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自由とは本当に貴重なものらしい。 満喫しよう♪

 私が不用意な発言で掘った墓穴にどっぷりとはまり込んで後悔をしていると、


「アリス殿はそんなに優秀であるのか?」


 不思議そうな王様の声が部屋に響いた。


 みんなにこんなに責められている私に対する皮肉か!? と一瞬だけ考えたけど、


「皆はアリス殿が騙されて利用されることばかりを心配していて、魔物などによって負傷させられることは誰も心配していないようだな?」


 続いた宰相さんの言葉で、単純な疑問だったという事に気が付く。


 さて、なんて答えたものか…。 心配をかけているならきちんと安心してもらいたいけど、具体的にはどう言えばいいのか……。


「剣でオークを一刀両断にするだけの能力は確認が取れております。 また魔力も多いようで、ウインドカッターで飛んでいるハーピーの首を落とすことも出来るようです。

 魔力感知にも長けているので、よほど油断をしていない限りは不意打ちにあうことも少ないでしょう。

 また回復魔法も得意のようでリカバーを連続使用することができます。 即死でない限りはそうそう死ぬこともないかと思われます」


「なんと……っ!」


 どう説明をするか悩んでいる間に、ベルトランギルドマスターが代わりに説明をしてくれた。 私が言うよりもギルドマスターの説明の方が信憑性があるから助かる♪


 ベルトランギルドマスターに続いてサンダリオギルマスも説明に加わる。


「アリスさんは血気に逸るタイプではなく、どちらかと言うと自分を過小評価しがちに見えますので、無謀な相手に挑んで負傷する可能性も低いと思われます」


 サンダリオギルマスは商業ギルドのマスターだから「いっぱい回復薬を持っていけます」とか「狩った魔物をたくさん持って帰れるアイテムボックスがあるので有利です」とか言ってくれるのかと思ったら、意外な切り口からの見方だったな。 どちらにしても、フォローしてもらえるのはありがたい。


「それにクリーンやドライなどの魔法を使いこなし、素晴らしい料理の腕前で、厳しい野営も快適に過ごしてしまいそうですので、上位ランク冒険者からのパーティー加入の誘いは後を絶たないでしょう」


「ほほう。 そこまで優秀であったか!」


 再度言葉を引き継いだベルトランギルドマスターの言ったことに、王様は興味を引かれたらしい。


「行軍中にいかに疲れを残さないように行動するかによって、その後の戦闘意欲に差が生じることは予も理解しておる。 そうか、そんなに優秀であったか」


「それは素晴らしいですな。 アリス殿はどういったパーティーに加入する予定なのですか?」


 王様と宰相さんの認識では、私の戦闘力よりも後方支援能力の方が評価が高いらしい。 でも、


「パーティー加入は考えていません。 しばらくは単独で活動したいと思います」


 ハクとライムがいてくれる以上、私にパーティーメンバーは必要ない。


「なぜか?」

「どうしてですか!?」


 驚いたように聞く王様と宰相さんに、今の素直な気持ちを伝える。


「パーティーに加入すると自由がなくなるからです。 好きな時に討伐や採取に出かけ、好きな時にのんびり宿で寛いだりお出かけしたり従魔と遊んだりしたいので、パーティーメンバーの懐具合を考えて気乗りしない依頼を受けるような、不自由な思いをするのはイヤです」


 随分と勝手なことを言っているな~、とは思いながらも、本音を伝える。


「“自由”…であるか。それは貴重なものであるな。 予には羨ましい言葉だ」


 きっと顰蹙を買うだろうと覚悟をしていたのに、意外にも王様は共感してくれた。宰相さんも、


「“自由”ですか。 望んで簡単に手に入るものではありませんからね。 大きな依頼を達成するばかりが冒険者ではありませんから」


 笑いを滲ませた声で同意してくれる。


 いつかは従魔たちとドラゴンの肉を食べたいけど、別に急ぐわけじゃない。 のんびりと楽しみながら冒険者活動をして、身の丈にあった魔物を倒しながらレベルアップして、ドラゴンにも負けないという確信が持てたら討伐に行くのだ。


「ええ。 いつかは不自由を楽しむ日が来るでしょうが、今は自由を満喫したいのです。 でも、目的が一緒なら、臨時のパーティーに加入することも視野には入れていますよ?

 もちろん、料理を希望されれば有料で出しますし、お風呂代わりのクリーンも有料にする予定です」


 みんなからさんざん注意を受けたので、“有料”というワードは外さない。


「本当!? 本当にパーティーを組んでくれるの?」

「目的が同じならね」


「飯とクリーンの魔法も使ってくれるのか!?」

「有料だよ」


「「「「やったーっ!!」」」」


 アルバロやマルタだけでなく、エミルやイザックまで“万歳”をしていうので笑ってしまった。


 今よりも条件が悪くなるって言っているのに、そんなに喜んでもらえて嬉しいよ~!


 いつかどこかで臨時パーティーを組み、一緒に冒険者活動をするのはとても楽しそうだと思えた。 その日の為にも、私のレベルを上げておかないとね!


 決意にこぶしを握っている私を見ながら、モレーノお父さまとサンダリオギルマスが視線を交わし、


「“自由”か。 きっと楽しいことを引き当てるんだろうな」


「そうですね。 でもきっと、厄介なことも同じだけ引き当てるんでしょうね」


 と、楽しそうに話しているのが聞こえた。


 厄介ごとなんて、全力で回避するに決まってるのにね?


ありがとうございました!

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