第4話 ハイテンション元気少女エイミン
今回はシルリーの呼び方が変わります。
そしてハイテンション元気少女の登場です。
シルリーの説得が終わると、ジルクさんが疑問を尋ねてきた。
「そのメイド喫茶にしたら、お客さんは来るんですね?」
ジルクさんは俺を真剣に見つめる。本当かどうか、不安な色が垣間見えた。
「安心してください。少し高めに金額を設定しても大丈夫です」
「本当ですか?」
「少なくとも俺のいた国ではそうでした」
腕を組んで考え出すジルクさん。数秒後決意を固めて、俺に手を差し出す。
「お願いします」
俺はジルクさんの手を握り返し、笑顔を向ける。
「任せてください」
ジルクさんから、姉妹の方に振り向き話しかける。
「シルリーちゃんとメリーちゃんは手伝ってくれる女の子の友達いる?」
「ちょっと待て」
急にシルリーちゃんが大声で止めた。メイドさんになってもらうから、シルリーにはちゃん付けにした。
「シルリーちゃんって呼ばないで!」
「ちゃんが嫌なの?」
「何となく……、恥ずかしい」
視線をそらす姿が、華麗な剣裁きをする勇者とは違い、そこにいるのは恥ずかしがる少女だった。
そこに萌えてしまうのは俺だけだろうか。
「じゃあシルリーたんにしようか」
「あたしはベロじゃないのよ」
「そういう返しが出来ると、ギャグ系の扱いされるから、可愛いに徹した方がいいよ」
面白いメイドさんと話すと盛り上がるのは間違いないけど、気が付いたら漫才をしに来た感覚になってるときがある。
「べ、別にあたしは可愛くなんかないんだからね」
「素晴らしい」
俺は無意識のうちに拍手をしていた。
シルリーたんはツンデレ、メリーちゃんは素直で可愛い系。顔は可愛くってタイプが違う娘が二人いる時点で、もう勝利が見えてきた。絶対に良いメイド喫茶になる。
「あたしの友達に可愛い娘いるよ」
「よし会いにいこう」
俺はお店の外へ出ていった。
「待ってよ」
メリーちゃんとシルリーたんがついてきた。
「その娘はどんな娘?」
俺は右を歩くメリーちゃんに訊いた。ちなみに左を歩くのはシルリーたんだ。両手に花だ。この世界に来て良かったと思う。
「あたしと同い年の十七歳」
見た目で年齢を予想してたけど、あってたようだ。
「すごく元気な娘なの。その娘がいると周りも元気をもらえるの」
「それは楽しみだね」
元気な娘は二人とも被らない。それに元気なら明るいだろうし、そういう娘は人気が出そうだ。
「この家の娘だよ」
メリーちゃんがドアをノックした。
「エイミン」
「呼んだかなー。びゅーん」
ドアを思いっきり開けて、元気な声で尋ねてきた。俺達は思わず左右に分かれてその娘をよけてしまった。
メリーちゃんはいつものことのように、振り返って話し始める。
「メイド喫茶をやることになったんだけど、うちで働かない?」
「いいよー」
「決断速っ! っていうか、メイド喫茶って何か知ってるの?」
「ううん。わかんないよー。グルグルピース」
右腕を大きく回してからピースをした。
「それでオッケーするの?」
「だってメリーちゃんが誘ってくれるんだもん。ミラクルハッピーに楽しいことだよね」
「うん。メイド服着て接客するんだって」
「キラキラで楽しそう」
今の説明だけで楽しい要素ってあったのかな?
