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試食会の前哨戦 3

「ほう。 からあげとはそんなに美味しいものでしたか!」


 宣言どおりにお昼前に裁判所に現れたサンダリオギルマスは旺盛な食欲を見せているけど、この後の試食会には不参加なのかな? 


「ああ。 あっさりした芋粥とじゅわっと美味いから揚げを食いすぎたせいで、その後の味見があんまりできなかったくらいだ」


「アルバロは残念だったわね~。 あたしはお粥を2回しかおかわりしなかったからいっぱい味見できたわよ」


 得意げに“自重した”みたいに言ってるけど、マルタも十分食べていたよ?  昨夜は味見と称して寝る直前まで食べ続けていたのに、みんな寝起きからしっかり食べててびっくりしたんだから。


「チーズバーガーおかわりしていいか?」


「ハーピーの照り焼きを挟んだバージョンもあるし、ハンバーグだけごはんと一緒に出すこともできるけどどうする?」


「米と食いたい!」


 イザックは自分がリクエストしたハンバーグをいくつ食べてもいいほど気に入っているらしく、今度は大根おろしを乗せたハンバーグとごはんをもりもりと食べてるし、


「フルーツヨーグルトはその日の気分でいろいろな味になりそうですね」


「そうですね。 暑くなって食欲が落ちることがあれば、すっぱい系の果物とあわせてもいいですし、トマトを入れても美味しいですよ」


 モレーノ裁判官は、出したものを全部食べた上でフルーツヨーグルトのおかわり中だ。 


 エミルは従魔たちの面倒を見てくれながら、ハーピーの照り焼きとアイスカフェオレをおかわりしているし、みんなの胃袋はかなり頑丈に出来ているようだ。


「アリスさん! からあげとやらも、この昼食のメニューも、ちゃんと試食会に出してくださいね?」


「ええ、フルーツヨーグルト以外は出す予定ですよ。 …ギルマスは試食会には不参加ですか?」


 ハンバーガーを食べ終わり、チーズバーガーをおかわりしているギルマスに聞いてみると、


「私が参加しなくてどうするんですか! 当然参加しますとも!! フルーツヨーグルトも出してくださいね」


 と力強く宣言する。


「フルーツヨーグルトは別に珍しいものでもないでしょう?」


 すでにある物は極力避ける方向の方がいいだろうと言ってみてもギルマスの意見は変わらなかった。


「何を言っているんですか。 これはしっかりとメニュー登録するべきですよ。 蜂蜜や砂糖を入れて出す店はあっても、フルーツを入れて一品として出している店はありませんからね。

 で、何品の予定ですか?」


「ハンバーグとハンバーガーといったように別々に出すと30品くらいですが……。

 ハンバーグだけ作って“パンに挟んでもおいしい”とか、ハンバーガーだけを作って“チーズを足したり、別のものを挟んでもおいしい”とかの話をするだけにすると、10品くらいに減らせますよ」


 モレーノ裁判官が3杯目のフルーツヨーグルトを食べ終わったので、デザートの生キャラメルをテーブルの中央に置きながら提案すると、護衛組と視線だけで会話をしていたギルマスは、


「そんなにあるのですか!? 全てです! アリスさんが作ったものを一通り出していただきたい。 減らそうなんて思わなくて結構! すでに出回っているメニューであっても、アリスさんが作ったものは全て出してください。

 あと、これは何ですか!? こんなものを最後に隠してるなんて! 

 あっと言う間に口の中で溶けてしまう! こんなに甘く美味しい物がすぐになくなってしまうなんて、悔しくてならない!」


「すっと溶けてしまう食感が贅沢ですね。 口の中はまだ甘いのに、すぐに次を口に入れたくなってしまう。 アリスさんは素晴らしいものを作ってくれました!」


 ギルマスは生キャラメルも気に入ったらしく、幸せそうに食べ続けているモレーノ裁判官と一緒に「これは売れる!」と頷き合っている。


 ギルマス、そんなに食べてて本当に大丈夫……? 


 お腹いっぱいの状態で試食して「思っていたよりもおいしくない」とか言ったら、うちの従魔たちが商業ギルドで暴れちゃうかも知れないよ?












「受付の職員からアリスさんにお礼を言付かっていますよ」


 始まりはモレーノ裁判官の一言だった。


 受付さんに渡しておいた植物活性薬が効いて芝生が元気になったという伝言だったけど、今日のお昼ごはんを食べる前に自分の足で確認をしているから「気持ちよくなってよかったな。わざわざ律儀だな」と思うだけだったのに、


「【植物活性薬】とは何のことですか?」


 サンダリオギルマスが興味をもったのだ。


 植物活性薬自体はもともとこの世界にあったもので珍しくはなかったのだが、旅をしていた私がどうして15本も持っていたのかという話から、私が作ったものだという話になると、ギルマスの目がさっきまでとは別の輝き方をし始めた。


「アリスさんは薬まで作れるのですか!? 他にはどんなものが作れますか?」


 初めは掴みかからんばかりの勢いが怖かったけど、自分の行動に気が付いたギルマスが少し落ち着いてくれたので素直に増血薬と解毒薬と初級ポーションだけだと話すと、


「初級ポーションと解毒薬と増血薬と植物活性薬の4種類だけでも十分素晴らしいですよ! 治癒魔法だけではなく薬も作れて戦闘も出来る逸材が最初に登録したのが<治癒士ギルド>でも<冒険者ギルド>でもなく、我が<商業ギルド・ジャスパー支部>での商人登録だなんて、鼻が高いですよ!」


 本当に嬉しそうな顔で笑いだす。 得意そうに笑っているだけだったのに、そこにモレーノ裁判官が、


「サンダリオ。 受付の話では、アリスさんの植物活性薬は他の植物活性薬とは効き目が違うようですよ」


 と言った瞬間に、またギルマスの目が輝き始めた。


「アリスさん……? どういう風に違うのか、他の薬品も含めて説明をしてもらえますね?」


 面倒なことになるのがイヤで視線をそらせると、興味津々な顔をした護衛組と目が合い、逃げづらくなってしまった。


(サンダリオが欲しがったら、高く売るのにゃ!)


 ハクまでギルマス側についてしまうと、もう素直に話した方が話が早い。


 ついでに薬も登録しようかな~?


ありがとうございました!

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