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異世界メイド喫茶にいこう  作者: 仲良むら
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第24話 変身出来ないヒーロー

 変身してない走助にモンスターが襲いかかります。走助はこのピンチを切り抜けられるのか!

 俺はナイフをトラのモンスターに向かって振った。


「危ない!」

 俺の動きは思った以上に遅くて、噛みつかれそうになった。


 ギリギリのところで、マディーさんが俺を魔力で包み込んでくれた。

 薄い白い光が俺の周りに生まれ、モンスターをはじき飛ばした。


「いつもみたいに動けないみたいだから、その状態で待ってて」

「済まない」

「気にしないで」


 マディーさんはすぐに炎の魔法を放ち、飛びかかってきたモンスターを倒した。

 さっき話したみたいに、燃やし尽くすまで十秒ほどかかった。


 魔法ですら時間がかかるのに、リルカの力だと一瞬だ。リルカがどれだけすごいかがわかる。


 二人は強かった。ピンチになることもなく、一匹ずつ確実に倒していき、十匹いたモンスターも五分ほどで倒した。


 戦闘が終わり、マディーさんが白い光にタッチして、俺を護っていた光は消えた。


「ふう。いくらこの辺のモンスターは、弱いとはいえ、こんなにモンスターと遭遇しちゃ、全然進めないぜ」


 セペルダーさんは、額の汗を手の甲でぬぐいながら、剣を鞘にしまって、近くにあった岩に座り、一休みした。


「こんなにモンスターと遭遇……」

 セペルダーさんの言葉を呟き、マディーさんが何かを考え始めた。


「言われてみれば、夜とはいえこんなにモンスターと遭遇するのは多すぎる気がする。何かあるのかもしれない」


 マディーさんは俺には理解出来ない言葉で、呪文を唱え始める。

 普段は脳内でイメージするだけで出来るほど、攻撃魔法は練習しておくらしい。


 すぐに使えないと戦闘中に使い物にならないから。

 そしてある程度時間がかかってもいい魔法は、呪文を唱えて使うようにするらしい。


 呪文が終わり、マディーさんが力強く掌を前に出した。

 俺達の周りには白い光が拡散した。あまりの眩しさに目をつぶって、腕を目の前に動かした。


「クックック。どうやら術にかかっていることに、気付いたようだな」


 マディーさんの魔法によって、目の前にはフードを目深に被り、赤い目が光る男が現れた。顔は影になって見えないけど、声で男だとわかる。


「こいつさっきモンスター図鑑で見た。闇の魔術師だ」

 闇の魔術師の特徴は、闇の魔法で仲間同士で戦わせたり、仲間の協調性をなくして、パーティーの力を弱めるのが特徴。


 倒し方の所には、確か術を超える絆で普段から仲間と深い関係になっておくことって、書いてあったな。

 もう手遅れじゃん。


「闇の魔術師はこの辺りじゃ出ないはずなのに……」

 不思議そうな顔をするマディーさん。


「何故人間が決めた場所にしか出ないと思う?」

「えっ?」


 マディーさんは驚いた。

 彼は勉強熱心なんだけど、たまにこういう柔軟性がない部分がある。


「俺は俺のいたい場所にいる」

 当然のことを言われた。


「まぁそうだよな」

 休んでいたセペルダーさんが立ち上がって、俺の横まで歩いてきた。


「狙いは走助か?」

 親指を立てて俺に向けながら、セペルダーさんは尋ねた。


「ただの人間には興味ない」

 この緊迫した状況で、ハルヒみたいなこと言うな。

 これは俺の脳の問題か。


「異世界から来た妖精。その力はなかなかのものだ。我々の仲間にする」

「待て。ひょっとして俺とリルカが喧嘩したのは、お前の仕業か?」


「当然のことを今さら気付いたか」

 眠くて思考力が落ちてたからだと思っていた。


 リルカを追いかけるシルリーに何も言えなかったときに、違和感を感じたけど、まさかこんな術にかかってるとは思わなかった。


