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ラリマーに到着!

 スフェーンの森からラリマーの街までは馬車で2日くらい掛かると聞いていたけど、スレイプニルの足だと1日も掛からなかった。出発した日の夜にはもう街の傍まで着いている。


「ゆっくりと休みを取りながらの移動だったのに…」


「従魔にして良かったのにゃ♪」


 遠目に街を見ながら感心していると、スレイの背に乗っていたハクが得意そうに胸を張る。 


「我らの足なら」

「当然ですわ」


 ニールとスレイも揃って顎を反らし、ライムは嬉しそうにスレイの背中でぽよぽよと跳ねて嬉しそうだ。


 ハクとライムの嬉しそうな様子を見れただけでも、ニールとスレイを従魔にしてよかったと思えた。


「スレイとニール、どうしようかな……」


「にゃっ!? 街に着いたからって、もう捨てるつもりにゃっ!? ダメにゃ! 2頭とも、もう仲間なのにゃ!」

「ありす…。すれいとにーるもいっしょにつれていって?」


 これからのことを考えながらの呟きは、私の可愛い従魔たちに誤解を与えたようだ。 スレイとニールも悲しそうに項垂れてしまった。


「!? 違うよ! 誤解だよ! お別れするつもりなんか欠片もないよ! 

 ただ、今夜のことを考えていただけ」


「にゃ…?」


 悲しい顔の従魔たちを安心させる為に、私は少し早口になりながら説明する。


 空で輝いている月の高さと街への人の流れをみて、そろそろ門が閉まってもおかしくない時間だと思うこと。


 この時間から街に入って、安全に2頭を預けられるところが無事に見つかるかどうかが怪しいこと。


 でも、従魔登録の為には、2頭が一緒に<冒険者>ギルドへ行く必要があること。


 これらの理由で、このまま2頭に乗って街に行くか、2頭は従魔部屋(ハウス)で休ませて私とハクとライムだけで街へ入るかを迷っていることを伝えると、


「登録はいつでもできるから、今夜はハウスに入っておくにゃ!」

「べつべつはさみしいから、はうすにいれてあげて?」


 先輩従魔たちのお陰であっさりと方針が決まった。


 テイムしたスレイプニルは高値で取引されることがあるから、信頼できる所に預けないと攫われる心配がある。


 街に入っても今夜はもう寝るだけだから、わざわざ他所に預けて無駄金を使う必要はない。


 従魔になったばかりで私たちと別れるのはスレイプニルが不安だろうから、ハウスの中でゆっくりと休ませてあげた方がいい。


 どれも納得できる理由だから私が反対することはなかった。


「「はうす?」」


 初めて聞く単語に不思議顔の2頭にハクがハウスの説明をしてあげると、2頭はハウス=不思議空間に興味津々で、


「さすがは我が主。素晴らしい【スキル】をお持ちだ!」

「そこに入れるのは従魔だけですの? 信頼の証ですわね!」


 頭を寄せあって嬉しそうに話している。 


 今なら私たちの周りに人影は見えないし、2頭もハウスに入ることを楽しみにしているようなので、ここからは街まで歩くことにした。


 ハウスを開いてあげると何の躊躇も見せずに嬉々として入っていくので、逆に私が戸惑った。


 未知の空間に入っていくのに何の恐れもなく、このまま閉じ込められるかもしれないと疑いもしない。


 2頭は❝ハウスに入れるのは信頼の証❞と言っているけど、❝ハウスに入ってくれるのは信頼されている証❞だと実感する。ハクとライムが寄せてくれていた信頼に改めて気づき、感謝した。










 ハクを肩に乗せ、ライムを腕に抱きながら急ぎ足で街に向かっていると、


「お~い! そろそろ門を閉めるから、急げ~っ!」


 門番さんが松明を振りながら声を掛けてくれた。周りを見ると、街に向かっているのは私たちで最後のようだ。


 門番さんの声と同時に大きな門がゆっくりと閉まり始めるので、急いで駆け出した。


「間に合って良かったな!」


 声を掛けてくれた門番さんがにこにこと笑いながら私たちを迎えてくれると、隣に立っていた若い門番さんが、


「ようこそラリマーへ! 身分証はお持ちですか? かわいらしいお嬢さん!」


 お世辞とウインク付きで聞いてくる。


「商業ギルドのカードでいいですか?」


 今は身分証と言えばこれしか持っていない。とりあえず渡してみると、


「おや、これは……。 若くて綺麗な上に、随分と優秀なんですね!」


 カードを受け取った門番さんが感心したように声を上げた。


「それほどでもないですよ」


 まだまともに商人らしい活動をしていないので苦笑しながら答えると、門番さんはカードを水晶にかざしながら、


「商人カードも正規の物で問題ありません。 …そんなに若くてCランクカードを持てるなんて優秀過ぎますよ。 その上こんなに可愛らしいのだから悪い男には気を付けて!」


「お前が悪い男になりたそうだな?」


 初めに声を掛けてくれた門番さんに小突かれながらカードを返してくれた。


 ……私の商人ランクって、Cだったんだ? 知らなかったな。 


 門番さんたちの反応を見る限り、Cランク=駆け出しってわけではないだろう。 ついこの間登録したばかりなのに、随分と気前よくランクを上げてくれたものだと感心半分、呆れ半分でサンダリオギルマスの顔を思い出す。


(当然なのにゃ!)

(ありす、すごい!)


(ハクとライムのお陰だね~)


 ハクとライムの称賛をくすぐったく思いながら感謝を告げる。 一度破棄した商人カードだったけど、2匹が連係して強引に再発行の手助けをしてくれたんだもんね?


 おしおきの❝朝ごはん抜き❞を思い出したのか、動きが止まってしまった2匹を撫でながらカードを受け取り、差し出された水晶に手を置いた。水晶が白い光を発するのをみて、門番さんが安心したように笑う。


「こちらも問題ありませんね。 通行税は3000メレです」


 ラリマーの通行税は本来5000メレだけど、身分証の提示で3000メレになるらしい。 期間は10日、ジャスパーと一緒で11日目には改めて通行税が発生する。


 やっぱり冒険者登録をした方がお得だな。


ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] 町に着きましたが、さてさてまたどんな騒動に巻き込まれる(巻き起こす)のか。 まずスレイプニル2頭の時点でひとつ、サル達の顛末伺いでひとつ? ……他はなにかな~。 体調不良が、良くな…
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