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アウドムラの牧場

「おっきい…」


 裏門を出て、2kmほどの所に、アウドムラの牧場はあった。


 アウドムラは普通の牛の3倍ほどの大きさがあり、アウドムラに合わせて牛舎も、牧場を囲う柵も、何もかもが大きくてびっくりした。


「ねえちゃんが、モレーノさまの紹介のアリスって人か?」


「うん、私がアリスよ。 あなたは?」


「フェルナン。この牧場の息子だよ! 母さんに、お客さんを案内してこいって言われたんだ。 明日の朝まで待てば俺が配達してやったのに、ねえちゃんもせっかちだな~ 」


 フェルナンと名乗った少年は笑いながら、私の手を取り母屋に案内してくれる。


「モレーノ裁判官に飲ませてもらったミルクがすっごく美味しかったの♪ 明日の朝、起きたときに飲みたくて。 迷惑だった?」


「俺たちの忙しくない時間に来て大量に買ってくれるなら、大丈夫だ! でも、いきなり来るのはダメだぞ?」


「うん、わかった! 今日はよろしくね!」


「おう! ………なぁ、ねえちゃん。後ろのおっちゃん達は、さっきから何ニヤニヤ笑ってんだ? なんか感じ悪いぞ!」


「ああ、あんまり気にしなくていいよ」


 私が口調を変えたのを面白がっているだけだから……。


「きっと、おじさん達にしかわからない楽しさがあるんだよ! 放っておこう?」


「そっか、おっちゃん達だもんな!」


「うん、おじさん達だから!」


 あてつけに“おじさん”を連呼して、憂さを晴らす。


「わたしはおっさんじゃないぞ…」

「アリス、俺たちが悪かったから、おじさんは止めてくれ」

「あたしはまだ若いわよ?」

「微笑ましかっただけなのに…。おっちゃん…」


 後ろでぶちぶち文句を言ってるけど、気にしな~い♪


 ハクやライムには自分で“おじちゃん”って言ってるくせにね?










 母屋ではフェルナン君のお母さんが待っていて、早速商談が始まった。


 モレーノ裁判官のお陰で味の確認は出来ているから話はサクサクと進んで、今搾っているミルクを1ℓ1,500メレで50ℓ譲ってもらうことで話は付いた。 本来は、1ℓ1,600メレだけど、配達の手間の分を引いてもらえて、5,000メレの値引きだ。 


 ミルク缶ごと譲って欲しいとお願いをしたけど、配達で使うから無理だと断られ、代わりにミルク缶を扱っている問屋を紹介してもらった。 早く買いに行ってミルクを複製しないと、すぐに足りなくなりそうだ。


「ねえちゃん達、これ食ってみろ! 美味いぞ~♪」


 ミルクを持ってきてくれるのを待っている間に、フェルナン君がチーズとバターとヨーグルトを持って来た。


「気に入ったら買ってくれよな!」


 なかなか商売上手なフェルナン君は、この牧場の跡取りらしい。


「頼もしいですね♪」


 お母さんに声を掛けると、小さな声だけど嬉しそうに、


「自慢なの」


 と呟いた。 お母さんの声が聞こえたフェルナン君も嬉しそうだ♪


「フェルナン君、どれも本当に美味しそうだね! お母さん、組み合わせで変わる味の確認をしたいから、ここで簡単な調理をしてもいいですか?」


 ずうずうしいかな? と思いながらお母さんに聞いてみると、フェルナン君があっさりと頷いてくれた。


「ねえちゃんは面白いことを言うな~。 俺や母さんにも食わしてくれるか?」


「もちろん! でも、簡単なものばかりだよ?」


 返事をした後で、作ってもいいかな?とお母さんの方を見てみると、お母さんも笑って、


「良かったら台所を使う?」 


 と申し出てくれたので、遠慮なく、使わせてもらうことにした。


 チーズはモッツアレラとゴーダの2種類。 それぞれを一口大にカットして生ハムで巻いたものと、スライスしたトマトの上に炙ったチーズを乗せてオリーブオイルを掛けたものにしよう。 オリーブオイルを買ってて良かった♪


 バターは素直にトーストに塗ったものと、じゃがバターにしよう。


 ヨーグルトには蜂蜜をかけたものと、カットして皮を剥いた果物を入れたもの。


 簡単なものばかりだけど、味を見るだけだから十分だ。


 皆の所に戻ってテーブルにお皿を並べると、歓声と一緒に次々と手が伸びてくる。 


 私は、まずはそのまま。 次に他の食材と合わせたものを、ゆっくりと味わっていると、


「美味かった! さすが俺ん()の自信作!」


 と元気な声がした。


 慌ててテーブルと見てみると、お皿がほぼ空になっている。


「ええっ!? 私、まだ味見してないのがあるのに! 多めに作ったのにどうして~!?」


「アリス、ごめん! つい!」

「美味かったぞ! ねえちゃん、食うの遅いな~」

(どれもおいしかったにゃ!)

(また、たべたい♪)


 あっと言う間に皆に食べ尽くされたらしい。 そっかぁ…、美味しかったのかぁ。 じゃあ、なくなるのも仕方がないのかな…? ちょっと悔しいけど!!


「美味しかったから味わってたんだよ! もう、仕方がないから買うよ!

 チーズはそれぞれ5kgずつ、バターは……、塩を入れずに作ったものはないの?」


「あるけど、日持ちが短くなるぞ?」


「うん、大丈夫。 じゃあ、バターも塩入りと塩なしの両方を5kgずつ、ヨーグルトは10㎏、売ってもらおうかな」


「おう! いっぱい買ってくれるんだな! さてはねえちゃん、金持ちか?」


「これからお金持ちになるのよ。 その為に、おいしいものをいっぱい食べるの!」


 フェルナン君とおしゃべりしていると、護衛組がお母さんの周りに集まり始めた。


「バターを400g」

「ゴーダを500g」


 と言った声が聞こえるので、護衛組も買い物をするみたいだ。 


 フェルナン君の得意そうな顔が可愛いな♪


ありがとうございました!

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