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第二話

あら筋と第一話を改稿しました(特に第一話は大幅に改稿しました)

はい、反省してます……。


 勇者である俺・アルヴァンと、幼なじみのシーフ・ディモシーに俺を見出した神官・コーネスト。

 俺たち3人が魔王を倒した勇者一行だ。

 ディモシーはシーフだけあって、女装すら完璧にできる小柄な茶髪の男。でも俺と同い年で20歳。

 神官のコーネストは穏やかな顔の、万人受けする端正な顔立ちの男で、28歳。金髪で、神官になる前は下級貴族だったというから、彼が勇者一行では一番モテる。実質、という意味で。

 俺は20歳、灰髪で顔立ちは……最低か最高の評価しか知らないから分からない。俺の灰髪が、真夏で真昼の太陽に照らされているという限定的な条件下では銀色に見えるらしく、”銀の勇者”とも言われている。もちろん蔑称があり、それは”汚らしい灰の勇者”だ。汚らしいを省略して”灰の勇者”もよく聞く。


 さて、俺たちはいよいよロージアン王国に入った。

 この大陸の南に魔王城があり、ここロージアン王国は大陸の最北端に当たる。雪も降るが意外に暖かいのは、暖流が近海を通っているからだそうだ。初夏である今は、日なたでは少し暑いぐらい。最も今はうっそうと茂る森の中を馬で走っているから心地よい。

「ようやくこの国で巡礼も終わりですね。勤めとはいえ、華やかな場は気後れします」

 コーネストがそう言った。何を言ってるんだか。

 夜会で一番堂に入っているのが彼なのだ。貴族の令嬢も、コーネストを見る目はうっとり潤んでいる。そんな彼女たちを『私は聖職者ですので』とまとめて撃退しているコーネストはズルいと思う。


「いよいよソニア姫とも再会だよねぇ。魔王を倒したからってころっと態度変わってたら面白いよねぇ」

 ディモシーはこういう時、敢えて地雷を踏みたがる癖がある。ダンジョン内のトラップは器用に避けるくせに。

「……あの人はそういう人じゃないだろ」

 彼女はそういう人じゃない。いや、むしろそういう人ならもっと気が楽だった。すり寄る体を思うさま蹂躙して気晴らしできる。そうしてうち捨てて思い出しもしない。そういう扱いができる人ならこんなに緊張したりしない。

「確かにそういう感じの方ではありませんでしたよね。だからあの時は驚いたものです。ああいう断り方をなさる方には見えなかったもので」

 どちらかというと、ディモシーの発言よりコーネストの発言の方が堪える。柄にもない断り方をされた、俺にとっては。


 俺は黙って馬を走らせる。

 時々、並足になり、そうして思い出したように走らせる。

 ソニア姫のことを思い出すと、胸がざわつく。会いたいのか、会いたくないのか分からない。会ってしまえば終わる、という、変な予感までしてくる。

 俺はふっと顔を上げた。

 森の向こう、そう遠くはない所で鳥が飛び交っている。何か騒ぎでもあったのか、森がざわめいているのが体感できた。

「……アル」

 ディモシーが俺を呼んだ。俺も応えて頷く。

「たぶん、魔物だ。ここは浄化の地から遠い。まだ残っているんだ。行くぞ!」

 こういう反応は、もう条件反射のようなものだ。誰かが助けを求めている、助けられる人間がいる、そう思うと反射的に体は動く。どんなに”勇者であること”を疎ましく思っても、それは変えられなかった。






 狼型の魔物・ガルムの集団と10人もいない騎士と魔法使いの集団が戦っていた。

 魔法使いは2人か3人で、残りは騎士だ。揃いの甲冑を身につけている所を見ると、ロージアン王国に所属する騎士なのだろう。

 俺は一瞬でそれを見て取り、そうして指揮を執っているらしき女性の魔法使いに目を奪われた。

 後ろ姿だ。魔法使い用のマントに、フードも被っている。でも、分かってしまった。なんで分かるのか、情けなくて泣きそうになった。彼女はきっと俺のことなんて、覚えてもいないだろうに。

「――オーガス、いったんみなを退かせなさいっ」

 凜とした声に、いっそう確信が深まる。

「おい、アル!助けなくていいのか?」

 開けた場所でガルムたちと向き合う彼女たち。彼女たちの後方に、俺たち3人。助太刀を、と急かすディモシーを俺は手を上げて制した。

「彼女なら大丈夫だろう」

「?知り合い?」

 怪訝な顔をするディモシーをよそに、俺は食い入るように彼女の後ろ姿を見つめた。

 

 彼女が放つ、巨大な火の壁。

 それが群れるガルム達を容赦なく焼いていく。討ち洩れたガルムを、騎士たちが止めを刺す。完璧な勝利。勇者なんて必要ない、彼女のための舞台。

「ソニア様っ、リーダーがいましたっ!」

 炎の壁から躍り出た、巨大な狼に騎士が鋭い声を上げた。額に角を持つ、ガルムリーダー。ガルムのレベルは精々10前後だが、このガルムリーダーは25だ。騎士たちのレベルはほとんどが10と少し。彼女からオーガスと呼ばれた騎士だけがレベル26、そして彼女はレベル32。


 俺は少し驚いた。

 天才と謳われた彼女ですら、レベルは32。確かに俺が見かけた人間の中では断トツに強い。だが、例えば俺自身のレベルは86だし、ディモシーも84、コーネストは85だ。

 俺たちにとって、ガルムリーダーは雑魚中の雑魚。たぶん、一撃で倒せる。だが彼女たちにとって、そうして彼女が率いる部隊にとって、この魔物は充分な脅威になり得るのだ。

「みな、下がりなさいっ!オーガスとわたくしだけで相手をしますっ!」

 再び声を上げる彼女。確かに、雑兵がいても被害が大きくなるだけで意味はない。だが……。

「助太刀しよう」

 俺は気づくと声を張り上げていた。

 理由は分かっている。オーガスという男と共に窮地に立とうとする彼女に、未だ疼く心の傷が命じたのだ。別名は嫉妬だ。本当に情けない。でも、それでも見過ごせない。

「――ゆう、しゃ、さま……」

 彼女が俺を認めて囁いた、その声を聞けただけで俺は歓喜に震え上がるのだから。




読んでくださってありがとうございました!!


とある小説家になりたい人のためのアドバイスに、慣れない内は一人称で書けっていうのを読みました。ふ~ん?と思いつつ三人称で書いて過去に四苦八苦しました。

……初心者は初心者らしく頑張りますっ!!

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