表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

202/763

氷魔法入手!

「まだ子供じゃねぇか」

「人違いじゃないの?」

「でも、アルバロ達が護衛をしているぞ」

「噂どおりなら、あんな壁際で大人しくしているわけがない」

「か、可愛いじゃないか…!」


 冒険者ギルドでエミルが氷魔法を使う元・冒険者の2人宛に依頼を出してくれている間、私は冒険者たちの見世物になっていた。


 依頼ボードを見ながら物価の確認をしていた時は少し見られているかな?程度だった視線は、マルタが私の名前を呼んだ瞬間に激増し、今に至る。  


 ……居心地が悪いにも程がある。


 見かねたハクとライムが腕に飛び込んで来てくれたので、意識を切り替えて遠慮なく力いっぱいもふり倒して安らぎを感じていると、エミルと一緒に受付さんが来て、明日の氷の買い取りにギルドの訓練場を無料で使ってもいいと言ってくれた。 


 そのかわりに見物人が出るかもと言われたが、今朝もわざわざ町の外まで見物に来た人たちがいたので気にしない。


 ありがたく、訓練場を使わせてもらうことにした。









 夕食まではまだ時間があるが、町をぶらぶらする気分でもなかったので拠点に戻ってくると、商業ギルドのサブマスターとファビオの父親が護衛と一緒に待っていた。


「昨日はギルドからのお詫びだったけど、今日持ってきたのは集まっていた幹部一同とミゲルからのお詫びの気持ちなの。気に入ったのがあれば受け取って?」


 テーブルの上に出されたのは、8つの魔石。


「【ファイヤーボール】【ファイヤーアロー】【アイスボール】【アイスニードル】【ウォーターボール】【ウォーターランス】【アースウォール】【アースシェイク】…。 魔法っていろいろあるんだ~。 で、ミゲルって誰?」


「私です。薬品関係を担当しています。ご挨拶が遅くなりまして……。 氷魔法に興味があるようなので用意してみました」


「知っていると思うけど私はグロリアよ。よろしくね、お嬢さん!」


 ファビオの父親はミゲル、サブマスターはグロリアというらしい。 あまりよろしくしたくないので、


「……アリスよ」


 名乗るだけにしておいたけど、2人はそんなことよりも私が気に入った魔石があるかどうかの方が大切らしく、一つ一つの魔法の効果を詳しく説明してくれる。


「全部貰っちゃえば?」

(マルタ、偉いにゃ!)

(もらっちゃえ!)


 マルタの一言に従魔たちはご機嫌で追従するが、


「【ファイヤーボール】と【ウォーターボール】はいらないんじゃない? それよりも、野営用に灯かりの魔法が欲しいな」


 私が希望を言うと、あからさまにがっかりした顔になる。


「アリス…、こういう時は全部受け取った上で、希望を上乗せするんだ」


 エミルがため息を吐きながら教えてくれるが、同系統の魔法で弱いものをわざわざ手に入れる理由がわからない。


 どうやって使いこなすのかと聞くと、


「「「売るんだ!」」」

「売るの!」


 護衛組が声を揃えて噛み付くように言い、従魔たちが護衛組の周りを飛び跳ねて同意を表す。


 サブマスターとミゲルも苦笑しながら頷いているので、私の認識が甘かったらしい。


 反省しながら、改めて【灯かりの魔法】をお願いしようとすると、


「灯かりの魔法だと生活魔法の【ライト】ですね? どうぞ!」


 ミゲルが魔石を1つ差し出した。


 ミゲルの担当する薬師に夜に急ぎの製薬を頼むことがあるので、新規取引の薬師が持っていなかった時に備えて常にいくつかストックしているらしい。


 今回はいらない魔石は省いて【ライト】の魔石を追加でもらうことにした。  


 ……貰いすぎるのは“借り”になる気がして嫌なんだ。 私の気持ちに気が付いたのか2人は少し残念そうな顔をしていたが、その顔を見て、私はこれで良かったんだと安心した。


 改めてお礼を言い2人を見送ろうとすると、エミルが2人を引き止めた。


「他の魔石はともかく、氷魔法とライトの魔法はアリスが欲しがっていたものだろう? 礼をしてやってもいいんじゃないか?」


 エミルがいたずらっぽく言うと、マルタが、


「そうね! 何かを登録してあげたら?」


 と私の肩を叩く。   


 忘れていたけど、護衛組は優秀なマネージャーでもあったんだ。 登録することが、私の利益につながると判断しているらしく、アルバロとイザックも大きく頷いている。


 サブマスターとミゲル、従魔たちの期待に輝いた目を見ないフリするのは難しく、何かを登録することにした。









 シャーベットを登録希望のサブマスター

 薬を登録希望のミゲル


 この2人の登録商品決定戦は、


 プレゼンテーション戦 = 引き分け

 護衛組を合わせた多数決 = 引き分け

 くじ引き勝負 = どっちが先に引くかでもめて勝負にならず


 で、最終的に私に一任された。


「氷魔法の魔石とライトの魔石を用意してくれたのがミゲルさんのようだから、今回は薬にしよう」


 薬を選んだ瞬間、ミゲルはガッツポーズで喜びを噛み締め、サブマスターはしゃがみこんで頭を抱えながら悔しがっているけど、私が今一番欲しかったのは氷魔法だったしこれが妥当だろう。


 ミゲルは薬を4種類2本ずつとレシピを受け取ると大切そうにアイテムボックスにしまい、スキップでもしそうな浮かれぶりを見せながらギルドへ戻って行った。


 一緒に戻って行ったサブマスターのふくれっ面は、見なかったことにした。


ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