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森からの帰還。 そして、戦いの予感?

「それでな、兄貴がアリスちゃ…さ」

「なあに? バルさん」


「ば、バルさん!?」


 バルトロメーオさんが何度目かの言い間違いを訂正する前に、私は彼を❝バルさん❞と呼んでみた。驚いた顔の彼に「嫌だった?」と聞いてみたらブンブンと首を横に振り、


「俺はアリスちゃん、って呼んでもいいか?」


 勢いよく尋ねられたので、笑顔で了承する。 これで何度も言い直す手間がはぶけるでしょ。


「でな、兄貴がアリスちゃんに治療のお礼と、その……、俺がしたことの詫びをしたいって言っているんだが」


 後半部分をバルさんは気まずそうに俯いて言っているけど、私の中では治療は治療費を受け取って、お詫びはまず~い造血薬を飲ませることで片は付いている。 これ以上は何も必要ないので丁寧に辞退する。


 ❝まだわだかまりがある❞なんて間違った認識をされないように、にっこりと全開の笑顔を添えておいたんだけど、ハクから受ける抗議の攻撃のせいで、笑顔が引きつっていないかが心配だな。











 バルさんにドアを開けてもらって冒険者ギルドのドアをくぐると、依頼ボードの前にいたディアーナが笑顔で駆け寄ってきた。


「おかえりなさい、アリスさん! ハクちゃんもライムちゃんも無事でよかったわ!! 

 こんなに早く帰還できるなんて、やっぱりスレイプニルの能力って凄いですね!」


 私の腕の中にいるハクとライムをナデナデしながら嬉しそうにスレイとニールを褒めてくれるので、私も笑顔でお土産を取り出す。


「なかなか良い味の桃が手に入ったからお裾分け。シルヴァーノさんにも渡しておいてね」


 森の中心部に生えていた木の桃。 収穫時にこの桃をつまみ食いしていたハクとライムの喜びようからも、私の実感からも、今までの桃とは一味も二味も違うことは間違いない。


 他の桃よりも一回り大きな果実を見て、ディアーナは驚きを隠さず、目を零れ落ちそうなほど大きく(みは)った。


「これは……! もしかして、単独で森の中心部に?」


 さすがはギルドの有能な受付嬢だ。一目見ただけでこの桃の産地が分かったらしい。


 すぐさまアイテムボックスに仕舞いながら、他の人たちには聞こえないように私の耳元で囁くように聞いてくれたので、こくりと頷くことで返事をすると、


「シルヴァーノ! 私はアリスさんをギルマスの元へお連れするから、スレイちゃんとニールちゃんをお願いね。 それと、アリスさんからお土産をいただいたから楽しみにしてて♪」


 嬉しそうにスキップでも踏みそうな勢いで、私をギルドマスタールームに案内してくれた。












 通された部屋では、ギルマスとサブマスが揃って私を迎えてくれた。ギルマスが立ち上がりながら、


「どうだった?」


 ワクワクしたような顔で問うので、


「目当ての物は手に入ったわ。 それよりも預かり物はどうする?」


 簡単に成果を報告し、私のインベントリに入っている、スフェーンの森でギルマス達が倒した魔物や採取したものをどうするかと問い返すと、露骨にがっかりとした顔になり、


「あ~、そうだな。 査定の時間もかかるだろうから、先に買い取りの手続きをしておくか。 それよりも、もっと詳しい経緯とかをだな……」


 あまり詳しく話をしたくないという私の消極的な意思表示をマルっと無視して、詳しい話をねだる。


「足が多くて気持ちの悪い魔物がいたわね。うちの仔たちが倒してくれたけど、二度と遭いたくないわ」


 仕方がないので、サラッとだけ報告すると、


「足が多い魔物? まさか、アラクネーか!? アリス達だけで中心部のアラクネーを倒したのか!? あいつはオークやトレントとつるんでいるから厄介だっただろう!?」


 サブマスが興奮で頬を赤く染めて立ち上がる。 ……やっぱりギルマス(クマ)のお姉さんとは思えないほど美人さんだ。


「一か所で欲しい素材が揃ういいスポットだったけどね。 ……あいつが蜘蛛でさえなければ」


 深くため息を吐きながら「もう、行かない」と呟くと姉弟が揃って「いや、是非行って来てくれ!」と言うので、思わず睨みつけちゃったんだけど、よく考えたらこれって、自分の弱みを教えたことになるんじゃないのかな?


 失敗した!と思いながらも一度視線を姉弟に戻すと、2人は、


「「冒険者の不利になることを広めるようなバカな真似はしない」」


 苦笑しながらも声を揃えて誓ってくれる。


 ……うん。そういう面では信用してもいい2人だよね。 でも、次からはもっと気を付けよう。


(人型の魔物は自分で解体できないって言ってるんだから、今さらじゃないのかにゃ?)


 というハクの心話(こえ)は聞こえません!











 買い取り受付で預かっていた素材を全て提出してからギルマス室に戻ると、後を追うように見知らぬ男と少し憤ったような表情のディアーナが革袋を手に入室してきた。


 革袋の中身は今回の依頼の報酬とゴブリンの(コロニー)を解体したことに対する報奨金だ。


 フランカ達のお墓とゴブリンの(コロニー)だった場所への案内報酬が5万メレに、コロニー解体の報奨金が5万メレの合計10万メレ。


 今回狩った魔物の買い取り金は別に分配されるし、コロニーにいたゴブリンの討伐報酬もすでにもらっているので、私にとっては十分な報酬だと内心ホクホクしていたんだけど、


「それと、君のランクをBランクに引き上げることが今回の報酬だ。破格なんだぞ」


 ギルドの幹部を名乗る男が偉そうに腕組みをしながら言った言葉が妙に引っかかった。


 ………ランクを上げて欲しいなんて、言った覚えはないんだけどなぁ?


ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] サブタイの >そして、戦いの予感? 厄介ごとの予感 が正しいんじゃないかな?(なげやり) 森の中心部、他の奴へ行かせるよう言え(依頼出せ)ば良いじゃない(某王妃感)
[一言] なぁーんか変なの出てきましたね。 ギルマスサブマス何か言ってますよ。 報酬勝手にかえる権限乱入者にあるんでしょうか?
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