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リッチスライムとストレス

 今朝の寝起きは冷た~いミルクから始まった。 


 昨日いっぱい氷を買った上に氷魔法の魔石を貰ったので、寝る前の時間が許す限り、氷をいっぱい使ってたくさんのミルクを冷やしておいたのだ。


「冷えたミルクのすっきりとした甘みは素晴らしいですね!」


 モレーノ裁判官がとても喜んでおかわりを希望してくれたので、昨日のお礼になったかな?とホッとしていると、マルタがオズオズと裁判官に近づいて行き、内緒話を始めた。


 隣にいたウーゴ隊長が深く頷いていたので、マルタにとって悪い話にはならないだろうと判断して朝ごはんの献立を考えていると、今度はハクとライムが私に寄って来た。


「ん? お腹が空いた?」


(ライムに、水か干しりんごをあげてほしいのにゃ!)


(もちろんいいけど、珍しいね? どうしたの?)


(昨日の男にイライラし過ぎたせいで、ライムが少し弱っているのにゃ! アリスの魔力を分けて欲しいのにゃ!)


 ハクの言葉にびっくりしてライムをよく見ると、見た目はいつもと変わらないが確かに少し元気が無いようだ。


 これまでもイライラすることはあったけど、そのつど相手に報復の酸を浴びせてすっきりしていたから体調には影響がなかったが、昨日は離れていた所で私がだっこしていたせいでソラルに何もできなかった。 そのせいで弱ってしまったらしい。


 急いでインベントリから水と干しりんごを2匹分出してあげてから、クリーンを何度かかけてやる。


「アリス? どうしたんだ?」


 ライムのコトが大好きなエミルが気が付いて不思議そうに聞くので、ハクから聞いたことを話し魔力を分けていると言うと、エミルは顔色を変えて怒り出した。


「あのクズ野郎のせいでっ!」


 部屋にいたみんなはいきなり怒り出したエミルに驚いていたが、事情を聞いて慌ててライムを慰め始めた。 


「あの男はもう2度と目の前に現れない」

「次に同じようなことがあったら、ライムの報復の邪魔はしないしさせない」


 クリーンを重ねがけした後にみんなに慰められて、次は邪魔をしないと約束をしてもらったライムは少しずつ元気を取り戻し、


「あの男は近いうちに爵位を返上して偉そうな口は利けなくなる。 私が約束をするから、君は大事なご主人さまの為にも早く元気になりなさい」 


 モレーノ裁判官の言葉で完全復活した。


「ぷきゃ~♪」


「お、元気になったな!」

「良かった良かった!」

「飯にしないか? ライムとハクが食べてるところを見て安心したい」


(賛成にゃ~!)

(ごはんたべる!)


 護衛組が敷物の位置を整えて天板をセットしてくれるのを待ってインベントリから朝ごはんを取り出すと、ウーゴ隊長やモレーノ裁判官までもがお手伝いを始めてくれたので、あっと言う間に準備が整った。 


 今日の朝ごはんも気に入ってくれるかなぁ?









「朝起きたらクリーン魔法でさっぱりいい気分の所に冷えたミルクを出され、可愛い猫とスライムと一緒に囲む朝食はこんなに美味いなんて、俺はまだ夢の中にいるのか…?」


 ウーゴ隊長がボソッと呟いた言葉は席が遠い私にはよく聞こえなかったが、両隣に座っていたマルタとイザックには聞こえていたらしく、2人は頷いたり肩を叩いたりしながら笑っていた。


 今朝のごはんは芋粥と野菜の天ぷらにローストオークのオニオンソース掛け。 甘いものを出していないのでモレーノ裁判官の反応が気になったが、美味しそうにたくさん食べてくれているので安心していると、


「裁判官と隊長は芋粥を“家畜の餌”って思わないんだな?」


 イザックが爆弾を落とした……。


 そうだっ! 忘れていたけど、米も野菜も家畜の餌かお金に余裕のない人の食べるものだと思われていたんだ! 冒険者は気にしないけど、裁判官や隊長はどう思っていたんだろう……?


 不安になって顔色を窺うと、2人はとってもいい笑顔で芋粥のおかわりを要求した。


「アリスさんが作ったものでなければ、私は一生米を食べなかったかもしれません。 アリスさんのお陰で私は人生の何割かを得しましたね」


 モレーノ裁判官は私を見ながらにっこりと笑い、ウーゴ隊長は、


「私は軍人ですからね。米も野菜も以前から食べていましたよ。こんなに美味しいと思ったのは初めてですが」


 と嬉しそうに野菜の天ぷらを口に入れた。


 2人とも柔軟な考えの人で本当に良かった! 安心しながら食事を続けていると、今度はマルタが口を開いた。


「ねえ、裁判官! アイツの爵位を返上させるって本当なの?」


 マルタが芋粥を大盛りでおかわりしながら聞くと、みんなが一斉に裁判官に注目したので、賑やかだった部屋がとても静かになった。


 いくらなんでも貴族の爵位を返上させるなんてこと、裁判所の管轄じゃないだろうと思いながら返事を待っていると、


「もちろん」


 モレーノ裁判官はあっさりと肯定してしまった。


「さっきマルタが何かを言っていたようだが、それも関係あるのか? 何を話していたんだ?」


「あ、それは…」


 アルバロもさっきのマルタと裁判官と隊長の内緒話に気が付いていたらしく、関連があるのかと気になったらしい。マルタは私の顔を見ながら言いにくそうにしていたが、アルバロに促されて諦めたように話し始めた。


「アイツはアリスを女性としても侮辱したから、それなりの罰を受けさせて欲しいってお願いしただけ」


「ああ、伽がどうたらってやつな…。 チョン切ってやろうかと思ったぜ」


 その場にいた全員がアルバロの言葉に頷くと、モレーノ裁判官は表情も変えずに、


「貴族が平民の女性を伽に所望することは珍しいことじゃない。 それだけでは罪に問えないが、ソラル子爵は私との誓約を破った。 爵位を返上させるには十分だな。

 アリスさんを侮辱したことは、金銭で責任を取らせるよ」


 と言い切った。 護衛組と隊長が納得顔で頷いているので、この国の裁判官の立場は貴族よりも上らしい。 


 ………これって、異世界あるあるなのかな?  爵位をどうこうするのって、裁判所じゃなくて王家の仕事じゃないの!?


 納得は出来ないけど、これ以上は考えても仕方がないのでそんなものだと思うことにした。


 今回のソラルの件では、リッチスライムが思っていた以上に繊細だという事がわかっただけで十分だ。 今後は気をつけることにしよう!


ありがとうございました!

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