3つ目の空間に…
とても重たい話になっています。 ご注意ください。
「あのまま死なせて欲しかったのに!」
「…っ!?」
ゴブリンの洞窟で、助けたつもりの女性の第一声が先のものだったので私は驚いて言葉が出なかった。
「どうして放っておいてくれなかったのさっ……!」
涙を流しながらこぶしで地を叩き、生きていることを悔しがっている姿に、私は言葉を失った。
❝何がいようと、魔物なら、生まれたばかりの赤ん坊でも退治する❞
覚悟を決めて向かった、3つ目の空間。 そこにいたのは人族の女性たちだった。
【ライト】に照らされた空間でまず目に飛び込んできたのは、ボロボロになった衣類の残骸だけを身に付け、蔦のようなもので手と口を縛られた状態でもう虫の息だった女性の姿。
そして、何も身に纏わず、開いた足に茶色く変色した血と体液を付着させたまま、微笑みを浮かべているまだ幼い少女の姿……。
「り…、【リカバー】! 【リカバー】っ! 【クリーン】! 【ヒール】! 【クリーン】! 【クリーン】! 【クリーン】! 【クリーン】っ!!」
自分が【ダブル】で魔法を使えることも忘れるほどの衝撃を受けながら、それでも必死に回復を祈りながら魔法を使い、手と口の拘束を解いた。
ビジューからもらった魔法のお陰で目の前の2人から傷と汚れが消えて、女性の呼吸も穏やかなものになってほっとしたのも束の間。 目を開いた女性の第一声に、私は凍り付いたように動けなくなった……。
女性は涙を流しながら何度も何度もこぶしを地に叩きつけ、自分で噛み切ってしまった唇に血を滲ませながら慟哭していたが、しばらくして落ち着いたのか、ゆっくりと大きな息を吐き出してから私を見た。
「……あんたが悪いんじゃない。ごめん。 ……でも、❝ありがとう❞とは言えないよ」
体液で汚されていた彼女たちの体。そして、地面にしみ込んでいる血液や体液の量を見て、ここで何が行われていたのかがわからないほど愚かではないつもりだ。
力なく呟くように言う彼女に小さく頷きを返し、まずはここから出ようと口にした。
こんな所にいつまでも居たくないだろう、と思っての提案はすんなりと受け入れられた。
ただ、もう一人の少女……。正気を失っていて、私たちの声が届かない少女を連れ出すのに少しだけもめた。
私は、怪我は治したけれど衰弱している彼女より私が背負うのが当たり前だろと思うのに、彼女は頑として私が少女に触れるのを拒み、自身が彼女を背負って歩き出す。
おぼつかない足取りでゆっくりと、時に転びそうになりながら歩く彼女の為に、私は先行してゴブリンの死骸を片っ端からインベントリに回収することにした。 ……死骸を見せない為・死骸に足を取られて転ばないように、と言うよりも、彼女たちをひどい目に遭わせた存在を彼女たちの目に触れさせない為に。
そんな思いが伝わったのか、洞窟の外に出た彼女の表情は少しだけ穏やかなものになっていて、私も少しほっとした。 ……一瞬だけ。
「っ!? なっ!! 【リカバー】っ!!」
「無駄だよ…。もう、死んでる」
彼女の言葉通り、何度リカバーを掛けても少女の呼吸は戻らない。
洞窟の外に出て深呼吸をした彼女は穏やかな顔で少女を見つめ、焦点の定まっていない瞳をのぞき込むようにしながら少女の頬を両手で包み込み、何かを話しかけていた。
少女を労わるような彼女の優しい表情を見て、(あんな目に遭っていたのにこんな優しい顔をできるなんて、彼女はとても強い人だ)と尊敬の気持ちを持った私が、一瞬だけ空に視線を向けた時にそれは起こってしまった。
耳に響く鈍い音に驚き、とっさに視線を戻した先で、彼女は優しく微笑みを浮かべたまま少女の首の骨を折っていた。
何が起こったのか、彼女のどこにそんな力が残っていたのかといった疑問が頭をよぎる前に反射的に【リカバー】を発動させたけれど、すでに息絶えている少女には何の意味もない。
「………どうして?」
力なく問いかけた私に、彼女は悲し気な瞳を合わせて、ゆっくりと話し出した。
ちょっと重たい話が続いていますが、路線変更ではありませんのでご安心ください!
今日もお読みくださってありがとうございます。
また、明後日もページを開いてもらえますように!




