賑やかな野営
「美味い……! 美味いぞっ! 野営でいつもこんなに美味いもんが食えるなら、俺はSランクにだってなってやる!」
「ああ、【クリーン】でさっぱりした後のこの甘味……。 こんなに甘くて冷たい贅沢な食べ物を野営中に食べられるなんて、想像もしなかったよ」
「わ、私、こんな出張調査なら、毎回だって志願します!」
「「私たち(うちら)のパーティーに加入して!」」
「え? やだ」
「「なんでよ~っっ!」」
フランカたちのお骨を改めて埋葬し終わった時には辺りはもう薄暗くなっていて、移動は危険だと判断した私たちは、お墓から少し離れた場所で夜を明かすことになった。
そこで私は、フランカたちの遺体を傷つけないように丁寧に扱ってくれたことへのお礼としてクリーン魔法でみんなの汚れを落とし、少しでも疲れが取れるようにと食後のデザートを提供したんだけど………。
「アリスがいたら、野営がこんなに快適なのか……!」
「「「「一緒に組もう(ぜっ)!!」」」」
思った以上に好評で、ちょっとした騒ぎになっていた。
騒ぎに参加していないのはうちの仔たちとギルド職員のイルマだけ。 そのイルマも、何かを考え込んでいたかと思うと急に立ち上がり、
「ディアーナさんがこの間食べていたのもきっと……! あああっ、私も専属になりたいっ!!」
大きな声で叫び出したから収拾が付かないことになってしまった。
でも冷静に見ていると、みんなが時折私の顔色を確認しながらわざと大袈裟に騒いでいることに気が付く。
………フランカたちの遺体を掘り返したことで、少し沈んでいる私を心配してくれているらしい。
その気持ちが嬉しくて、私はインベントリの中から追加のお菓子をチョイスしてテーブルに乗せる。
大きな歓声の後また勧誘合戦に熱が入ったけど、今度は頭からスルーした。 もちろん、感謝の気持ちだけは心の中で伝えたけどね。
今回は久しぶりに私もきちんと夜番に参加した。
いつものようにハクにお願いすると、みんなの勧誘合戦が本気のものになるかもしれないと思って警戒した結果だ。
でも、朝ごはんを食べ終わると(当然自分たちの分しか出していない。ごはんは各自で用意しているからね)、なぜかギルマスやサブマスも参加の勧誘合戦が再燃したので、私たちはここから別行動したいと伝えた。
本当は森の入り口まで一緒に戻ってから私たちだけ引き返すつもりだったんだけどね。 ちょっとみんなが賑やか過ぎるので、早々に離脱することにしたんだ。
ギルドの調査で来たのだから勝手な行動は許されないかとも思ったんだけど、
「欲しい素材があるなら仕方がないな。ギルドからの依頼はここで終了にしてやるから、街に戻ったらすぐにギルドに顔を出せ。 戻り次第、アリスと従魔たちが無事な顔を見せに来ることが、ここで解散する条件だ」
あっさりとギルマスのOKが出た。サブマスも苦笑しながら頷いているから、本当にここで解散していいらしい。
「ありがとう!! 街に戻ったらすぐにギルドに顔を出すわ! これ、お礼のオヤツね♪」
「お…? おおっ! ありがとな!
アリスが戻って来るまでに色々な手配は済ませておくからな。 探索はくれぐれも気を付けて、無事に戻ってくるんだぞ!」
思っていた以上に柔軟な対応と私たちを心配してくれる態度が嬉しくて、昨日は出さなかった生キャラメルの瓶づめをギルマスに渡すと、ギルマスも嬉しそうに受け取ってお礼を言いながら頭を撫でてくれた。
………ジャスパーのコンラートもそうだったけど、最初のイメージが悪くなければ、もっと仲良くできたと思うんだよね。
最初のイメージが最悪ってのは<冒険者ギルドのギルドマスター>の職業病なのかなぁ? ……もったいない!
ありがとうございました!




