第28話 みんなの力を一つに
今回で闇の魔術師を倒す回になります。是非読んでください。
「スーパーフェアリービーム」
闇の魔術師も俺と同じくらいの、強力なビームを撃ってきた。
二つのスーパーフェアリービームが衝突した。その威力は強力で、俺は吹き飛んでしまった。
「なんてパワーだ!」
リルカは相当のパワーを込めていたようだ。
身体を起こすと周りの木にも影響が出ていた。近くにあった木は消えている。ビームが衝突した場所から数メートルは、何もなくなっていた。
「闇の魔術師は?」
俺はすぐに今確認すべきことを思い出した。
「セペルダーさん!」
「俺は大丈夫だ」
セペルダーさんは倒れていたが、起き上がるところだった。その近くに闇の魔術師がいる。
どうやら受けた衝撃は俺達ほどではなかったようだ。セペルダーさんに向かって火の玉を放とうとしていた。
「待ちなさい」
シルリーが背後から、剣で闇の魔術師を攻撃した。振り返り闇の魔術師は火の玉をシルリーに向けて放った。
シルリーは予想していたようだ。まるで人をよけるようにかわして、闇の魔術師めがけて、剣を振り下ろした。
「グッ!」
シルリーの振り下ろした剣は、闇の魔術師の右手を斬った。紫の血が流れたが闇の魔術師は手を押さえた。手を離すと傷口が塞がっていた。
「この程度の傷は問題ない」
どうすればいい?
傷を与えても一瞬で治してしまう。
俺達が少しずつダメージを与えていっても、触るだけで傷を治せるなら、妖精銃を使って、一撃で倒すしかなかった。
だけどもう妖精銃は使えない。
俺は握っている妖精銃を見つめながら、どうすればいいかを、自問自答し続ける。
俺がそんなことを考えていると、離れたところでセペルダーさんとマディーさんが、話しているのが聞こえた。
「マディー」
「何?」
「この剣に魔力を込めてくれ」
巨人を相手にしたときの戦い方か、それなら一撃で倒せるかもしれない。
「ごめん。もう俺にはそんなに魔力が残ってないんだ……」
申し訳なさそうに、セペルダーさんから目をそらして、首を振るマディーさん。
「少しでもいい」
セペルダーさんはマディーさんの言葉を聞いても、食い下がり頭を下げて必死に頼み込んだ。
「剣に魔力を込めるっていうのは、そこそこ魔力を使うんだよ」
セペルダーさんは自分の剣を見つめた。もう一度龍の剣を使うか迷っている。
そんなに特別な剣だと知られるのが嫌なのか?
こんな深夜に街と街の間の道に、人がいるとは思えない。
人がいたとしても激しい戦闘のため、巻き込まれないように逃げるんじゃないか?
「次でどうなるかわからないけどやってみる。どっちにしろあいつを倒さなきゃ、みんなやられるんだ。耐えられなかったとしても、賭けるしかない」
セペルダーさんは何かすごい決断をしたようだ。
「セペルダー……」
マディーさんは言葉の意味を深く理解したように、彼の名前を呟いた。
二人の会話から何かあるのを感じた。
俺は二人の元へいった。闇の魔術師に投げたナイフを拾って。
俺はヒーローだ。元々俺には仲間がいた。そのときに経験したことがある。
どんなに強い敵が現れても、諦めずに仲間と力を合わせて戦うこと。
俺はこの気持ちがある限り、どんな強い敵にも負けないと思っている。
「ごめん。話しが聞こえた。さっきの龍の剣使いたくないなら使わないでいいよ」
俺の方に向いたセペルダーさんは、驚きの表情で目を見開いた。
「何言ってんだよ。今傷を治したの見ただろ!」
「だったら使わせなければいいんだよ」
「どうやってだよ?」
俺の前に来て、まくし立てるように言った、
「四人でとにかく素早く攻撃をし続けるんだ。傷を治させる一瞬の隙も与えない」
俺はそう言って、マディーさんが首を振った。
「僕にはもう魔力がほとんど残っていないんだ」
「大丈夫」
俺は拾ったナイフをマディーさんの前に出す。
「このナイフなら、変身前の俺でも強力な武器になった」
マディーさんは希望を感じたようだ。瞳が明るくなった。
「これを使えばきっとマディーさんも、かなりの攻撃が出来ると思う」
しかしセペルダーさんの方を向き、迷っている様子で、中々受け取らないマディーさん。
「使えよ」
セペルダーさんは軽く背中を押した。その勢いで一歩前に出た。
「うん」
そのときだった。
シルリーが闇の魔術師の攻撃を受けたようで、俺達の方に飛ばされてきた。
「大丈夫か?」
「まだまだ大丈夫よ」
シルリーはすぐに立ち上がった。
「みんな一斉にいくよ」
「おう」
俺の声にみんなが気合いの入った声で応えた。
「剣技風の刃」
セペルダーさんは風の刃を放ち、闇の魔術師は瞬間移動でセペルダーさんの後ろへきていた。
「ここに来るのは予想してるわよ」
シルリーの攻撃を闇の魔術師が、ギリギリでかわした。
「食らえ」
マディーさんが全力でナイフを闇の魔術師の胸に突き刺した。
「強くイメージするんだ!」
「これで死ねー」
闇の魔術師は刺されたナイフをつかみ、抜こうとするが、中々力が入らずに抜けないようだった。
「人間の攻撃などに、人間の攻撃などに……」
倒せてはいないけど、かなり効いているのは間違いない。
「俺の攻撃も食らえ!」
俺は背中を妖精剣で突き刺した。
続けてセペルダーさんとシルリーも剣を突き刺した。
「人間ごときに、負ける我ではない」
「これでもダメなのか?」
俺が呟くと、俺の肩にリルカが現れた。
「本当にこれで最後よ」
リルカがそういうと妖精剣は白く輝いた。リルカが妖精の力を注いだんだ。
「に、人間に負けるなどありえない……」
最後に力なく呟き、闇の魔術師は白い光の粒子になっていき消えた。
「や、やっと倒したんだな」
剣を鞘に戻すシルリーとセペルダーさん。
セペルダーさんはその場に座り込んだ。
俺の肩に乗っていたリルカが落ちた。
「リルカッ!」
俺は地面に落ちる前に、掌で受け止めた。
「うるさいわね」
「し、死んでないんだな?」
「死んだら喋れるわけないでしょ」
「良かった」
俺の声がうるさいような表情で、目をつぶった。
「かなりパワーを使ったから寝たいだけよ。悪いけど、出来るだけ揺らさないで運んでくれる?」
「わかった」
俺は両手でリルカが落ちないようにして、みんなの方に向く。
「早く移動しよう。モンスターに会ったら、さすがに戦うのは辛いから。
俺達は大きな怪我はないもの、かなりの疲労でみんな限界に近かった。
「そうだな」
セペルダーさんがそう言って、マディーさんとシルリーは頷いた。
俺達は隣街へ向かって歩き出した。
バトルが続いたので、次回は気楽に読める話にしたいと思います。