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不思議な光景

 ハクが自然に防塵結界を張ってくれたので、安心して昼食の準備を始める。


 護衛組は自分たちの食器を出してから芝生を楽しみ、モレーノ裁判官を誘って従魔たちと遊び始めた。 冒険者の順応力は高いな^^  


 でも、ハクとライムは芝生を転がるなら、クリーンは後で良かったんじゃないかな~?  綺麗好きなのは良いことだけど♪


 楽しそうな従魔たちを眺めながら、自分にクリーンを掛けてブーツを脱ぐと、帆布の上からでも芝生は踏み心地がよくて、自然と頬が緩んだ。


 自分たちと裁判官の分の食器を出して、2つの水差しにりんご水をたっぷり注ぐ。


 昨夜作ったおむすびとサンドイッチは、全部出したら多すぎるかな?  足りなければ後から出せばいいか。


 おむすび2種類を3つずつと、サンドイッチ3種類を3つずつをそれぞれを皿に盛り直すと、


(それだけじゃ足りないにゃ! おむすびもサンドイッチも、もっと出すにゃ~!!)


 ハクからダメ出しされたので、昨夜作った分を全部出す。 これでおかずを出すと多いかな? スマイルカットしておいたオレンジと木苺のお皿を天板の真ん中に置いて、後は様子を見ながらにしよう。


 出来ているものをインベントリから出すだけだから、準備はあっと言う間だ。


「できましたよーっ」


 声を掛けると一斉にこちらを向き、嬉しそうな笑顔を見せてくれる。 保育園の保母さんの気分だな♪


 戻ってきた順番に【クリーン】を掛けて座ってもらうと、勝手がわかっている護衛組は、皆の分のりんご水を注ぎ美味しそうに飲み始めた。


「おいしいですねぇ! 芝生も心地よくて、すっかり童心に返ってしまいましたよ」


 モレーノ裁判官の口にも合ったらしく、嬉しそうに飲んでくれる。


「昨夜と同じものでよかったらスープも出せますが…?」


 飽きちゃうかな?と思いながら玉子スープの鍋を出すと、イザックがよそってくれた。 同じものでもいいらしい。


「やっぱり美味しそう!」


 用意したものを見て、喜んでくれているマルタの横でハクが不満顔だ。


「あれ? ハク、不満顔だね?」


(おかずはないのにゃ?)


(え? 食べられるの!?)


 びっくりして確認すると、


(食べるにゃ!)

(たべる~!)


 2匹揃ってのアピールだ。 自身の体積以上に入るハクのお腹は、一体どうなっているのか…。 いつもながら、不思議で仕方ない。


「なんだ、ハクはどうしたんだ?」


「どうやらおかずが出ていないことが不満のようですね。 モレーノ裁判官、魚とオークと玉子とホーンラビットだとどれがいいですか?」


 今日のゲストにリクエストを聞いてみる。


「私ですか? ふむ…。 魚と玉子で迷いますね」


(両方にゃ~!)

(りょうほう!)


 出たっ! 食いしん坊たち!


(あまりいっぱい出しても、残っちゃうともったいないよ? どっちかにしておこう?)


 片方にしてもらおうと、説得してみても、


(嫌にゃ! 両方食べるのにゃ! 今日は稼いだから、いっぱい食べるのにゃ~!!)

(ぼく、のこさないよ?)


 今日は従魔たちに分があるようだ。


「うちの仔たちが“両方出せ”ってアピールしてるので、両方出しますね」


「んにゃん♪」

「ぷっきゅう~♪」


 裁判官が答えを出す前に、ハクとライムが裁判官に向かって可愛く鳴いた。 


 おねだり上手めっ! 






「ふわっふわの甘い玉子にトマトって、こんなに合うんだな!」

「こんなにたっぷりの生ハムを挟むなんて、すごく贅沢だわ…。 チーズとも合う♪」

「この握り飯を持って討伐に行けたらなぁ…」

「これも全部アリスが作ったのか……。 アリス、今すぐわたしと婚約してくれ! 君と従魔たちを幸せにしてみせる!」


 イザックにげんこつを落とされているエミルを始め、護衛組は今日のお昼ごはんも気に入ってくれたらしい。 昨日と被るものがいくつかあるので不安だったが、一安心だ。


(おいしいにゃ~♪)

(おいしい♪)


 一心不乱に食べている2匹も大丈夫だな♪  ……本当に、どこに入ってるんだろう。異空間?


 残る不安は、口が肥えているに違いないモレーノ裁判官だが……。


 裁判官は、ゆったりと優雅に食べているのに、目の前のごはんがどんどん無くなるという、不思議な現象を起こしていた。


 野菜たっぷりの玉子スープ、からあげとオークカツのおむすび、レタス・生ハム(オークとボアの混合)・チーズのサンドイッチ、レタスと照り焼きハーピーのサンドイッチ、レタス・玉子焼き・生ハム(混合)のサンドイッチ、焼き魚、トマトと玉子のふわふわ焼きを一通り食べ終わり、早くも2巡目だ。 


 料理人(違うけど)冥利に尽きるけど、お腹は大丈夫かな…。








「どれもたいへん美味しかったです」


 多すぎるだろうと思っていた昼食は綺麗になくなり、モレーノ裁判官が満足そうに言うと、皆は得意げに笑った。  ……なぜ?


「お口に合ったようで嬉しいです♪」 


 マルタが紅茶の葉を提供してくれたので食後のお茶を入れていると、裁判官がクッキーを出してくれた。


 …裁判官のおやつはこれで3種類目。裁判官はかなりの甘党かもしれない。蜂蜜と砂糖も出しておこう。


「アリスさんは料理がお上手ですが、どこで学ばれたのですか?」


 裁判官の質問に、護衛組も興味有り気に身を乗り出したが、


「特に学んではいないですね。 弟が私の作るものを好んでくれていたので、作っていただけです。 最初は家の本などで調べましたけど」


 料理教室に行ったりはしていない。


「アリスさんが料理することを、ご両親は何もおっしゃらなかったのですか?」


「両親は忙しくほとんど顔を合わせることもなかったですし、家政婦さんが作っていると思っていたようです」


「かまどやオーブンは危ないでしょうに…」


「そうですね。幼い頃は、…安全な加熱用の魔道具に頼ってました」


 電子レンジのお陰で、お菓子作りも楽だったな~。


 …これ以上突っ込まれると、ボロが出るかもしれない! 


「裁判官! 盗賊たちの取り調べはどんな風にするのですか? 私は盗賊たちに治療をすると約束をしているのですが、構いませんか!?」


 強引な話題変更だったが、仕方がない。 裁判官も普通に答えてくれたので大丈夫だ。


「アリスさんは治癒もできるのですか? 冒険者活動に有利ですね」


「ええ、日々、女神ビジューに感謝です。 それで、治療はさせてもらえますか?」


「そうですね。アリスさんはどんな治癒をするつもりですか? 裁判所付きの治癒士は“これ以上の治癒は必要ない”と言っていますが…」


「アリスは四肢欠損の治癒ができるんです!」


 それまで黙って話を聞いていたマルタが嬉しそうに説明してくれたが、


「ほほう、それは…」


 モレーノ裁判官は黙り、何かを考え込んでしまった。


ありがとうございました!

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