従魔登録 1
❝明日からの移動の為に従魔たちを迎えに行く❞
冒険者たちからの勧誘合戦から逃げる口実だけど、もともと午後から従魔登録の予定だったからちょうどいい。
そんな軽い気持ちで街の外に出て時間を潰し、人目のない所でスレイとニールを従魔部屋から呼び戻してまた街の中に戻った。
以前なら街の外に出て、中へ戻るたびにお金がかかっていたけど、冒険者登録をしたおかげで余計な経費を掛けずに気軽に街の出入りができるので、ちょっとお得な気分を味わいながら街の門をくぐった。
「スレイプニルじゃないか! それも2頭も!?」
「それがあんたの❝従魔❞なのかっ!?」
「【剣】に【攻撃魔法】に【治癒魔法】、それにすげぇ容量の【アイテムボックス】があって<スレイプニル>を従魔にするレベルの【テイマースキル】まで!?」
「「「「「凄すぎる…! ぜひ私(俺)のパーティーにっ!!」」」」」
なんの警戒もせずに門をくぐった私を、門の内側で待っていた(暇な)冒険者たちの勧誘合戦が襲う。 大幅に熱量を増やしているのは、気のせいではないはずだ。
門をくぐる時に門番さんから「従魔に乗ったままで構わないが、緊急時以外は走らせない様に」と注意を受けているので、このまま走って逃げることもできなくて、<冒険者ギルド>に着くまでの間、私はひたすら「単独活動希望なので、パーティーは組まない」と言い続けて、すっかりと疲れてしまっていた。
だから、増え続ける見物人のことも放置してしまった。
(主、着きましたぞ。気を付けて降りてくだされ)
ニールが私を優しく気遣いながら脚を折り畳み、地にお腹を付けて私が降りやすい体勢を取ってくれた時も、「ありがとう」と感謝の気持ちを伝えることが精いっぱいで、この姿が周りにどう映っているかなんてことは、気にする余裕がなかったんだ……。まさか、
「あのスレイプニルが見事に服従している!」
「これは昨日今日の関係じゃないぞ! きっと子供の頃からの付き合いに違いない!」
「……スレイプニルを身近において調教できる子供? それって、もしかして」
「スレイプニル専門の調教師を雇える存在……。 どこかの姫君なのかっ!?」
なんて誤解が大量に製造されるなんて、想像もできなかったんだよね……。
疲れ切ってギルドの扉を開けた時に、
「アリスさん、おかえりなさい! なんて利口そうなスレイプニルなの!?」
とディアーナさんの声が聞こえた時にはとても❝ほっ❞としたんだけど、
「ディアーナさん!? どうしてお仕事しているの?」
とっくに帰ったはずのディアーナさんの姿をカウンターの中に見つけて、とても驚いた。
聞けば、今日の休日は明日と振り替えになったので、仮眠をとった後はずっと仕事をしていたとのこと。あまりの過酷な働きっぷりに目を丸くした私に、
「アリスさんの可愛い従魔たちの<登録手続き>も私がしたかったので、ちょうど良かったんです。お小遣いは自分で稼がないと!」
ディアーナさんは疲れを顔に出さず、楽しそうに笑って立ち上がった。
これはどう考えても、登録したばかりの担当冒険者のフォローをするために、無理に休みを返上しちゃった感じだよね?
ほとんど眠っていないディアーナさんに申し訳なくて、どう報いたものかと考えていると、
(疲れを取るには甘いものにゃ♪)
(ディアーナもいっしょにばんごはんをたべる?)
ハクとライムが❝わくわく❞といった感情を隠さずに提案してくれた。
疲れているだろうから早く帰らせてあげないと、と思って、2匹の提案を却下しようとしたら、
「とっても美味しい食事をご馳走になって、本当に元気なのよ?」
ディアーナさんが本当に嬉しそうに笑いながら言ってくれたので、提案するだけしてみることになった。
疲れを取るには……やっぱりアイスクリームかなぁ? 喜んでくれるかな?
ありがとうございました!
ちょっと、短いです。 ごめんなさい。




