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キャンプの醍醐味はごはん!  …野営中です

 イザックが敷いてくれた帆布の上で、寛ぎながら晩ごはんを食べる。もちろん皆【クリーン】済み。


 急な話で時間もなかったから、冒険者組のごはんはお店で買ったものとお湯で戻す乾燥野菜のスープだったので、私の作った卵スープをお裾分けすることにした。 それにご飯と照り焼きハーピーが、私たちの晩ごはんだ。


 温めたマッシュポテトのオムレツを皆の真ん中に置くと歓声が上がる。


「「「「今日の糧に感謝を!」」」」

「いただきます!」

「にゃん♪」

「ぷきゅ♪」


 皆の手がいっせいにオムレツに伸びた。


「オムレツ美味しい!!」


「人気のお店のものよ! あの時間に3枚も買えるなんて、さすがアルバロね!」


 従魔たちも肉より先にオムレツに齧りついている。 …ほんの少しだけ、敗北感。


「おいしいね~♪」

「んにゃん!」

「ぷっきゅう!」


 2匹の喜び具合に、アルバロも満足そうだ。


 これはもう一度食べたい! 人気のお店らしいから行っても買えないかもしれないけど、行ってみたい!


「アルバロ、買ったお店を教えてください!」


「いいぞ。 代わりにさっきの干し肉をどこで買ったのか教えてくれ!」


 アルバロの返事で、視線が私に集まった。


「干し肉は私が作りました。 オムレツのお店は!?」


「「「「アリスが作ったーっっ!?」」」」


「ええ。オムレツのお店は!?」


 オムレツのお店を教えてもらいたくて重ねて言ったら、ハクとライムも協力してくれた。2匹がアルバロの膝の上に飛び乗って背伸びしながらおねだりしている。


「そうか~。おまえたちも気に入ったのか~~。明日、店まで案内してやろうな~~。おじちゃんが買ってやるぞ~~」


 ……従魔たち凄いな。アルバロがメロメロだ。買ってやるとか言われてるよ。


「ねえ、あの干し肉を作ったって本当!?  このスープもさっきアリスが作ったのよね?」


 半信半疑なマルタに頷いて肯定すると、勢いよく飛び掛ってきた。


「ねえ、アタシのパーティーにおいでよ! もう、大切に大切にするから~! ね! ね!?」


「マルタ! 食べ物の側でバタバタしちゃいけません! 食べ物をダメにしたら、許しませんよ!」


「あ、ごめん…」


「スープはおかわりありますからね?」


 少し強く言い過ぎたかと慌ててフォローをすると、スープ皿が6枚、目の前に突き出された。  …ストック分、残るかな?







「俺は前衛だ。 この斧を見たらわかるよな」

「あたしは後衛。 火の魔法を使うの」

「わたしは中衛だ。弓と簡単な水魔法を使う」

「俺も前衛だ。獲物は剣だが体術もそこそこいけるぞ」

「私は……、後衛、かな? 風の魔法を使います。 ストレスが溜まったら前に出るかもしれません」


 食後は、エミルのお土産のチュロスを食べながら打ち合わせだ。


「夜番は、俺とマルタ。エミルとイザックでいいか?  早番と遅番はコインで決めよう」


「あれ? 私は?」


「アリスは護衛対象だろうが。 夜番に参加してどうする?」


「え~?  じゃあ、適当に寝て、適当に起きます」


「……わかった。それでいい。

 盗賊は基本生け捕りだ。もったいないから出来るだけ殺すな。アジトの場所を吐かせる必要もあるからな」


()()()()()()…?」


 “犯罪者にも人権が”とかじゃなくて、“もったいない”? 不思議に思っていると、


「生け捕りにすると、犯罪奴隷として売れるんだ。 せっかく町の近くにいるのに、殺すなんてもったいないだろう?」


 悪い顔で笑いながらイザックが教えてくれた。 


 うん、もったいないな。 殺さないように気をつけよう。


「他に何か質問はあるか?」


 アルバロの確認に、誰も反応をしない。 なら、


「このチュロスを買ったお店を知りたい!」


 さっきから聞きたくてうずうずしていたんだ。 マルゴさんたちが、オークカツなどの揚げ料理を珍しがっていたから、揚げ菓子があるとは思っていなかった。 何より、このチュロスはとっても美味しい!!


