が変わり、今回は一番働いていたギルマスと、【クリーン】や【インベントリ】を使って補助していた私の取り分が他より多くなっている。 ……使った時間は同じなのに、受け取る報酬額が違うのは不公平な気がするなぁ。


 イルマに不服はないのか? 他のパーティーもこういう計算をするのか? と疑問をぶつけてみると、


「何の文句があると思うのですか!? こんな仕事なら毎回呼んで欲しいです!」


 イルマは本当にびっくりしたような顔で私を見て、ディアーナと頷き合っている。 ……本当に不服はないようだ。


 本人が納得しているなら私が口出しすることでもないので、大人しく私の取り分を受け取ると、


「ほとんど何もしていない私がこれだけいただくことに、アリスさんは不服を感じないのですか?」


 イルマに逆に質問された。


「私は初めから頭割りだと思っていたから。 それにイルマは書記としての仕事をきちんとしていたでしょ? 報酬を受け取るのは当然じゃないの?」


 ギルド職員の彼女が冒険者たちと同行するのは大変だっただろうに、文句も言わずに頑張っていたのを見ていて、何の文句があると言うのか。


 私の取り分から5%を計算しながら答えると、イルマはとても嬉しそうに笑いながらお礼を言った。 


 なぜ私にお礼を言うのかがわからなかったので首を傾げていると、ハクとライムが笑い出す。 それを見てディアーナとシルヴァーノさんまで笑っているんだけど……。 まあ、みんなが笑っているのなら悪いことではないのだろうから、深く考えずに流すことにした。


「これはなんですか?」


 忘れないうちに、と、受け取った報酬から5%をカウンターに戻すと、ディアーナが不思議そうな顔をする。


「担当の取り分は報酬の5%じゃなかったっけ?」


「今回の仕事はギルドからの依頼なので、専属への報酬は発生しません。 依頼するときにそうお話したかと……」


「……そうだっけ?」


 そんなことを言っていたかなぁ?と首をひねっていると、


「そうですよ。これもギルドのルールなので、今回は私たちにはお気遣いなく」


 苦笑しながらお金をこちらに押し戻した。 シルヴァーノさんも❝当然❞といった顔で頷いているので、素直にお金は返してもらう。 その代わりに、


「だったらお土産の追加ね。昨日渡したものと同じになるけど」


 インベントリから森の中心部で採取した桃を取り出した。 昨夜もたくさん複製したからね! 惜しみなく渡せるよ♪


 2日連続で同じ果物は飽きるかな?と少しだけ心配だったんだけど、ディアーナもシルヴァーノさんも本当に嬉しそうに喜んで受け取ってくれた。 


(ディアーナたち、大喜びにゃ♪)


(この桃、おいしいよね! 私も大好き♪)


(あとでぼくたちもたべていい?)


(もちろん! スレイ達と一緒にたくさん食べようね!)


 従魔たちと笑い合っている私には、


「あの桃、でかくないか? もしかして中心部の……?」

「バカ言え、あそこにはヤツらが屯って……」


 後ろからこちらを見ていた冒険者たちの騒めきや、


「いいなぁ~……。あんな桃、私のお給金じゃあとても買えないわ」

「っていうより、滅多に売ってないわよ! 貴族への献上品にされるもの!」


 他の職員たちの羨望のため息。それを見ていたビーチェが悔しそうに爪を噛んでいたことにはちっとも気が付かなかった。


ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] ビーチェ……こいつまた余計な波乱を企んでそうな、どーしょもねー思考をしてそうだな(呆れ声)
[一言] あっ!ビーチェってまだいたの? そういえば後始末済んでなかったですね…。 すっかり存在感なくなってたので忘れかけてましたww
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