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寄り道 1

 ギルマスに、ギルド(ここ)の鑑定士さんにお世話になったのでお礼をしたいと伝えると、わざわざ鑑定士さんの所まで案内してくれた。


 鑑定士さんに丁寧にお礼を言ってからバスケットを渡すと、ラフトマトが大好物だったらしく、とても喜んで受け取ってくれ、見ていたコンラートさんが「本当に美味そうなんだよな」と小さく呟いていたのがおかしかった。 お家で奥さまと一緒に食べてね!


 登録申請が済んだので首領の家に戻ろうと別れの挨拶をすると、ギルマスに突然、


「アリスさん、お金は好きですか?」


 と聞かれた。 何の冗談かと思ったが、ギルマスの表情かおが思った以上に真剣だったので、


「ええ、もちろん! 大好きです♪」


 と答えると、愉快そうに笑い出す。


 別れ際にするには変な質問だし、護衛組も一緒に笑っているのがどうにも解せないなぁ…。











 裁判所に行くコンラートさんと別れ、首領の家へ向かっていると、後ろからアルバロを呼ぶ声がした。


 振り向くと、ベニートさんが息を切らしながら走って来る。


「アルバロ! アリスさん! 返事を預かってきたぞ!」


「おう、ご苦労さん!」

「ありがとうございます!」


 ベニートさんから手紙を受け取り、アルバロが依頼完了のサインをしてくれたのを確認して、インベントリからバスケットを取り出した。


「ベニートさん、先日は鑑定士さんを呼んでいただいてありがとうございました! 気持ちだけのお礼ですが、受け取ってください」


「ああ? ああ、あれは俺たちにも関係あることだったからな。礼なんていらねぇよ。 礼なら商業ギルドの鑑定士にしてやってくれ」


「鑑定士さんにもお礼を伝えて、これと同じものをお渡ししています。 だから、これはベニートさんに」


 最初は受け取ろうとしなかったベニートさんも、商業ギルドの鑑定士さんにもきちんとお礼をしたことを伝えると、


「そうか…。 ありがとうな! 美味そうなオレンジだ!」


 嬉しそうに受け取ってくれた。 ベニートさんはオレンジが大好きだったらしく、皮ごと齧りながら冒険者ギルドへ戻って行く。 


 必要な所へのお礼が済んで一安心だ^^










 手紙の返事は、「モレーノ裁判官の紹介なら無下にはできない。 16時~17時30分の間に牧場まで来るならミルクを譲る」とある。  やった! ミルクが手に入る♪


「ここからなら時間に少し余裕があるわね。 油屋が、裏門への道を少し遠回りするだけの所にあるから行ってみない?」


 返事を読んだマルタの提案に乗り油屋に向かっていると、どこからかコーヒーのいい香りが流れてきた。


「いい香り…」


「ん? ああ、少し先にコーヒー豆を扱う店があるんだ。 ……寄っていいか?」


「もちろん♪」


 ほんの少しだけ、足取りが軽く見えるイザックの後をわくわくしながら付いて行くと、赤い屋根のこじんまりとしたお店があった。 喫茶店ではなくコーヒー豆を販売する店のようだ。


「イザック、いい日に来たな! おまえの好きそうな豆がある」


「飲ませろ」


 イザックの行きつけの店だったらしく、店主はイザックの顔を見るのとほぼ同時に豆を挽き始めていた。


 置いている豆の味見をさせてくれるのは、嬉しい♪


「どうぞ」


 コーヒーの入った小さなカップを人数分出してくれると、店主は少し下がった位置で腕を組み、視線をハクとライムに固定した。  …皆の反応よりウチの従魔が気になるなんて、いい趣味してる♪


「うん、悪くない。 200gくれ」


 私には少し酸っぱく感じられたが、イザックは気に入ったらしい。 お子様味覚の甘党だと思っていたから意外だ。


「店主さん、酸味が少ない豆で、深煎りのものはありますか?」


「お嬢ちゃんは酸味が苦手かい?  じゃあ、これを試してくれ」


 店主が淹れてくれたコーヒーは少し苦味を強く感じたけど、多分これくらいでちょうど良い。


「500gください。 あと、それは売り物ですか?」


 店の隅に置いてある、コーヒーミルやドリップポットを指差しながら聞くと、店主は嬉しそうに頷いた。


「ああ。少しばかり割高だが、モノはいいものばかりだぞ!」


「では、コーヒーを淹れるための道具も一式。 3杯~5杯用のものをください」


「……お嬢ちゃん、うちで買ってくれるのは嬉しいが、一式揃えると高くなるぞ?  南区に大きい商店がある。種類も多いし、値段も抑えめだ」


 店主は少し商売っ気に欠けるようで、安く揃える為に余所の店を紹介してくれた。 良心的な店だな♪


「品質が良いのはどっちですか?」


「俺んとこだ!」


 店主はこだわって仕入れたのがわかるような、自信に満ちた笑顔で胸を張る。


「では、こちらで買います」


 売っておくれ!と笑顔を向けると店主も嬉しそうな笑顔になり、必要なものを揃えてくれる。


「コーヒーミル、ドリップポット、ドリッパー、ペーパーフィルター30枚、コーヒーメジャーにサーバーだな。 

 いらないものはあるか? コーヒーメジャーは普通のスプーンでも代用できるぞ」


「フィルターだけ100枚で。全部ください」


「そうか…。 よし、372,000メレだが、350,000メレでいい。それに豆が500gで」

「豆は俺が払う。1kgくれ」


「「イザック?」」


「自分で払いますよ?」

「大量買いすると品質が落ちるぞ。知ってるだろう?」


 いや、店主。そうじゃない。 イザックに払ってもらう理由がないんだよ!


「アリスのアイテムボックスなら大丈夫だから、安心しろ。 

 アリス、たまには俺も、ハクとライムに懐かれたいんだ! 払わせろ」

「んにゃ~ん♪」

「ぷっきゅ~ん♪」


「「ああっ!」」


 イザックが「払わせろ」と言い終わる前に、ハクとライムがイザックに向かって飛び込んでいる。 振られた格好のアルバロとエミルが恨めしそうに私を見るけど、そんなの知らないよ~!  


 私がアルバロとエミルに気を取られている間に、イザックはさっさと豆の支払いを終え、ハクとライムにすりすり・ぺろぺろされてご満悦だ。 


 うちの従魔たちはどこを目指しているんだろう…?


 イザックにお礼を言って店主にお金を支払うと、店主は1つずつ使い方を説明しながら商品を渡してくれる。


 店主いち押しのコーヒーミルは、ねじを締めたり緩めたりすることで、豆の挽き具合を調節できる優れものだった。これが値段を跳ね上げたらしい。 納得だ♪


ありがとうございました!

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