「低レベルな戦士と魔法使い二人では、我には勝てぬ」

「お前の目は節穴か?」

「何?」


 セペルダーさんの言葉に、やや怒りを含んだ声で、闇の魔術師は問う。

「ここにはもう一人すごい奴がいるんだぜ」

 セペルダーさんは鼻を人差し指で擦った。


「この走助はただの人間じゃない。世界を救うヒーローなんだ」

 セペルダーさんの言葉を聞き、闇の魔術師は笑った。


「変身出来なければ、何も出来ないただの人間だということはわかっている」

「走助。俺は信じてるぜ」

 いや、ちょっと待ってよ。


 俺変身しないと本当にただの人間だから。いや、特にスポーツもしてないから、運動神経も悪い方だし。


「ハハハハハ。その男は暗い顔をしている。自信がない証拠だな」

 否定出来ないけど、これは本当のことだ。俺は変身出来なきゃただの人間だ。

 ただの人間が闇の魔術師に勝てるわけがない。


「セペルダー。僕達二人で戦おうよ」

「嫌だね」

 セペルダーさんはマディーさんの言葉を、食い気味に断った。


「俺は仲間をバカにされて、『はいそうです』なんて認めたくないんだ」

 セペルダーさんは強い眼差しで俺を見つめる。俺を信じてる瞳には、見つめられるだけで、パワーがわいてくる気がした。


「現実と思い込みの区別がつかないようだな」

「逆だろ。思い込みを現実にするんだよ」


「えっ?」

 俺は思わず驚きの声が漏れた。訳がわからないことを言われたからだ。


「夢があるなら叶えるために行動する。何もしなきゃ、妄想で終わっちまうからな」

 セペルダーさんは、俺の肩に手を置いて続ける。


「だから俺の仲間は、変身出来なくてもすごいって所を見せて欲しいんだ!」

 セペルダーさんの言葉を聞き、胸が熱くなってきた。


 俺は変身出来なきゃただの人間かもしれない。でもセペルダーさんも変身せずに戦っている。


 運動神経が悪いから戦わないなんて言ってたら、冒険者はみんなレベル一の段階でやめてるはずだ。


「セペルダーさん」

 俺はセペルダーさんの手を握った。


「大切なことを教えてくれてありがとう。俺はヒーローだ。変身出来なくても、世界を救うために戦うんだ」


 そう。ここで諦めたら、日本で暴れているアヤカシを倒せなくなる。


「面白い。何分持つか楽しみだ」

 俺はナイフを強く握って走り出した。


「勝利をイメージしろ」

 俺はナイフで闇の魔術師の胸を突き刺すイメージをした。


「思い込みは思い込み。一発で終わる」

 闇の魔術師は掌から炎の玉を出して、俺に向かって放った。


 その炎の玉を斬るようにイメージしてナイフを振り下ろした。

 タイミング良く、炎の玉をナイフで斬り、そのまま駆け抜ける。


「何ッ!」

「食らえ!」

 イメージ通り、闇の魔術師の胸にナイフが刺さった。


「動きが良くなってるだとッ!」

「このナイフは特別な魔法がかかってんだ。強く願うことで使い手の技術以上の結果を導き出す」


「何だと?」

 予想外の武器に驚く闇の魔術師。


「弱気でいたら絶対に負けるけど、絶対に勝つと思って戦えば、このナイフはレベル一の冒険者が使っても、強力な武器になるんだ」


「ここは一旦引く。だが本当の目的はその男ではない」

 闇の魔術師は消えてしまった。


「良くやったな。走助」

「ありがとう。こんなすごい武器を貸してくれて」


「仲間だろ。気にするな」

 俺はセペルダーさんに、ナイフを借りたお礼を言った。


「二人とも急いでリルカとシルリーちゃんを探しにいくよ」

 マディーさんが、俺達の方に来てそう言った。


「そうだな。リルカが目的みたいだしな」

 俺達はリルカが向かった方向へ走り出した。

 闇の魔術師の狙いはリルカだった。三人はリルカの元へ急ぐけど間に合うのか。

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