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試食会 2回目

 試食会会場のキッチンでは、私たち以外の参加者がお腹を空かせて待っていた。


 朝起きてから何も口にしていない人もいたので、「そんな状態では何を食べてもおいしいだろうから、審査が甘くなるんじゃないの?」と言ってみると、「登録候補の料理は2度食べるから大丈夫! 早く料理を!!」と満面の笑みが返された。


 今回はデザートばかりなんだけどな……。 どうしよう?


 とりあえずは、昨夜作っておいたものを朝ごはん組代表のアルバロとモレーノお父様に渡す。


「「メニュー表?」」


「今朝のごはんはルールが2つ。 

 ①食事の前半にデザートを食べようとしないこと 

 ②お残し厳禁

 この2つだけ守って、メニューの中から好きなものを好きなだけ注文してね!」


 “好きなものを好きなだけ”と言うと、みんながキラキラした目で一斉に私を見た。 


 日本でいう『テーブルオーダーバイキング』形式は、気に入ってくれたようだ。


 注文が決まるまでの間に試食組に<マヨネーズ>とマヨネーズを使った料理、ポテトサラダとゆで卵をマヨネーズで和えた卵サンド、飲むヨーグルトを出す。 ギルドが用意していた空のピッチャーにクリーンをかけた水を満たして、どうぞ!と試食をうながした。 


「私たちには“好きなだけ”って言ってくれないのかしら?」


 1品を2皿ずつ出した私にサブマスターのグロリアさんが強請るけど、この人たちには甘い顔をしてはいけないことを学んだので、笑って流しておく。 


「アリス、ハンバーグやボアの柔らかいステーキはないのか…?」


 タイミング良くイザックが声をかけてくれたので、朝ごはん組の方に足を向けるとグロリアさんもそれ以上は何も言わなかったので、きっと“ダメ元”だったんだろうな。


「その2品は今夜出す予定なんだ。 今はそのメニュー表にあるもので我慢してくれる?」


 イザックに答えると、みんなも今メニューにないものは夜に出るのだとあっさりと納得してくれた。


「じゃあ、シチューライスと水。両方鍋ごとくれ」

「誘惑のトーストを10人分」

「オークカツ山盛り」

「天ぷらを… 6人分くらい」

「野菜と肉団子のスープを鍋ごと」

「から揚げを山盛り2皿」

「ふわふわ卵とトマトも2皿な」

「おにぎり各種、5個ずつ……」


 次々に注文される料理をインベントリから出していくと、あっという間にテーブルの上が埋まり、隣のテーブルの上とコンロもいっぱいになった。


「これでこっちはしばらく持つから、アリスはゆっくりと試食会に集中するといい」

「っていうか、アリスのごはんは?」


 ハイペースで注文していたのは私の手間を省くためだったようだ。 ……気遣いに感謝だな。夜ごはんは頑張ろう!


 私はこの後作りながら食べる予定だから気にしないで欲しいと伝えて、試食組の方へ戻った。


 試食席の商業ギルドの幹部たちは、私が戻るのを待ちきれない様子でマヨネーズを入れてあった器を持って立ち上がった。


「アリスさん! これは何ですか!?」


 マヨネーズを何だと聞かれても…。 「調味料。材料と作り方は後で」と簡単に答えながら、ハーピーの手羽元の赤ワイン煮こみとカッテージチーズを取り出す。


「ハーピーの煮込みはすでにあるメニューだと思うので出さなくても良いかと」

「出してください!」


 ああ、うん。やっぱり?


 カッテージチーズはそのまま食べてもおいしいけど、今回は食事メニュー少ないから、トーストも出しておこうかな?


