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試食会 4

「ボアステーキの柔らかさは衝撃だった! これは間違いなく新しい調理法だろう」

「お肉に掛かっていたソースとサラダにかかっていたソースは素晴らしく美味しかったわ! 登録の確認を取りましょう」


 “シャカシャカシャカシャカ……。 パタン”


「しちゅーどティーは登録確定だろうが、かふぇおれは…微妙だな。 類似があるかもしれん」

「トマトとたまごのふわふわ焼きはどこかで食べたような気がする」

「バタークッキーとプレーンクッキーは出回っているが、紅茶の葉を入れたクッキーは派生レシピとして登録できるだろう」


 “シャカシャカシャカシャカ……。 パタン”


「ハムとチーズのトーストは定番ですが、シュガーバタートーストは派生で登録できそうです。 たっぷりミルクのふわとろトーストはほぼ間違いなく登録ですね。 素晴らしい発想だ!」

「ホワイトシチューは北の方で登録があったような気がしますね。 シチューライスは微妙ですがパンシチューは派生で登録できるでしょう」

「ハーピーの手羽元の塩コショウ焼きとオークの串焼きも美味かったですな~。 屋台のものと一味違う。 ボア串のタレ焼きの<タレ>は登録できそうですな」

「はんばーぐ! あれは画期的なものですな! 派生のチーズ乗せや卵乗せ、大根おろし乗せはもちろん、はんばーがーの扱いも慎重にしなければ! はんばーがーを新メニューで登録をしてチーズばーがーを派生に…、てりやきばーがーとフィッシュばーがーの扱いをどうするか……。 悩ましいですな」

「てりやきハーピーが登録になるでしょうから、てりやきばーがーははんばーがーの派生にしてはどうでしょう」


 “カチャ、……パタン”


「干しりんごは他国で流通していますが、ドライアップルは初めて見ました」

「生キャラメルは素晴らしい発想だわ!!  フルーツヨーグルトは派生で登録できそうね?」


 “シャカシャカシャカシャカ……。 パタン”


「てんぷらはレシピとしての登録だな。 他にもいろいろな食材で楽しめそうだ」


 “シャカシャカシャカシャカ…”


「あの! アリスさん?」


「なんですか?」


 ギルマスの呼ぶ声に振り返ってみると、皆さんの視線が私に集まっていた。


 ギルマスに「検討に時間がかかるから、その間キッチンを自由に使っても構わない」と言われて本当に自由に使っていたんだけど、うるさかったかな?


「何をしているんですか?」


 ギルマスが近寄ってきて、手元を覗き込みながら聞いた。


「ギルマスのお言葉に甘えて明日の昼ごはんを作っているんですが、うるさかったですか?」


 “パタン”


 持っていたものを冷凍庫にしまいながら答えると、皆さんの視線が冷凍庫に釘付けになった。 オーブンからパンとチーズの焼けるいい香りがしてきたので様子を見に行く。 チーズがぐつぐつしていていい感じだ♪


「新作ね!?」

「新作ですね!?」


 トーストをインベントリにしまっていると、ギルマスだけじゃなくサブマスターとラファエルさんまでが駆け寄ってくる。


「アリスさん、今作っているものは両方とも先ほどの試食に出してもらっていませんね? なぜですか!?」


 席にいた皆さんもぞろぞろと近づいて来て、ギルマスが真剣な顔で問い詰めるように聞くけど……、


「トーストは具材を変えただけだから珍しくないものだし、シャーベットは冷凍庫を持っていないから作れなかっただけですよ」


 話を止めて集まってくるようなことじゃない。


 これで納得して席に戻るだろうと思って冷凍庫へ向かおうとすると、サブマスターに手を掴まれて何かを握らされた。


「…小銀貨?」


「食べたいの! 1枚だけでいいから、ね?」


 トースト1枚に1万メレって、どんな金銭感覚なの……。


 断ろうとしたら、“ぎゅううううううっ”と手を握り締めて、


「あれ、絶対に美味しいわよね!? 食べてみたいの~~~っ!」


 と駄々っ子のようなおねだりを始めた。 ……困るけど、ちょっとだけ可愛い。


「検討はもう終わったんですか?」


 終わっていないことはわかっているが、一応チクッとだけ言っておく。 遅くなると、晩ごはんの時間も遅くなっちゃうからね。


「今、検討中です! だからこそ新作を見逃すわけにはいきません! 是非、これも登録候補に入れてくださいっ!」


 サブマスターの代わりにギルマスが答えて、その周りで幹部たちが大きく何度も頷いている。


 うかつに新作を作った私が悪いと反省しながらインベントリを開き、半分に切ったトーストを人数分お皿に乗せた。


「サブマスター、お金は後でまとめて支払ってもらいますからこれはお返しします。 クリーンを掛けなおすので手を出してください」


 2度目のクリーンはサービスにしておく。


「なんと言うか、これは美味しい!」

「カリッ、とろ~りの食感がクセになるな」

「一口サイズなんて、足りないわ……!」

「登録候補にすればいいんだ! そうしたらまた作ってもらえるぞ!!」


 皆さんが口々に褒めたり悔しがっているのを、調理台の陰で遊んでいた2匹が見つめていた。


「ハク、ライム! 新作だよ~。味見する?」


 お皿に1枚ずつ乗せながら呼ぶと、勢いよく足元に飛び掛ってきた。


「後回しになってごめんね? お詫びに1枚ずつあげるから許してね」


 謝りながら2匹にクリーンを掛け直して調理台に乗せると、


「……ズルイ」


 と呟く声が聞こえたけど、気にしない。


 今まで大人しく待っていたご褒美だからね。 た~んとお食べ!


「いただきます♪」

((いただきま~す)にゃ!)


「ん~~っ!」

(おいしいにゃ~!)

(おいしい~!)


 思った通りの味と従魔たちの反応に満足していると、ギルマスがお行儀悪く、指についた蜂蜜を舐めながら料理名を尋ねた。


「これは悪……、<誘惑のトースト>といいます。 材料も少なくて調理も簡単ですが、とっても危険な誘惑なので、負けると簡単に太ります」


 諦め悪くトーストのおかわりをねだっていた数人が“太る”と告げた途端に呻き出すのがおもしろかった。


ありがとうございました!

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