あとこの娘、言葉のチョイスが独特だなぁ。それはそれで人気になりそうで良いかも。
「可愛くって元気でいいね」
「きらめく言葉をありがとう。知らない人」
うげ。確かに自己紹介してなかった。
「俺は走助。メイド喫茶を作るからメイドさんになって欲しいんだ」
俺は手を出した。手をつかんだエイミンは上下に揺らす。どれくらいかっていうと、頭の上までいって、膝下まで手が上下に動いた。
いきなりこのテンションはビックリしたけど、すぐにキャラが把握できたし、これはこれでありだね。
「楽しそうなことに誘ってくれてありがとう走助」
茶髪のエイミンは、テンションが高い。
「早速メリーちゃんのレストランまで競争しよう。ビューン」
両腕を横に伸ばして走り出した。いや、走らないでよ。
「待って」
「待つよ」
ピタッと止まって、振り返るエイミン。
「メイド服買わないと」
俺は大切なことを忘れてた。
「だけど俺お金ないや」
「それならあたしが払おう」
「いいよ。シルリーたんにはメイドさんとしてお給仕してもらうわけだから、俺がお金を払わなきゃいけないんだし」
一瞬シルリーたんは顔を引きつらせる。だけどこの話題を避けるように、別の話題をする。
「さっきあれだけモンスターを倒して、宝石化したのに拾ってなかったじゃない」
「宝石化?」
「モンスターを倒すと宝石に変わるでしょ。それを宝石店に持っていくと、買い取ってくれるのよ」
常識のように説明してくれた。つまりゲームでモンスターを倒すとお金が手に入るように、宝石を売ることでお金になるというわぇか。
「じゃあ宝石店まで競争だね。ビューン」
エイミンは走っていった。
「走るってきらめく青春だねー」
エイミン以外の俺達は歩いて宝石店に向かった。宝石店に着いたときには、お店の前でエイミンが待っていた。
「おーい。みんな遅いよ。青春は待ってくれないんだよ」
何を待たないかは知らないけど、ここを深掘りすると、余計な会話に時間がかかりそうだから、スルーしよう。
お店に入ると宝石がガラスケースに陳列されていた。男の俺はほとんどこういうのを見たことがないけど、きれいなのはわかる。何万円も出して欲しいかっていうと、別にいらないけどね。
「すいません。これを買い取ってください」
「はいはい。少し待ってってください」
シルリーたんが革袋を出す。かなりパンパンに膨らんだ袋は、さっき俺達が戦った証だ。
メガネをかけたおじさんが、袋から宝石を出していく。さらに大きく見るために、小さなレンズで一つ一つを丁寧に見ていく。
「これきれい。こっちも」
メリーちゃんは女の子らしく、宝石を見て時間をうっとりしている。
「こんな見た目だけの宝石よりも、魔力のある魔法石はないのかしら」
シルリーたんは魔法も使えるらしく、魔力のあるものを探し始めた。
「これボール代わりにいいね。キャッチボールに使えそう」
エイミンは野球のボールくらいのを見つけ、キャッチボールをしたいテンションになった。
女の子らしい娘が一人しかいないんだけど。まぁそれも面白そうでいいか。
「すいません。買い取り金額が出ましたので来てください」
俺達がいくと紙には一六三四八と書かれていた。この金額が高いのか安いのか俺にはわからない。
「今回はレアモンスターの、からくり剣士の宝石があったので、高額になっています。いかがですか?」
そういえば最後の方に剣を持ったロボット的なのがいたのを思い出した。妖精銃を使って、一撃で倒せなかった唯一の敵。二発目で倒せたけどね。
「そうですね。この金額ならいいですよ」
シルリーたんがオッケーを出した。俺はわからないため全部任せる。
「ありがとうございます」
宝石店を出てエイミンがまた走ろうとして、俺は手をつかんだ。
「ちょっと待って」
「何かな、何かな? ワクワクしてくるね」
期待するような話しじゃないよ。
「これからはみんなと行動していこう。メイド喫茶の仲間なんだから」
「仲間。うわー、そんな素敵な言葉、今まであたしに言ってくれたの初めてだよ」
テンションが高まって抱きつかれた。嬉しいんだけど、エイミンは気をつけないと。
メイド喫茶はお触り禁止なんだよ。メイドさんから抱きつくなんて、最高のサービスじゃん。だけどルールは守ってもらわないとね。
「こういうのも気をつけて。こんなに可愛い娘に抱きつかれたら、男はドキドキしちゃうから」
思わず本音を言った。エイミンの場合はソフトに言ったら伝わらないと思う。
「男の人にドキドキするなんて、初めて言われたよー」
笑顔で後頭部をかいて喜んでる。して欲しいリアクションはそれじゃないんだけど。
「とにかく服屋さんにいこうねー」
一度で理解してもらえるタイプじゃないのはわかった。怒るのもよくないから、元気を褒めつつ落ち着くような言い方を考えよう。
個人的に怒るのはよくないと考えている。人間褒めて伸ばされた方が嬉しいもんね。
そんな風に考えながら、みんなの後を歩いていった。
「エイミンは元気だね」
「うん。昔からサンサン太陽パワーを吸収して、元気なの」
「ご主人様の中には疲れてる人がたくさんいるから、元気を分けることを意識してくれると嬉しいな」
「元気を分ける?」
首を傾げるエイミン。
「そう。自分だけ元気で走り回るんじゃなくて、元気になってもらうように接するんだよ」
「こういうことかな?」
エイミンは急に俺に近づき、脇をくすぐってきた。こんなの小学生の頃以来だよ。
「さっきからあんまり笑ってなかったけど、笑ってくれた! わーい」
「無理矢理笑わせたんでしょ」
「でも笑顔になったんだからいいじゃん。笑顔は元気の源だよ。笑って楽しいと思えれば何とかなるよ。下を向いてないで、難しいこと考えてないで、とにかく笑ってよう」
エイミンは子供のままの笑顔を、俺に向けた。。
言われてみれば、この数分笑顔がなかったかも。エイミンをどうするかで難しい顔になっていたかもしれない。下を向いていたと思う。
褒めて伸ばすべきと考えていたけど、まだまだだな。エイミンはこのままでいいか。成長すべきは俺の方だと思った。
良い娘が入って良かった。
次回はメイド服を買いに行く話になります。
今日は昼と夜にも更新しようと思います。