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初めての冒険者ギルド!

<冒険者ギルド>の建物は3階建てで、入り口付近には松明が焚かれていた。暗い中で明かりを見つけるとホッとする。


 わくわくしながらドアを開けると、入り口から右手は酒場兼食堂のようで、酔いつぶれた人がテーブルに突っ伏していたり、軽い食事を摂っている人がいる。左手側が事務所らしく、2席ある受付には若い男性が1人で座り、その奥の席では女性が書類仕事をしていた。


 受付の男性と目が合ったので軽く会釈をすると、微笑んで頭を下げ返してくれた。 受付の態度は(マル)


 奥の女性も気が付いてこちらに微笑みかけてくれたので、私も微笑み返した。 事務職員(?)の態度も(マル)


 依頼ボードを見ると、やはり時間帯が悪かったようで、ほとんど依頼は貼られていない。 残っている採取や討伐の依頼には目立っておかしな依頼はなし。


「すいません。過去の依頼などの閲覧はできますか?」


 受付の男性に聞いてみると、“きょとん”という顔で見返されたので、言葉を重ねてみる。


「このギルドで出される依頼の傾向を知りたいのですが…」


「どういうことですか?」


 受付の男性が少しだけ不審そうに聞いてきて、奥の女性もこちらを見ている。 …あれ? 


「冒険者登録をしようと思っているのですが、登録前にはギルドの依頼内容の傾向を確認して、自分の実力や特性に合った依頼が多い所で登録をした方がいい。と教わりまして…」


 説明をすると、受付の男性は納得をしたらしく微笑みを浮かべて、奥の女性も事務仕事に戻った。


「しっかりとした方にアドバイスを受けたのですね。 ですが、過去の依頼に関しては、職員しか閲覧が出来ない決まりになっていまして…。 申し訳ありません」


 なるほど。オスカーさんが「()()()()()()見ろ」と言ったのはこういうことか。


「わかりました。 依頼ボードに依頼が貼られるのを待ちます。ありがとうございました」


 お礼を言って離れようとすると、


「冒険者登録をお考えなのですね?」


 と聞かれた。 頷いて返すと、


「新規の依頼ボードを確認された後ですと受付も受注処理で混み合いますので、今の間にゆっくりと説明だけさせていただきましょうか?」


「<登録>は依頼ボードを確認した後でも構いませんか?」


 確認をすると、もちろん!という返事が返ってきたので先に説明をしてもらうことにした。 


「冒険者は、基本AランクからFランクに分けられます。 Fランクからスタートですね。 例外が、成人前の冒険者でGランク、一握りの飛び抜けた実力を持つ者がなるSランクになります。 お嬢さんは…」


「成人しているので、Fランクスタートですね?」


 受付さんの反応が、昔、お酒を買おうとした時に、売っていいのか戸惑っていた地球の酒屋の店員さんと同じだったので、自分から成人してるよアピールをしてみた。


「はい、通常ですと、Fランクからのスタートとなります」


 受付さんの表情が柔らかくなったので、私の杞憂ではなかったようだ。 


「通常? 例外もあると?」


「はい。実力に自信があれば、【スキップ試験】を受けることが可能です。 ただし、【スキップ試験】を受けるだけの実力を示してもらうために、事前に【ステータス】や【スキル】の鑑定を受けることが条件になります」


 鑑定かぁ…。 ハクの隠蔽が完璧だったとしても、自分を鑑定されるのはあんまり嬉しくないなぁ…。


「通常の登録なら、【鑑定】を受ける必要はないんですか? <冒険者>として活動する為の、最低限のステータスの確認とか…?」


「通常の登録では鑑定を受ける必要はありません。 冒険者にとって自分のステータスやスキルを秘匿するのは当然のことですから」


「当然、ですか?」


「ええ。冒険者の討伐対象は魔物だけではありませんから」


 受付さんはきっぱりと言い切った。


 ああ、そうか…。 自分の弱点を知っている盗賊に襲われでもしたら、命を落としかねない。


「では、いきなり鑑定をされた時は怒っても良いんですか?」


「当然です。冒険者だけでなく“戦うこと”を生業としている人間にいきなり鑑定なんか掛けたら、殺されたって文句は言えません。 第一、人間を対象にいきなり鑑定をかけること事態がマナー違反ですよ。 …どちらかで経験が?」


「ええ、まあ。 旅の途中に立ち寄った村で…」


 マルゴさんとかマルゴさんとかマルゴさんとか…。 今思うと、あの時はマルゴさんも危ない橋を渡ってたんだな…。


「そうでしたか。警戒心の強い地域だとたまにあるようですが…。 しかし、良く気が付きましたね?」


 鑑定に気が付いた理由は、私が【隠蔽】をしていたから!なんて言えないな。 黙って微笑むと、勝手に納得してくれた。


「…続けましょう。 登録時には、この水晶に血液を垂らしてから上に手を置きます」


 血を垂らすの!? 痛いのは嫌だなぁ…。 私の顔がこわばっているのを見て、


「この細い針を刺すだけなので、少し“チクッ”とするだけです。本当に“チクッ”ですから、安心してください」


 “大丈夫だよ~、痛くないよ~”と、フォローしてれた。 <冒険者>になるならそのくらい我慢しろ!とは言わないんだな。 ちょっと嬉しい。


「町に入るときは、手を置くだけでしたが…」


「この水晶は、町の入り口に置いているものより少し性能が良くて、“冒険者になるのに適さない罪”を犯していると反応します。 

 問題がなければ、<冒険者カード>を発行しますが、その際にも、少しだけ“チクッ”と…。 血液をカードともう一度水晶に垂らして、両方の手をそれぞれカードと水晶の上に置きます。 カードにお嬢さんの情報が登録・記載されたら手続きが完了です。その瞬間からお嬢さんは<新米冒険者>ですね」


「カードに登録される情報は何ですか?」


「名前、年齢、ランク、依頼達成率です。 記載されるのは名前とランクだけですね。 尚、冒険者カードにはギルドに預けているお金の情報も登録されますので、冒険者ギルドに預けたお金は、どこの冒険者ギルドでも引き出しが可能です。 もちろん、カードの表面には記載されませんので安心してください。 

 以上になりますが、なにか不明な点はありますか?」


 登録についての流れは理解できた。後は<冒険者>になってから、依頼の受け方などを聞けばいいかな?


「大丈夫です。丁寧な説明でとても解かり易かったです。 ありがとうございました!」


 にっこり笑ってお礼を言うと、受付さんだけじゃなく、奥の席の女性も微笑んでくれた。 


 受付さんと、事務職員さんの対応◎! ここで登録しようかな♪


ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] マナー違反で殺人OKってマナー講師たちが無双しそうな世界だな
[一言] すみません。初めて読ませていただくのですが、 「感染」の概念が無い(秘匿?)されている世界では、「消毒」済の針という概念もまた無いのではかな、と疑問に思いました。そこは綺麗な針、か「クリーン…
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