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食事会 6

 みんなの料理を食べるペースが少し落ち着いたので、お父さまの買ってくれたワインを楽しむことにした。


 インベントリからチーズと生ハムを取り出して、みんなの様子を見ながらワインの味を楽しんでいると、後ろから声を掛けられる。 振り返ると、セルヒオさんとベルトランギルドマスターがそれぞれワイングラスを片手に微笑んでいた。


「とても美味しいワインですねぇ!」


「そうでしょう? ワインはお父さまが買ってくれたの♪」


 2人にもチーズと生ハムを勧めながら、この町でお世話になったお礼を言っていると、


「俺たちにもくれるか?」


 護衛組も近づいてきた。 


「オーク肉の生ハムと、牧場のチーズか…」

「アリスが作ったチーズはもうないの?」


 いつもなら文句を言うことなく嬉しそうに手を出すのに、今日は不満そうだったので不思議に思いながらインベントリからカッテージチーズを取り出すと、みんな嬉しそうにつまみ始めた。


「牧場のチーズはもう飽きたの?」


「いいや? あ~…、アリスが作ったものの食い納めってヤツだな」


 アルバロが照れくさそうに言うと、マルタが頷きながら、


「このワインもすっごく美味しいんだけどね。 でも、なんだか物足りないのよ」


 と言って少しだけ寂しそうに笑う。 後を引き継ぐようにエミルも、


「今までアリスが色々な料理を作ってくれていたからな。 買ってきたものが味気ないと思うなんて、たったの数日間で贅沢になってしまったものだ…」


 小さく苦笑する。


 みんなは少しバツが悪い顔をしているけど、私は、高いワインを飲みながらそんな風に言ってもらえて嬉しくないわけがない。


「コーヒーフロートでよければあるよ? 後はいつも飲んでるものなら出せるけど」


 ついつい、インベントリを開いてしまう。


「なんだ、これ! 冷たいコーヒーにアイスが乗ってるぞ!」

「凄いわ! コーヒーにこんなに飲み方のバリエーションがあるなんて!」


 護衛組は慣れたもので、出すと同時に手が伸びてくるのでそのまま手渡しするが、セルヒオさんとベルトランギルドマスターはテーブルに置くまで行儀良く待っている。


 ……行儀が良かったのはテーブルに置くまでで、置いた瞬間に2人はグラスを鷲掴み、躊躇することなく口にした。


「これも美味い! 今日の料理はまだ登録をしていないんですよね?」


 セルヒオさんは商業ギルドの職員らしく商売っ気を出して聞いてくるけど、本来の担当は不動産じゃなかったかな?


 セルヒオさんの言うとおりまだ登録していないと答えると、力強く登録を勧められた。 


 でも、明日にはこの町を出る身だし、そもそも今までの登録商品も、情報の確認が取れていなかったりギルド側のレシピができていなかったりで、ほとんどが完了していない状態だ。 良い機会なので、これらの登録はどうなるのかと聞いてみる。


「こちらで仮登録がすんでいる分は、アリスさんの次の落ち着き先にジャスパーのギルド員が出張して行きますよ。 

 本来なら、登録がすむまでは登録申請者には町にいてもらうんですけどね。 今回はこちらから無理をお願いしているので、どこまでだって出向きます。 そこの所はギルマスが張り切って采配していたので安心してください」


「そうですよ。どこまでだって職員を派遣しますので、滞在が決まったら必ずご連絡をお願いします。

 方法はこちらの紙を滞在先のギルドに渡すだけです。アリスさんに手間はかけさせません!」


 話の途中で寄って来たギルマスは、羊皮紙の束をくれる。  


「1,2,3,4……。 多すぎませんか?」


 1枚で十分だろうに、なぜか同じものが10枚もある。 なぜ…? 


 ギルマスは「紛失・破損の時用の予備です」と笑っているけど、なんだか怪しい…。 でも、私が使わなければ良いだけのものだから、気にしないでおこうかな。


「公衆浴場で売る水の話は終わったの?」


 お父さまはまだ水晶の側で話をしているから、とりあえず聞いてみると、


「あまりご兄弟の会話を邪魔すると、陛下の不興を買ってしまいますからね」


 との事だった。 うん、確かに! 納得だ。


「そういえば、類似品を売り出した店にはペナルティがあるって言っていたけど、いきなり何かの罰則が適用されるの?」


 前から気になっていたんだ。 <登録商品>の権利が侵されたらどう対処するのか。


 ちょうど良い機会だから確認をしてみると、


 まずは、登録している商品と同じ商品を見つけたら<使用料>が払われているかを確認する。 支払われていなかったら、本人や周囲への聞き取り調査を行い、過去の分も含めて使用料の請求と罰金の請求を行うらしい。


 登録している商品と類似している商品だった場合は、まずは説明をして、その商品の取り扱いを取りやめるように説得する。 その後、新たに登録商品のレシピを買わなかったり使用料を支払わずに類似商品を扱っていると、ペナルティが課せられるらしい。 


 どんなペナルティーなのかと聞いてみると、サンダリオギルマスとセルヒオさんは人の悪い笑みを浮かべて、


「「2度と表で商売が出来なくなるだけですよ」」


 と揃って答えた。   詳しくは話そうとしない所を見ると、詳しくは聞かない方が良いんだろうな~。


 私も商売をする時には気をつけないと!


ありがとうございました!

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