 従魔たちも気に入っていたらしく、今度はエミルの膝に飛び乗っておねだりポーズだ。 ……そろそろしつけを疑われそうだな。


「ああ、明日連れて行ってやる。 いっぱい買ってやるからな~~!」


 エミルも2匹の魅力に落ちたらしく、いっぱい貢いでくれるそうだ。  ……何かお返しを考えておこう。








「まだ寝ないのか?」


「ええ、もう少し。 普段からこの時間はまだ寝てないんですよ?」


 打ち合わせが済んだ後、遅番になったエミルとイザックはさっさとテントに入り睡眠中だ。


 そのせいか、いつまでもかまどの前から離れない私を心配して、アルバロとマルタが交互に声を掛けてくれる。


 寸胴鍋に作れるだけの煮オークと煮ボアを仕込んでいる間に、ご飯を炊き、パンを削ってパン粉を作り、生姜と大根ををすりおろしてそれぞれビンに詰める。 たったそれだけの間に、何回声を掛けられたことか。 


 起きているとお邪魔なのかな~?なんて邪推しそうだ。


 インベントリからご飯を取り出し、ストックのオークカツとから揚げを入れておむすびにする。 新しく卵が手に入ったから、前に卵なしで作っていた分の在庫整理だ。 


 “ぐぎゅるるるるる”


 釜に残っているご飯を塩むすびにしていると、盛大なお腹の音が聞こえた。


 アルバロかと思って振り向くと、マルタが顔を赤くしてお腹を押さえている。


「マルタ?」


「ち、違うのっ! お腹が空いているわけじゃなくて! ただ、お昼に食べたおむすびが美味しかったな、って思っただけなの!」


 真っ赤な顔のマルタが可愛くて、インベントリからしまったばかりのおむすび皿を取り出してマルタに差し出すと、あわあわしながらも1つ摘んで嬉しそうに頬張る。 


(僕もにゃ!)

(おむすび~)


 焚き火の側で遊んでいた2匹も足元に来ておねだりを始めたので、アルバロも交えての夜食タイムになった。


 従魔たちがぱくぱく食べている横で、マルタとアルバロが“襲撃に備えて1個だけしか食べない”と、一口一口を大事に味わってくれているのを見ながら、マルゴさんのパンをスライスする。 


 両端は別に取っておいて、レタス&チーズ&生ハムと、レタス&照り焼きハーピーと、レタス&卵焼き&生ハムの3種類のサンドイッチを作ったが、マヨネーズやケチャップがないのが残念だ。作り方は知っているから材料が揃えば作れるのになぁ。 先輩転移者が流通させてないかな~?


「アリス、それは?」


 マルタがサンドイッチをガン見してる…。 珍しくない、普通のサンドイッチなのに?


「作り置きです」


 サンドイッチと一緒に炊き上がったご飯を釜ごとしまい、煮オーク&煮ボアの鍋を火から下ろす。 


 砂時計を出してカモミールティーを淹れていると、呆れたような、感心したような、微妙な顔のアルバロと目が合った。


「いつもそんなに作るのか?」


「今日はたまたま、ですね。 最近食べてばかりでストックが切れそうだったので」


「飯屋を開くのか…?」


「冒険者になりますが?」


「アリスの容姿でこれだけ美味いものが作れるんだ。飯屋を開いたら大繁盛するぞ?  わざわざ冒険者なんて、危険なことをしなくてもいいんじゃないか?」


 ……治癒士の次は料理屋か。 職業選択の幅があって嬉しいんだけど、


「世界を旅して回りたいから、冒険者になります。 地に根付くのは、ずっと先の話です」


 ビジューとの約束。この世界の綺麗なものをいっぱい見て、おいしいものをいっぱい食べて、楽しみ尽くす! 


「そうか…。 そうだったな。“楽しみたいから冒険者になる”んだったな!」


 私の思いが伝わったのか、アルバロは私の肩を叩きながら笑った。 ……心配かけてるなぁ。


ありがとうございました!

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