「カッテージチーズを使った誘惑のトーストと、生ハムのトーストはどうする? 前回と同じメニューだから出さなくても良いかな?」


 1皿1万メレの料金が発生するのでお伺いを立ててみると、両方とも2皿ずつ出すことになった。 ……味見用の1皿にしないあたり、商業ギルドはお金持ちだなぁ。


 蜂蜜レモン水を出しながら、「食事メニューはこれで終わり。 次からはデザートメニュー」だと告げると、


「今回はこれだけしかないのか!?  どうして他のメニューも考えて来なかったんだ!?」


 と怒られてしまった。 でも、


「前回の登録から何日も経っていないんだけど? 私は自分たちのごはんを作っただけで、登録の為にレシピを作ってたわけじゃないから」


 今回の試食会だって私が言い出したことじゃない。 そんな風に怒鳴りつけられると、ちょっと……不愉快になる。


「それに<レシピ登録>をする為には、複数のレシピを一度に申請しないといけないなんて知らなかったの。 幹部の皆さんの時間を無駄にさせて申し訳なかったわ。今回の登録はとりや」

「登録は1品から受け付けています!」

「ダメよ! 取り上げないで!!」


 出した料理をしまう為にインベントリを開くと、サンダリオギルマスを始め、料理に手の届く人たちが一斉にお皿を私の手の届かない所に移動させた。


「レシピの流出を防ぐ為に、開発したらすぐに登録するのが常識なので1品から受け付けていますし、ほとんどは1度に1品の登録です!」


「すまん! 勝手に前回と同じ種類と量が出るものだと思い込んでいて…。 朝飯を抜いていて気が立ってたんだ。許してくれ!!」


 私に皿を渡すまいと背中に隠す人、両手で頭の上に掲げる人、アイテムボックスにしまおうとして失敗してあたふたしている人の姿と、さっき怒鳴った人が素直に謝ってくれるのを見て、少し怒りが収まってしまった。


 私もお腹が空いていると、怒りっぽくなるしね。


「アリス! こっちにデザートを出してくれ!」


 私が落ち着くのを見計らったようなタイミングでアルバロに呼ばれて試食席を離れると、今のうちに!とばかりに食べ始める幹部たちの「美味しい」「美味い」の声が聞こえてきて、なし崩し的に許したことになったらしい。


 アルバロが幹部たちに向かって頷いているのが見えたので、試食組を庇っての行動だったらしいが、テーブルの上には料理が残っていないので気が付かないことにしておこう。  食事中に争いごとなんてイヤな思いをみんなにさせてくないしね。


「たっぷりミルクのふわとろトーストを10人分、シュガートーストを5人分、紅茶のクッキーを2皿、りんごのコンポートを8人分、プリンとミルクプリンを10人分ずつ、芋粥を2人分、アーモンドのキャラメルがけを1皿、カフェオレを5杯、アイスカフェオレも3杯、シチュードティーを7杯くれ」


 飲み物が人数と合わないしトーストと芋粥はデザートじゃあないと思うんだけど……、まあ、いいか! 


 テーブルを片付けてからデザートを取り出すと、使っているテーブルと隣のテーブルだけじゃ足りなくて、何品かはモレーノお父さまがアイテムボックスに預かっていた。 ゆっくりと試食会に集中しろってことだね。 感謝を笑顔で伝えてから試食席に戻ると、とっくにお皿は片付けられていて、幹部たちがそわそわしながら私を待っていた。


 ……途中で止めないと伝える代わりに、デザートを取り出す。 最初は紅茶・珈琲・トマトのゼリー3種から! 


「トマトはそのまま、紅茶と珈琲にはこの練乳をかけてね」


「なんと! 素晴らしく美しいデザートだ!」

「<れんにゅう>って素敵! 気に入ったわ!」

「野菜をデザートにするなんて…」


 それぞれの感想を聞きながら、りんごのコンポート、アーモンドのキャラメルがけなどを順番に出し、最後のアイス2種類を皆さんが子供のようににこにこの笑顔で食べ終わるのを楽しい気分で見ていた。


 自分の作ったものをおいしいって言ってもらえるとやっぱり嬉しいね♪


ありがとうございました!

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