森を抜けて
魔物たちに遭遇したり薬草などを採取しながらの移動は特にトラブルもなく順調に進み、暗くなって1時間くらい、かな? で森を抜けることができた。
移動中のおしゃべりはお互いの自己紹介、スレイとニールが番であることやハクが神獣であること、ライムの特技や私の旅の理由(ただの観光)など、いろいろな話をした。
その結果、ニールが「なるほど。主は巻き込まれ体質でありましたか。 これは気合を入れてお守りせねば…」と呟いたのが聞こえたけど、否定できない私はただ笑ってごまかすだけだ。
スレイとニールは最初私のことを❝アリスさま❞と呼んで譲らなかった。
2頭から❝さま付け❞されるのは窮屈で嫌だったので、ハクもライムも私を呼び捨てにしているんだから同じように呼ぶように2頭に言ったけど聞き入れてもらえず、今は❝主❞呼びに落ち着いている。
❝さま付け❞とたいして変わらないと思うんだけど、これが2頭の譲歩らしいので受け入れることにする。これから時間をかけてゆっくりと信頼を築けたら自然と変わってくるかもしれないし、その頃には呼び方なんて気にならなくなってるかもしれないしね。
野営の準備が整ったので、【クリーン】でさっぱりしたら食事の時間だ。(2頭が【クリーン】を心地よいと喜ぶ姿を先輩従魔のハクとライムが優しく見守っている姿が可愛かった!)
私たちはパンとシチューにローストオークとサラダ(マヨネーズ掛け)で簡単に、スレイプニルたちはりんごと人参とサツマイモでもっと簡単な食事になった。
スレイプニルは魔物だからなんでも食べられると聞いたので、スレイとニールも私たちと一緒の物を食べるかと聞いてみたけど、2頭とも果物とそのままの野菜を希望したので、私たちとは別のメニューだ。
2頭は【クリーン】済みのお水がかなり気に入ったようで移動中もおやつより水を好んでいたから、【アイスボール】を作ってお水に入れてあげると喜んで3回も水をお代わりしたのにはびっくりした。
体が大きい分飲む量も多くて、バケツの水がすぐになくなってしまう様子は見ていて面白い。
街に着いたら、もう少し大きなバケツを買ってあげよう♪
今朝はとても暖かくて幸せな目覚めになった。
ライムが私を包み込むようにクッションになってくれていて、ハクが私の首元に伸びているのはいつもと一緒。今朝はその私たちを両側から挟み込むように、スレイとニールが眠っていたのだ。
2頭の高い体温が伝わってきて、そのままもう一度寝そうになるほど心地いい。
2度寝の誘惑を振り切って起き上がると、ハクとライムも「今朝は暖かい」と喜んでいる。スレイとニールが従魔になってくれてよかったな~♪
さて、朝ごはんを食べたら街に向けて出発だ!
「重心はもう少し前ですわ。真っ直ぐに背を伸ばしてくださいませ」
「遠慮なく我の鬣を掴んでくだされ。 簡単には落としませぬゆえ、もっと肩の力を抜くと楽ですぞ」
朝食後。さて、出発だ!と立ち上がった私の前に、ニールが足をたたんで座り込んだ。
食後の一休みの時間が短かったかな?と考える前に、「どうぞ、我の背に」と言われて驚く。
体験乗馬しかしたことがない私にいきなり馬での移動はハードルが高いと思い、乗せてもらう練習は街に着いてから。とやんわりと断ると、「訓練しながら移動すればよいのです。主が歩くよりも、ニールの背に乗った方が早く街に着きますわ」とスレイに提案された。
フランカの遺品のこともあり、早く街に着きたい私はその提案を受け入れたんだけど、これがなかなか難しい。
でも、乗せてくれる馬側からのアドバイスはとても的確で、すぐに慣れることができた。
もちろん、ニールが気を遣って歩いてくれていることはわかっているんだけどね? 裸馬状態のニールの背で、駆け足までできるようになったのは、ビジューのくれた体の運動能力の高さの証明のようで嬉しかった。
私はニールの背に、ハクとライムは器用にスレイの背に落ち着いて、一路、ラリマーを目指した。
ありがとうございました!




